76 research outputs found
通気デバイスを用いて湿度調整した空気の送風が圧迫性皮膚傷害に及ぼす影響
正常な皮膚は外界からの刺激に対するバリア機能を有するが,「浸軟」や「ドライスキン」などの脆弱な状態では外界からの刺激に対してダメージを受けやすい。本研究では,通気デバイスを用いて圧迫中の皮膚に対して湿度を調整した空気を送風することにより,圧迫性皮膚傷害の発生に対する影響を検討することとした。 磁石でラット皮膚に圧迫を行い, 1 匹あたり4 箇所の圧迫性皮膚傷害を8 匹(32 創)作成した。32 創を乾燥群(湿度約25%,10 創),中間群(湿度40 〜 50%,12 創),高湿群(湿度70%以上,10 創)の3 群に分け,発赤面積・重症度・潰瘍発生率の測定を行った。中間群は高湿群よりも,発赤面積が有意に小さかった(除圧後48 時間, p<0.05)。発赤の重症度を示すOptical Density は,中間群では高湿群よりも有意に低かった(除圧後24,48時間,p<0.01,p<0.05)。総潰瘍出現数は,高湿群が有意に多く,中間群が有意に少なかった(p<0.05)。 圧迫部へ湿度を40 ~ 50% 程度に調整した空気を通気することで圧迫性皮膚傷害の発生率を低下させ,早期に治癒することが示された。また,圧迫部へ70% 以上または25% 程度に調整した空気を通気すると,圧迫性皮膚傷害の発生率が増加し,治癒が遅延することが示された。圧迫された皮膚,いわゆる褥瘡の発症が予想される場合,圧迫中に皮膚湿度を適切に調整することにより褥瘡の発症予防および早期に治癒する可能性が示唆された
遺伝子解析により診断が確定したStartle病(Hyperekplexia)の家族例
Startle病(Hyperekplexia)は驚愕反応の亢進状態を特徴とする稀な疾患であり,聴覚・触覚性の刺激による過剰な驚愕反応は筋硬直や筋痙攣,ミオクローヌスを生じ,転倒や呼吸困難などを引き起こす.新生児期に発症することが多く,大部分が乳幼児期を過ぎると自然に軽減するが,成人になってから発症する例も存在する.原因となる染色体の異常がいくつか同定されており,グリシン受容体・輸送体の遺伝子異常が報告されているが,その遺伝形式は常染色体優性または劣性遺伝,孤発例も多く存在する.今回当科でもStartle病の家族歴を持つ症例を経験し,その遺伝子分析を行ったので報告する.症例は44歳 女性.幼少時より意識消失発作やミオクローヌス様発作のてんかんがありクロナゼパムを内服継続していた.長男(20歳)がこども病院でStartle病と診断されており,今回成人を期に当院に通院するようになったため,本人も一緒に通院希望して当院受診した.両者,歩行時に自分が転びそうな恐怖感が生じたり,緊張することで全身が硬直するといった症状を訴えた.長男を含め,血縁関係のある家族7人に遺伝子分析を行ったところ,症状のある3人からGLRA1(NM-000171)にc.896G>A変位を認めた.今回,医中誌・MEDLINEを用いて日本国内で症例報告されているStartle病を調べ,そこに共通点があるかどうか調べてみた.Startle病は稀な疾患であり,日本国内でもあまり知れ渡っておらず,臨床では見逃されているケースが非常に多いと思われる.外傷により死を招く危険性もある病気であり,病気に対する知識の普及が今後の課題と思われる
- …
