15 research outputs found

    性別適合手術前後における心理的変容 -ロールシャッハ法を通しての検討-

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    生物学的性別と性別意識や性別役割が一致しない状態は,従来「性同一性障害」と言われていたが,現在,国際的には「性別違和(Gender Dysphoria)」,「性別不合(Gender Incongruence)」という用語が使用されている.治療の一つとしてホルモン療法や性別適合手術(SRS)といった身体的治療が実施される場合があるが,本研究の目的は,SRSが性別違和の心理的適応にどのような影響を及ぼすかについて検討することである.SRS実施前後の1事例(20代大学生)のロールシャッハ法の比較検討を行った結果,①量的分析では,反応数や反応時間の減少,F%,F+%,R+%の上昇,M-反応やm反応,CF反応の減少,反応内容ではBl反応の減少などが見られた.②質的分析では,色彩に対し情緒的統制が乱されない形への対処に変化し,性同一性の混乱が緩和された.一方で,③混乱よりはマイルドなあり方であるが,性同一性の揺らぎは完全には消失するわけではないことが示された.④身体的反応や心気症的な不安はSRS後のロールシャッハ法に強く見られたことから,SRSを受けても完全には満たされない身体に対する不適合感が示唆された.SRSは性別違和の心理的な安定に寄与すると考えられるが,青年期という発達時期もあり,identity確立という長いプロセスと時間を要する課題は残されていることがうかがえた

    自由連想の歴史的背景

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    本研究は,S.Freudの自由連想(free association, freien Assoziationen)が「AA.Brillの英訳段階における誤訳であった」というC.Rycroft(1968)の指摘を検討した文献研究である.S.Freudは,初期の臨床事例論文“Studien über Hysterieヒステリー研究 ”(1895)の中で,連想に繋がる‘Einfälle’を使い始めており,“Die Traumdeutung夢判断”(1900)において,‘freisteigende Einfälle’(自由に浮かび上がってくる思いつき)という表現になっている.更に,S.Freudは,1909年アメリカの大学での5回連続講演においては,‘freien Assoziationen(自由連想)’と言っている等の文献研究結果を照らし合わせながら「AA.Brillの誤訳(mistranslation)である」の背景について検討・考察した

    A discussion of Psychotherapy for Bipolar II Disorder

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    本研究は,心理療法を行った双極Ⅱ型障害の事例を取り上げ,その対応について検討したものである.双極Ⅱ型障害は,DSM-Ⅳ(1994)において,疾病概念として登場し,その診断基準も明らかになっていた.しかし,筆者が面接を担当したその当時のわが国の精神医学および臨床心理学領域において,双極Ⅱ型障害の研究論文数は少なかったように,医療臨床の現場においては,現実の臨床像としては,まだ一般的ではなかった.そのような中で,本事例は,神経症水準の“うつ”と見立て心理療法を開始したものの,治療経過の中で軽躁病エピソードが前面に出てくるようになり,“双極Ⅱ型障害”として捉え直し,心理療法的対応の具体的技法について修正を迫られた. 治療者がクライエントの状態像の隠された全容を捉え切れず,誤った理解の元で対応したことによって,双極Ⅱ型障害に必要とされるどのような治療的視点を見落としていたかについて,双極Ⅱ型障害に特徴的と考えられる①異質なうつ状態,②気分の波と軽躁,③同調性という3点から考察を行った.departmental bulletin pape

    自由連想の歴史的背景

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    双極Ⅱ型障害のロールシャッハ法とTAT : 軽躁の影響という視点からの検討

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    To investigate how hypomanic state the in bipolar II disorder affects the Rorschach method and the TAT, we applied each projective method twice in two cases of bipolar II disorder at a point when the clinical features of these cases were deemed to have changed. Hypomanic state in bipolar II disorder produced a decreased form level in the Rorschach method, and responses developed through subjective and delusional perception were observed, as noted by Tsuchiya (2012). In the TAT, storytelling increased as hypomanic intensity increased, and narrated descriptions grew elaborate. As hypomanic state abated, narrated descriptions in the TAT came to represent stories which scored well in reality testing. We found that the aforementioned features of hypomanic state in bipolar II disorder were depicted in both the Rorschach method and the TAT
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