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    看護基礎教育にコミュニティ・オブ・プラクティスの考えを採り入れた「学びのグループゼミ」での学生の学び

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     看護基礎教育カリキュラムの中に,学生がコミュニティを育みながら,看護実践を学び合えるしかけ(授業「学びのグループゼミ」)を組み入れた.本研究の目的は,「学びのグループゼミ」において学生の学習がどのように促進されたか,そのプロセスを明らかにすることである.2016 年度に「学びのグループゼミ」を受講した学生178 人(2 年生86 人,1 年生92 人)のうち,研究参加に同意が得られた学生162 人のなかから,同意が得られた26 名にインタビューを実施し,質的に分析を行った. 本研究の結果,「学びのグループゼミ」で学生は,以下1.~ 3.を学んでいたことが明らかになった.1.2 年生コアメンバーは,グループメンバーが参加しやすい<場を創るために試行錯誤する>,<グループの変化をとらえる>,<グループの成長の役に立てたことを,自身の成長ととらえる>という学びをしていた.2.2 年生アクティブグループメンバーと周辺グループメンバーは,グループメンバーを<場に馴染ませ,相互交流を促進する>,<自らの実習経験を伝える>ことを通してグループの役に立てていることを認識し,自らの<実習経験を共有し,問い直す>という学びをしていた.3.1 年生コアメンバーとアクティブグループメンバー・周辺グループメンバーは,<学びのグループゼミへの戸惑いを感じつつ,参加のしかたを模索する><緊張と戸惑いを乗り越え,学びのグループゼミで安心感と充実感を得る>,< 2 年生と自身の体験を重ね合わせ,思考を広げる>,<教えられる対象としてだけではない,グループ内での自らの存在価値を見出す>という学びをしていた. 「学びのグループゼミ」において学生の学びを促進した重要な相互作用として,次の2 点が考察できた.1 点目は,場を創るために試行錯誤したり,グループメンバーを場に馴染ませたり,経験を伝えるなどすることを通して,安心できる場を創ることを学んでいたこと.2 点目は,実習経験を問い直したり,学びのグループにおける存在価値を自ら見出したりすることによって,グループやグループメンバーの役に立てていることを学んでいたことである.学生が共同参加することで学習が促進するようなしかけを看護基礎教育カリキュラムに設けることができれば,知識提供型の学習とは異なる学習が促進される可能性が示唆された

    看護ケアの実践になぜ“看護師コミュニティ”の育成が必要なのかコミュニティ・オブ・プラクティスの考え方へ

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     看護ケアの実践はどのようにおこなわれているか,野並(2011)が行った「看護ケアの構造化」研究で,看護ケアの実践の構造とプロセスは看護師と患者の間に状況を生成し,看護師間にコミュニティを生成することで成り立っていることが明らかとなった.そのうち看護師間のコミュニティの生成が看護ケアの実践にどのように関連しているか,代表例を示しながら述べた.看護ケアの実践では,患者と看護師の間の『知る』相互行為のプロセスに続いて,看護師は『患者との間に踏み込む』主体的な行為を生成していた.看護師は自分自身が踏み込むという行為をプレッシャーを引き受ける(ストレス)こととして経験し,そのストレスを乗り越えるために看護師コミュニティを必要としていた.さらに,看護師間に生成される看護師コミュニティは,暗黙にパラダイムが共有される『仲間/パートナー』と,明示的にパラダイムが共有される『みんな/コミュニティ』の場を生成することで,看護ケアの実践が『繋がる』状況を作っていた.さらに,看護師は,看護ケアの実践で看護師コミュニティの相互行為を通じて『社会的な存在』となっていた. コミュニティ・オブ・プラクティスの考えを取り入れた看護師コミュニティを育成することで,看護ケアの実践のプロセスで共に学習する社会構造がおこることが期待できる.看護ケアの実践という状況に埋め込まれた学習が,看護基礎教育及び高度実践看護師教育に有用であると考えた.現在,看護基礎教育カリキュラムにコミュニティ・オブ・プラクティスの考えをもとに4学年一緒に学び合う「学びのグループゼミ(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)」を採り入れている.もう一点は,高度実践看護師が開発した特定の専門看護の知識と技能を臨床に移転するためのワークショップに導入している.その成果は,今後発表していく予定である
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