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    ヒト剖検心におけるBachmann束の検討

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    Bachmann束は冠静脈洞とともに洞調律時の心房間興奮伝搬に関わる主要な筋束であるが、肉眼的な定義・分布は必ずしも明確でない。ヒト剖検心において左房天蓋部におけるBachmann束の分布を検討した。頻脈性不整脈を認めない非循環器疾患の剖検心15例、平均年齢61.4歳(51~79歳、女性6例)について左房側の付着部位である天蓋部中央におけるBachmann束の筋束厚、幅を計測し周辺の組織性状を観察した。Bachmann束の平均厚は3.67mm、平均幅21.4mmで、心重量と筋束の厚みは相関係数-0.56で逆相関した。Bachmann束は左右心耳を結ぶ主幹部と、左右心耳の静脈側および房室弁輪側に伸展する周辺部に分けられた。主幹部は房室弁輪に平行に走行する筋束であるが、4例が上下に二分していた。また、上大静脈筋袖がBachmann束表層に伸展している例もみられた。Bachmann束は心重量と相関して菲薄化するが、各種不整脈との関連ではより詳細な検討が必要であると考えられた。(著者抄録

    左心房の解剖学的障壁 肺静脈隔離術に関連した解剖学的検討

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    有症状の薬剤抵抗性難治性心房細動の治療に拡大肺静脈隔離術が施行されているが、有効なアブレーションラインの作成には左心房の解剖学的知識が必要である。肺静脈開口部とその周囲に存在する解剖学的障壁について剖検心で検討した。対象は頻脈性不整脈の既往がなく高血圧性心疾患のほか主たる異常のない23症例、平均年齢63歳。右上肺静脈-卵円孔、右下肺静脈-卵円孔、卵円孔-僧帽弁輪、左上肺静脈-左心耳、左心耳-僧帽弁輪、左下肺静脈-僧帽弁輪、左上肺静脈-左下肺静脈間の距離を測定した。肺静脈を取り囲む左心房の障壁では左上肺静脈-左心耳間が平均8.4mmと最も狭く、最大-最小で4倍の開きがあった。心重量と各障壁間距離に相関は見られなかった。アブレーションラインの決定には個体差の把握や左房の解剖学的理解が有用であると考えられた。(著者抄録

    初回治療より9年後に再発転移が疑われた喉頭原発神経内分泌腫瘍の1例

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    喉頭原発の神経内分泌腫瘍は比較的稀な疾患で、治療後早期にリンパ節転移、遠隔転移をきたしやすいため、長期の経過を経て再発や転移した例は報告が少ない。今回われわれは喉頭蓋に発生した神経内分泌腫瘍が外科的治療後9年経過し原発再発、肺転移をきたしたと考えられた症例を経験したので報告する。症例は65歳女性で、咽頭痛を訴え2002年2月に当科を受診した。喉頭蓋に腫瘤性病変を認めたため、2003年5月に腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的診断は神経内分泌腫瘍の非定型カルチノイドであった。2003年6月に拡大切除のため頸部外切開にて喉頭蓋部分切除術を施行し、その後9年間経過観察していたが再発、転移はなく経過した。2012年6月に喉頭蓋に腫瘤を認め、また胸部造影CTでは両肺野に多発肺結節が散在しており肺転移を疑った。(著者抄録

    急性呼吸促迫症候群を発症したが救命することのできた粟粒結核の1例

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    症例は84歳男性。他院にて高血圧症に対する管理を受けていたが、1ヵ月ほど続く全身倦怠感と食欲不振に加えて咳嗽、高熱も出現したため、当科を受診し精査加療目的で入院した。入院時、SpO2 92%(room air)と呼吸状態悪く、非定型感染を疑う血液検査所見を認め、胸部X線検査と胸部CT検査で、両肺野にスリガラス状陰影とびまん性粒状影を認めたことから粟粒結核を含む肺感染症を念頭に、抗結核薬と塩酸シプロフロキサシン(CPFX)の投与を開始した。後日、喀痰・胃液および尿より結核菌検出の報告があり、粟粒結核の診断が確定した。入院第3病日には、低酸素血症が進行し、急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome;ARDS)を発症し、直ちに人工呼吸器を装着するとともに副腎皮質ステロイド薬の投与を開始した。治療は奏功し、挿管後6日で抜管し得た。その後の経過も順調であった。粟粒結核の播種性血管内凝固症候群(DIC)やARDS発症例では死亡率70~80%と極めて予後不良とする報告が多いが、本症例では早期治療(治療的診断)により救命することが出来た。高齢者が原因不明の高熱を来した場合には、粟粒結核を念頭に置いた鑑別診断が必要で時機を逸せず抗結核薬療法を行うことが肝要である。(著者抄録
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