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    Optimal Banking Contracts with Commitment and Renegotiation

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    本稿では,Laffont and Tirole(1993)第10章および伊藤(2003)第7章の分析に依拠しながら,宇惠(2008)の2期間モデルを発展させる形で長期貸付契約と再交渉について理論的に考察した.再交渉防止契約(すなわち,再交渉を伴うコミットメントのもとでの長期契約)は,第1期における二つのタイプの誘因両立制約が等号で成立するかどうかで,3種類のケースに場合分けすることができた.このうち,非効率的なタイプθ0の誘因両立制約が等号で成立するCase IおよびCase IIIは,第2期におけるθ0のレントが負となるため,最適な契約とはなり得ない.これに対し,効率的なタイプθ1の誘因両立制約のみが等号で成立するCase IIは,常に最適契約となることが明らかとなった.この結果は,宇惠(2008)における完全なコミットメントのもとでの長期貸付契約の分析結果と同じであるが,しかし短期貸付契約のそれとは異なる.宇惠(2008)では,効果的なタイプθ1の誘因両立制約のみが等号で成立する短期貸付契約Case IIが最適となるのは,割引因子δが十分小さい場合に限られるからである.以上の分析結果は,決して自明なものではない.長期契約へのコミットメントに限界がある場合には,宇惠(2008)の短期貸付契約の分析におけるように,効率的なタイプのみならず非効率的なタイプに関しても誘因両立制約が有効となる可能性があるからである.銀行が契約にどのようにコミットできるかは,契約それ自体に重大な影響を及ぼすこととなる

    森林管理インセンティブプログラムに経済的インセンティブは本当に有効か? 久万林業活性化プロジェクトの再契約に関する私有林所有者の意思決定を事例とした検証

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    近年、私有林における森林保全や持続可能な林業を目指した自発的インセンティブプログラムが注目を集めている。欧米では、私有林所有者のプログラムへの参加行動に関する研究が盛んに行われている。プログラム参加者の再契約行動を理解することは、長期的な保全や持続的な管理を達成するために重要である。しかしながら、再契約行動に関する研究は世界的に数少ない。そこで本論文では、再契約行動に関する理論分析と、愛媛県久万高原町における「久万林業活性化プロジェクト」の契約者データを用いた計量分析を行った。その結果、契約期間中に森林の共同管理が実際に実施された契約者の方が、再契約する確率が高くなることが示された

    Strategic Information Gathering and Optimal Banking Contracts

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    本稿では,Crémer and Khalil(1992)の分析に依拠しながら,企業(エージェント)が自分のタイプ(投資プロジェクトの収益性が高いか否か)についての情報を,契約が提示されてから締結されるまでの間にコストをかけて収集するかどうかを選択できる状況の下で,銀行(プリンシパル)が,借手である企業と貸付契約を締結する場合の最適契約設計について検討した.具体的には,情報それ自体の非対称性というよりはむしろ,情報収集コストにおける非対称性の役割を重要視し,宇惠 (2007)のモデルに企業の情報収集決定を導入した.企業はコストさえかければ情報を収集することができるのに対して,銀行は情報収集する機会を持たないという過程が重要である.本稿では特に,企業が契約締結前には自分のタイプを知るためにコストがかかるものの,契約締結後にはコストをかけずに自分のタイプを観察できるケース,すなわち,戦略的情報収集のケースにおける最適貸付契約を分析した.その結果,最適契約設計の問題を企業に情報収集させない契約に限定して分析できることが明らかとなった.企業に情報収集させない契約が最適契約となるということは,均衡においては情報は対称的となり得るということである.しかしながら,たとえ情報が対照的であっても,契約条項は企業の持つ(情報収集上の)比較優位性によって実質的な影響を受ける.つまり,企業が契約締結前に自らの直面する投資プロジェクトに関する調査を実行しなくとも,企業がそれを行う能力を持っていることが契約条項に影響を及ぼす可能性がある

    アグリビジネスにおける契約生産の諸条件

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    Ⅰ . アグリビジネスと契約生産Ⅱ . 契約生産の利点と条件Ⅲ . 契約相手方企業による労働サポートⅣ . 契約生産の諸方式Ⅴ . 日本でのブロイラーの契約生産Ⅵ . ブロイラー契約生産の変遷Ⅶ . 生産規模の拡大と契約生産の変容Ⅷ . 食品製造業と契約生産Ⅸ . 食品サービス産業と契約生産Ⅹ . 食品小売業と契約生

    エントレンチメントと合衆国憲法の契約条項

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    はじめに一 契約条項の歴史 A 契約条項の起源 B 一九世紀の契約条項 C 二〇世紀の契約条項二 ユールの契約条項論とその意義 A エントレンチメント B 政府契約のエントレンチメント性 C 主権?三 ユールの契約条項論に対する批判とその意義 A 金銭的負担のエントレンチメント性 B 「売却」の限界 C 不可譲の権限法理の再検討おわり

    複合契約と筏津契約理論―「契約の目的」概念をてがかりとして―

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     近年、企業により幾つかの契約を組み合わせた複合的な契約が提供されるようになり、そうした新たな契約に対して従来の契約理論に則って機械的に一つ一つの契約の問題処理を行なうと、結果的に不都合な結論に導かれるケースのあることが明らかになり始め、次第に複合契約に注目が集まるようになっていた。その中で平成八年一一月一二日最高裁判所が、契約の複合性を認め、一方の契約の債務不履行を理由に他方の契約の解除を認める画期的な判決を下したことから、一気に複合契約に対する問題関心が高まった。 しかし、複合契約問題というのは、新たに出現した契約類型の問題と性格づけるより、むしろ従来の契約の規範構造の捉え方に問題があるため生じている契約一般に通底する問題ではないかと思われ、「契約の目的」という理論上いまだ明解ではないキーワードを使ってしか解決できない複合契約の問題性を、筏津安恕先生の説かれる「失われた契約理論」の視点を通して見ると、本質的な解決の糸口がつかめるのではないかと考え、「複合契約と筏津契約理論」という表題の下に、複合契約の判例分析からその問題性を解明しようと試みたのが本稿である

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    契約成立に関するポロック契約法第4版34項、35項、アンソン契約法第4版24項、アメリカの州民法・判例の

    インシュアテックと保険法(3) : スマート・コントラクト保険の契約法上の論点

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    本稿は、インシュアテック(InsurTech) を用いてスマート・コントラクトが保険契約に利用されるにあたり、どのような契約法上の論点が生じ得るか、そして、当該論点についてどのように考えられるかを検討するものである。まず、保険契約の流れに従って検討した結果、保険契約の成立、保険契約の変動、保険給付、保険契約の終了のいずれの局面においても、スマート・コントラクトであることによって、保険法上の重要な支障が生ずることがないことが確認された。次に、コード契約のスマート・コントラクトに関しては、コードとして記述されている内容の契約法上の取扱いが問題となり得るので、別途検討した。その結果、コード契約のスマート・コントラクトに関しては、契約としての有効性は認められるものの、定型約款に関する規律の適用可否について見解が分かれ得ると思われる
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