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    反辞書確率モデルを用いた多クラス不整脈の分類

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     現代社会では全世界的なレベルで高齢化が急速に進んでおり,それに伴い,死因が悪性新生物に次いで2番目に高い心疾患についても,心臓病理学上のさまざまな不規則性や異変の早期発見の必要性やその手段の開発がより一層求められてきている.本研究では,近年データ圧縮分野で提唱された反辞書符号化法を利用した新しい不整脈の検知ならびにその分類手法を提案し,その手法を組み込んだ無線ウェアラブル端末による常時心電図監視システムについて考察する. 代表的な不整脈パターンである心室性期外収縮(PVC)と心房性期外収縮(PAC)において,出現しない特徴的なパターンの統計的な性質を調べることによって,それらの分類を行なった.ここで,出現しない特徴的なパターンとは,それ自身を少しでも短くすると,もとのデータには出現してしまうという性質をもっており,極小禁止語とも呼ばれる.極小禁止語の抽出には,MIT-BIHより公開提供されている心電図データベースを利用している.このデータベースは専門医による診断結果が付されており,どの心電波形が不整脈であるかを正確に知ることができる.ところで,正常な心電図データから抽出された極小禁止語には,PVC やPAC を含む不整脈パターンが含まれていると考えられる.そこで,本研究では,抽出した極小禁止語から正常な心電図データの変動を表す有限状態遷移確率モデルを作成した.この確率モデルは,観測データに追従しながら内部状態が推移して行くだけでなく,状態が遷移する確率も合わせて計算するので,不整脈パターンの出現を,非常に小さな確率をとる状態遷移の生起として捉えることができる. 状態遷移確率モデルを作成するにあたっては,まず1サンプル11 ビットで表現される心電図データを量子化するために,データの差分化による頻度分布のシェイピングや量子化レベル数について実験検討を行い,モデルの簡略化,実装にあたってのメモリ量の削減を図った.次に,提案法の性能評価のために,MIT-BIHで提供されている不整脈を含む複数の被験者の心電図データについて,心室期外収縮に対する検知率の実験を行なったところ,平均して,既存の不整脈検出法とほぼ同程度の,感度 (sensitivity) 97.53%,特異度(specificity)93.89% の結果が得られた.さらに,IPhone 端末のエミュレータに提案方式プログラムを組み込んだシミュレーション実験を行ない,必要とされる計算リソースについて調査した.その結果は,CPU占有率が65%,メモリ使用量30.5Mバイトであり,提案方式はウェアラブル端末へ十分実装可能であることが示された.加えて,先に示したPVC の二項分類問題に加えて,PVC にPAC を加えた多値分類問題を考え,それぞれのパターンを特徴付ける極小禁止語について考察を行なった.電気通信大学201
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