Osaka Electro-Communication University Repository / 大阪電気通信大学学術リポジトリ

大阪電気通信大学博士(情報学)2022doctoral thesi

松浦, 純平

術後せん妄を仮想現実で擬似体感できるシステムの設計・構築とその評価著者 松浦 純平学位名 博士(情報学)学位授与機関 大阪電気通信大学学位授与年度 2022学位授与番号 34412甲第66号URL http://doi.org/10.57427/00000318Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja1   学位審査報告書  氏     名   松浦まつうら 純平じゅんぺい  本     籍  徳島県  学 位 の 種 類  博士（情報学）  学 位 の 番 号  甲第 66 号  学位授与年月日  令和 5 年 3 月 9 日  学位授与の要件  本学学位規則第１４条  学位論文題目   術後せん妄を仮想現実で擬似体感できる システムの設計・構築とその評価  論文審査委員   主査 登尾 啓史    副査 高見 友幸   副査 渡邊 郁      論文内容の要旨  本論文では，せん妄の VR擬似体験映像を視聴できるシステムを製作し，その効用を看護学生や看護師に評価してもらった．この“せん妄”とは，脳の一時的な機能失調によって起きる注意障害を伴った意識混濁が発症する症候群である．症状は落ち着きのなさ，見当識障害，幻視，幻覚，暴力行為などの症状が急激に現れ，またその症状は一日の中でも変動する特徴がある．本論文の著者が臨床看護師として外科病棟で働いていたとき，多くの“せん妄”患者に遭遇した．せん妄により，術後の回復に必要不可欠なチューブ類を自己抜去して，生命や予後に重大な影響を与えることがあるため，看護師は全力でせん妄に対峙する．そして，その思いが強すぎて，ときに患者に対して厳しく接する場合もある．ちなみに，せん妄発症患者の 30％はせん妄発症のときの記憶があることが報告されている．また，せん妄を発症する患者に対して看護師が平静に対応しないと，せん妄患者の興奮状態が一層加速することも多い．このことから，せん妄患者の看護にあたる看護師には，常に冷静さが求められる．  このような看護師や看護学生を育成するため，本研究では VRで術後せん妄発症擬似体験動画を作成し，それを平面ディスプレイで視聴したり，ヘッドマウントディスプレイ（ HMD）で没入体感したりできるプログラムの開発に取り組んだ．看護分野におけるこの種の研究としては， VRデバイスによる認知症の疑似体験プログラムがある．そして，そこでは認知症患者に寄り添える点で一定の効果も報告されている．また，統合失調症の患者が体験する世界を VR疑似体感する研究もある．しかし， VRと HMDで 3次元術後せん妄を擬似体験する先行研究は国際的にもみられない．そこで，術後せん妄患者が置かれている世界を擬似体験することで，今後の効果的な術後せん妄患者への看護を考えた．  本論文では，まず第３章で，平面ディスプレイとヘッドマウントディスプレイの臨場感を看護学生に評価してもらい，ヘッドマウントディスプレイの方が優位であることを確認した．次に第４章で， VRデバイス映像をヘッドマウントディスプレイで看護学生に視聴してもらい，その視聴前と視聴後で総合気分評価尺度を2  用いた心理的データ， VRデバイス映像の視聴中の自律神経（交感神経・副交感神経）生理的データを収集し，それらを定量分析評価した．第５章では，看護師に同じ体験をしてもらい，生理的データと心理的データを収集し定量分析評価した．ここで，生理的データは， VRデバイス映像の視聴中の交感神経・副交感神経などの自律神経のデータを収集した．交感神経・副交感神経の割合から対象者のストレス状態を評価した．また，心理的データは， VRデバイス映像の視聴の前後に実施し，気分評価検査を用いて気分状態の評価を実施した．さらに第６章では，看護系大学生を対象にヘッドマウントディスプレイを用いて VRデバイス映像の視聴の前後で面接調査を実施し，面接調査より得られた逐語録より発話量と発話時間と発言内容を定量分析評価とテキストマイニングで分析した．さらに第７章において，看護師に同様のことを実施した．  この結果，以下の事項が明らかになった．まず，せん妄の没入体感には，平面ディスプレイよりもヘッドマウントディスプレイが有効性の高いことがわかった．次に，自律神経機能活性度から，せん妄の好発症状である天井にゴキブリ出現した場面，および防護服を着た人物が出現する場面でストレス値が低くなった．この理由は，看護学生と比較して看護師は，普段からせん妄患者に接していたり，白衣を身近な存在と認識したりしたことがその理由と考えられる．さらに，気分評価検査からは，健常者でもせん妄擬似体験をすることでネガティブ感情に陥ることが明らかになった．最後に， VR擬似体験を経験することで，せん妄患者に対するイメージがポジティブに変化した．これにより，自分がせん妄患者に遭遇した場合，共感・寄り添うなどの変化が出現することが明らかになった．    3   論文審査結果の要旨  本論文では，せん妄の VR擬似体験映像を視聴できるシステムを製作し，その効用を看護学生や看護師に評価してもらった．この“せん妄”は，脳の一時的な機能失調によって起こる注意障害を伴った意識混濁を基盤とする症候群である．症状は落ち着きのなさ，見当識障害，幻視，幻覚，暴力行為などの症状が急激に現れ，症状は１日の中でも変動するという特徴がある．せん妄を発症している患者に対して看護師が平静に対応しないと，より一層興奮してしまうことがある．そのため，せん妄患者の看護にあたる看護師は冷静さが求められる．本論本では，看護学生や看護師がこの冷静さ獲得するため，せん妄患者に寄り添えるようになることを期待して HMDと VRによるせん妄体感システムを構築した．  看護分野における VRデバイスを用いた研究としては， VRデバイスによる認知症の疑似体験プログラムがあり，認知症患者に寄り添う点で一定の効果が報告されている．また，統合失調症の患者が体験する世界を VR疑似体感する研究などもある．しかし， VRデバイスを用いて 3次元術後せん妄を擬似体験する先行研究は国際的にもみられない．そこで本研究では，術後せん妄患者の置かれている世界を擬似体験することで，今後の効果的な術後せん妄患者への看護を考えることができると思い，術後せん妄発症 VR擬似体験の基礎的研究に取り組んだ．  本研究では以下の  4 点が明らかになった．  1.仮想現実世界への VR 視聴の没入感は，平面ディスプレイよりヘッドマウントディスプレイの方が，効果は高いことが明らかになった．  2.自律神経機能活性度のストレス値が低くなったのは，せん妄の幻覚症状の１つとして頻出症状である「天井にゴキブリが出現した場面」は看護教育でも学修し，また臨床でも患者の話からよく聞く主症状の一つであったのが一つ目の理由，看護師は普段から白衣姿を身近な存在と認識しているために「防護服を着た人物が出現した場面」で親近感を感じていたことが二つ目の理由であったと考えられる．  3.気分評価検査からは，看護系大学生・臨床看護師に限っての健常者でも  VR デバイスを用いたせん妄擬似体験を経験することで視聴後はネガティブ感情に陥ることが明らかになった．  4.VR 視聴デバイスを用いてせん妄擬似体験することで視聴後はせん妄患者に対するイメージが「怖い」などのネガティブな印象から「寄り添う必要性を感じた」などの患者への共感を含むポジティブな印象へと変化した． VR デバイス視聴後は看護系大学生・看護師ともに自分自身がせん妄患者に遭遇した場合の対応に対する考え方としては，せん妄患者への共感・寄り添うなどの感情が変化することが明らかになった．  以上の  4 点から，看護専門教育・臨床看護教の DX（デジタルトランスフォーメーション）化の観点から，今回の知見は有効に活用できると考えている．このように，本論文は博士学位論文として十分な新規性と有用性を備えており，関連する成果も適切に公表・発表され，研究成果は充分に周知されている．したがって，本論文の審査結果は「合格」とする．   

術後せん妄を仮想現実で擬似体感できるシステムの設計・構築とその評価

國居, 貴浩

臓器手術ナビゲータやシミュレータにおけるメス誘導ナビゲーションアルゴリズムとその提示に関する研究

大阪電気通信大学博士(工学)2021doctoral thesi

久利, 彩子

立位における足趾の機能評価

小堀, 亮

生物学的および化学的手法を用いた機能性微量フラボノイドの生産検討

平瀬, 龍二

セルロース鎖の集合体形成およびナノセルロースの各種媒体における分散状態と特性評価

藤江, 建朗

長時間心拍動数に基づく睡眠中の生理状態評価に関する研究

島袋, 舞子

初等中等段階におけるプログラミング教育教材の研究

大阪電気通信大学博士(工学)2020doctoral thesi

小出, 卓哉

立ち上がり動作における二関節筋の機構特性

大阪電気通信大学博士(工学)2020年度doctoral thesi

西井, 崇

医薬品製造プロセスモニタリングのための近赤外分光分析技術の開発著者 西井 崇学位名 博士(工学)学位授与機関 大阪電気通信大学学位授与年度 2020年度学位授与番号 34412乙第14号URL http://id.nii.ac.jp/1148/00000264/Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja1/5  氏 名 西井 崇 本 籍 大阪府 学 位 の 種 類 博士（工学） 学 位 の 番 号 乙第１４号 学位授与年月日 ２０２１年３月１１日 学位授与の要件 本学学位規則第２３条 学 位 論 文 題 目 医薬品製造プロセスモニタリングのための 近赤外分光分析技術の開発 論 文 審 査 委 員 主査 森田 成昭   副査 川口 雅之 副査 齊藤 安貴子  論文内容の要旨 近年、医薬品規制調和国際会議の働きかけにより、新薬の開発と承認審査が世界的に共通のベースに基づいて行われるようになってきている。これを踏まえて、製剤開発や製造段階に至るまでを見通した品質保証システム（Total Quality System）の確立が望まれている。こうした国際化の中で、医薬品の品質保証を科学的根拠に基づいて柔軟に展開していくことが求められている。そこで、製造プロセスを設計、解析し管理するための有力な方法としてProcess Analytical Technology（PAT）が注目されている。医薬品の製造現場において、原料や中間体の品質パラメータや製品の機能特性を製造プロセスの進行中にタイムリーに計測することが望ましい。これより従来から汎用されてきた抜き取り検査では限界が生じることから、PATのツールとして非破壊で非接触のまま測定可能な近赤外 (Near-infrared：NIR) 分光法等の活用が進められている。PATは医薬品製造の原薬合成から製剤化まで活用されており、その測定対象は液体から粉体、錠剤まで多岐にわたることから、状況に合わせて適切な装置を導入する必要がある。加えて、NIR分光によって得られるスペクトルデータは他の機器分析データと比べて、信号が重なりあった複雑な波形となる。よって、従来の解析手法では化学的意味を明確に示すことが困難となり、分析精度が不安定になるため、その吟味が求められる。よって、新しいNIR装置をプロセスモニタリングに導入するためには、ハード (装置) 面とソフト (解析手法) 面の両方発展が不可欠になる。 そこで本研究の目的は新しく開発されたNIR分光装置とスペクトル解析法を組み合わせ、医薬品の反応プロセス及び製造プロセス中に非破壊・非接触かつ高精度で化学成分をモニタリング可能なPAT手法の革新提案を行うこととした。 第3章では医薬品の原薬合成プロセスのモニタリングを想定し、世界で初めて開発されたNIRと赤外(Infrared：IR) 領域を同時に同じスケールで測定可能なNIR/IR一体型分光計とバンド選択を行う2/5 データ解析手法であるヘテロ2次元相関分光法 (ヘテロ2DCOS) を組み合わせることでアルコール発酵過程のエタノールの高精度な定量を行った。しかし、生成するエタノールの変化と消費される糖のピークの挙動が似通っている場合、NIR/IRヘテロ2DCOSでそれらの成分を明確に分離する事は困難であることが明らかとなった。そこで、第4章ではアルコール発酵過程における混合成分の独立した定量を目的として、新しいスペクトル分析法「NIR/IR Moving-Windowヘテロ2次元相関法」の開発を行い、さらに複雑なアルコール発酵過程のモニタリングに応用することで、その有用性について検証した。第5章では、経口固形製剤の錠剤フィルムコーティング工程において、検量線を作成することなく簡易的にコーティング被膜量を半定量する技術を考案し、生産プロセスのパラメータ設定に応用した。第6章では医薬品の最終製品の全量モニターを想定した高速ハイパースペクトラルカメラを用い、実際の医薬品製造速度で錠剤全数の主薬含量及びコーティング膜厚の測定が可能か検証を行った。本装置は従来のスポット移動型のNIRイメージング装置とは異なり、高速で広範囲測定が可能だが、スペクトルの波数分解能が低く、得られるデータ量はわずかとなる。すなわち低品質なスペクトルデータであってもケモメトリックスを応用することで、化学情報を最大限に引き出すような解析手法を検討することが重要となる。 以上のように、本研究では原薬合成から錠剤化までの医薬品製造プロセスにおいて、新たに開発されたNIR装置を各製造工程に合わせて最適化し、それに合わせて解析手法を提案することで、従来得られなかった情報を引き出せることが示された。さらに、得られた情報から、製品品質の重要因子を特定し、適切な制御方法を検討すると共に、製造工程にフィードバックすることで医薬品の品質向上に貢献できることを示した。    3/5  論文審査結果の要旨  本博士論文の審査は，上記3名の審査委員によって，2021年2月12日に行われた． 本論文では，近年，製薬業界における品質管理で技術革新が強く求められている，医薬品製造プロセスモニタリングのための新たな技術開発の取り組みがまとめられている．従来，医薬品製造プロセスはバッチ式で行われ，その品質管理は抜き取り検査で行われていた．しかし，最近の高度な製剤設計や業界における標準化の流れから，ライン式での生産と，リアルタイムでの全量検査が可能なプロセスモニタリング技術が求められている．このような，製薬業界における Process Analytical Technology (PAT) の要求から，本研究は非破壊分析が可能な近赤外分光分析に着目し，新たな装置開発（ハード）とデータ解析法開発（ソフト）の両方に取り組んでいる．さらに，それらを医薬品の反応プロセスモニタリングと製造プロセスモニタリングの両方に応用しており，製薬業界における近赤外分光分析技術のPATへの展開が示されている． 第1章の要旨に続く第2章では，上述のような，製薬業界における医薬品製造プロセスモニタリングの現状と課題がまとめられており，他の分析技術と比較したときの近赤外分光分析の特徴が示され，プロセスモニタリングへの可能性と解決すべき課題が述べられている．また，本研究におけるハード開発は個人研究ではないため，本審査の対象とならない範囲の技術面について，これまでの開発経緯がまとめられている．また，ソフト開発を行うに当たり，基礎技術となっている，データ前処理，ケモメトリックス，二次元相関法といった従来法の紹介がまとめられている． 第3章では，医薬品の原薬合成プロセスのモニタリングを想定し，世界で初めて開発された，近赤外（NIR）と赤外（IR）の波数領域を同時に同じスケールで測定可能なNIR/IR一体型分光計と，バンド選択を行うデータ解析手法であるヘテロ2次元相関分光法（ヘテロ2DCOS）を組み合わせることで，アルコール発酵過程のエタノールの高精度な定量が行えることが示されている．この成果は Analytical Science 誌に原著論文として掲載された． 第4章では，アルコール発酵過程における混合成分の独立した定量を目的として，新しいスペクトル分析法である「NIR/IR Moving-Window ヘテロ2次元相関法」の開発を行い，複雑なアルコール発酵過程のモニタリングに応用することで，その有用性を検証しており，グルコースとフルクトースを混合したときの発酵過程において，それぞれの濃度変化の違いを検出できることが示されている．この成果は Applied Spectroscopy 誌に原著論文として掲載された． 第5章では，経口固形製剤の錠剤フィルムコーティング工程において，検量線を作成することなく簡易的にコーティング被膜量を半定量する技術を考案し，生産プロセスのパラメータ設定に応用することが試みられており，教師なし学習でも定量できることが示されている．この成果は製剤機械技術学会誌に原著論文として掲載された． 第6章では医薬品の最終製品の全量モニターを想定した高速ハイパースペクトラルカメラを用い，実際の医薬品製造速度で錠剤全数の主薬含量及びコーティング膜厚の測定が可能か検証を行っており，低品質なスペクトルデータでもケモメトリックスを応用することで化学情報を分析できることを示している．この成果は International Journal of Pharmaceutics 誌に原著論文として掲載された． 以上のように本論文では，原薬合成から錠剤化までの医薬品製造プロセスにおいて，新たに開発した近赤外分光分析装置を各製造工程に合わせて最適化し，それに合わせて解析手法を提案することで，従来得られなかった情報を引き出せることを示している．さらに，得られた情報から，製品品質の重要因子を特定し，適切な制御方法を検討すると共に，製造工程にフィードバックすることで，医薬品の品質向上に貢献できることを示している．上述の研究成果は，筆頭論文として4報，共著論文として4報，共著総説として1報にまとめられており，第33回近赤外フォーラムにおいて最優秀ポスター賞を受賞するなど，研究コミュニティーからも高い評価が与えられている．また，本研究，及び関連する学術内容について，口頭による試問を行ったところ，専門分野の学力が十分にあることが確認され，国際会議における研究発表と国際誌における論文投稿の内容から，英語についても十分な学力があることが確認された． 以上の理由により，本博士論文は，博士（工学）の学位にふさわしい研究成果がまとめられていると判断した． 4/5    論文審査委員   主査 森田 成昭   副査 川口 雅之 副査 齊藤 安貴子                                                  5/5  論文審査結果の要旨    最終試験の結果、合格と認める。    論文審査委員   主査 森田 成昭   副査 川口 雅之 副査 齊藤 安貴子  

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