114 research outputs found

    国際仲裁における上訴制度

    Get PDF
     国際仲裁において上訴制度を設ける可能性についての議論が活発になってきている。実際に米国,EUなど一部の国や仲裁機関で上訴仲裁(Optional Appellate Arbitration)制度が採用されている。直近では中国深圳国際仲裁院が,2019年2月21日施行の同院仲裁規則において,当事者の意思により上訴仲裁を申し立てる約定をすることができるとし,この場合の上訴仲裁手続ガイドラインを定めた。 このように上訴仲裁制度が検討され,実際に採用している国・地域や仲裁機関が存在することは,一般に言われる仲裁の特徴・メリットとしての終局性に対して,当事者からの疑問や不満の存在があるからであると考えられ,仲裁機関は,企業・実務家などからの声を受けてより良い制度に改革したいという思いがあるからに他ならない。 そこで,上訴仲裁制度について検討することは,今後の国際仲裁の一層の利用促進のための改善の方向性を検討する上での一助にもなると考え,現行の多くの国際仲裁の優位性に異議を申し立てるような上訴仲裁制度の採用が考えられる理由について,現行の国際仲裁判断への異議申立方式との関連において分析し,上訴仲裁判断の承認・執行が中国の裁判所で争われた事例を分析することで,上訴仲裁の実務上の有効性を検討し,上訴仲裁制度の評価,展望をしてみたいと考える。仲裁の制度改革が行われると,国際仲裁の最大の特徴・利点とされていた終局性が改変され,仲裁のメリットが失われることになるだろうか。本稿においては,こうした問題について留意しながら,事例などが比較的多く紹介されている中国の動向を中心として若干の検討を試みる

    腐敗問題が関わる国際投資仲裁の受理要件

    Get PDF
     国際投資において,投資家が,投資受入国の公務員に賄賂を提供するなどの腐敗行為が存在する。この問題の存在は,国際投資仲裁を機能させなくする危険性がある。いかなる機能不全があるのか。投資家が,投資受入国による投資家に対する「公正かつ衡平な待遇」(Fair and Equitable Treatment)の不供与を主張して損害賠償請求を申し立てた場合に,投資受入国が腐敗行為の存在を抗弁として主張する。この結果として,⑴仲裁申立が受理されず,⑵仲裁が受理されても請求が却下され,⑶仲裁判断が示されても承認・執行が拒否されるといった問題が生じている。このことは,国際投資を増やす阻害要因ともなる。これに対する対策が講じられなければならない。そこで,⑴腐敗行為が問題となる場合の仲裁可能性(受理要件),⑵腐敗行為と認定される基準,⑶腐敗行為があった場合の仲裁手続への影響について検討をする。 腐敗行為は,国の経済発展と優れたガバナンスの達成を阻む。ICSIDは,腐敗行為を処罰する機関ではない。しかし,ICSIDは,しばしば,腐敗行為に関わる紛争に直面している。特に,投資受入国が,投資家の申立てに反対して,ICSIDの管轄権に対する異議申立の根拠として腐敗行為の存在を援用する場合に問題となる。しかし,投資の合法性は,投資の性質が投資受入国の法律に適合しているか否かである。投資の合法性は,投資の許認可,事業運営の過程における非合法性にあるわけではない。仲裁廷は,投資過程における賄賂の供与があることを理由として,安易に自らの管轄権を否定するべきではない。仲裁廷は,投資家に対して,投資に際して国際法の義務を遵守することを求め,腐敗行為を禁じる役割も担うと考える。このための対策を講じるために,投資仲裁における腐敗問題を考え,腐敗行為の仲裁可能性につき検討する意味がある

    Recent Practice in Judicial Supervision for Foreign Arbitration in China

    Get PDF
    application/pdf中国は、二〇一五年三月に「シルクロード経済ベルトと二一世紀海上シルクロードの共同建設推進構想」(”一路一体”構想)を打ち出した。これに応じて司法分野においては、最高人民法院が同年七月に「”一路一体”建設のために司法服務と保障を提供することに関する若干の意見」を発布し、法により沿線国当事者の仲裁判断の司法審査業務を強化し、国際商事海事仲裁の”一路一体”建設における重要な機能を発揮すると述べ、正解の国際商事紛争を解決するセンターになろうと機関整備や制度構築をしようとしている。かかる政策の推進には、国際商事紛争を如何にすみやか、かつ調和のとれたかたちで解決するかが重要な課題になる。”一路一帯”抗争の発布前後で法制度および実務上の変化があるか。(一)中国の外国仲裁判断の承認・執行に対する司法審査に関する直近の法制度の変化と実際の事件における適用の変化を検討し、(二)現時点における中国法院の司法審査の問題点、とりわけ外国仲裁裁判断の承認・執行拒否の判断基準としての①渉外的要素、②準拠法の選択基準における問題点を指摘し、(三)中国の国際商事仲裁にかかわる政策及び実務の動向を展望する。departmental bulletin pape
    corecore