16 research outputs found

    伊藤博先生を偲ぶ

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    水田の環境保全と水稲の超多収を実現させるための戦略

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    本研究では、水田の環境を保全しながら水稲の超多収を実現させる戦略について検討した。得られた結果の概要は以下の通りである。1)1992年に998kg/10aの超多収を示した長野県伊那市の農家水田で生育するコシヒカリを調査し解析した。伊那コシヒカリの超多収性は、総根重、土壌表層根重の多さ、根の生理活性の高さに支えられた高い光合成速度と蒸散速度が背景にある。また、低水温の農業用水と土壌中の気相割合の多さも関係している。2)有機資材の連用により土壌中の腐植含有量は増加し、超多収を示した伊那コシヒカリと類似した根系形態を示すようになった。また、根の生理活性も高いことから、土壌への有機物連用は地力維持と環境保全への近道であると考えられた。3)コスト削減と外部環境に及ぼす影響を軽減するには、不耕起直播栽培や土中打込み点播方式も効果的である。また、LP肥料を用いたF1水稲品種の乾田不耕起直播栽培も北陸では有効であると考えられた。4)慣行的に施用されてきたN,R,K施肥の意味について、三要素継続試験から検討すると、三要素区、無P区、無K区での収量、根重、根の活力に有意な差が認められないことから、慣行的な施肥法を再考する必要性があることが明確となった。5)水稲の無農薬有機栽培の可能性について、コシヒカリBLを用いて検討した。再生紙マルチを用いて水稲を有機栽培すると575kg/10aの収量を示した。根系生育および根の生理活性は、超多収を示した伊那市のコシヒカリに近似していたことから、有機資材を用いて多収を実現することの可能性が示唆された。なお、畦畔にはアジュカ、イワダレソウを埴栽した。また、植物資材を利用した除草効果を検討したところ、米糠の利用が現実的であると判断された。6)2002年の伊那市の超多収コシヒカリの収量は800kg/10a以上を示した。Grain yield of rice grown in Ina Held was comparatively high, and showed large root dry weight and high physiological root activities. Cytokinin content (t-ZR) in the bleeding sap of Koshihikari grown in Ina was high compared with the other fields. Accordingly, it may be considered that physiological root activity leads to high grain yield. A oil in Ina includes high rate of gas phase and high carbon content. Physical characteristics of the soil, that is high porosity content and high humus content, will affect the rise or fall of soil and water temperature. Effects of continuous fertilizer managements on the aboveground growth and root growth, physiological root activities and yield components of rice were discussed. Koshihikari grown with large amount of organic fertilizer applications had significantly smaller root dry weight and shallower root distribution than conventional management. Optimum management of organic fertilizers applications will be needed. F1 cultivars of rice, though extremely late maturing, showed good adaptabilities to no-tillage direct seeding with LP fertilizers use on well-drained paddy field in Hokuriku district N, P, K fertilizers were used very commonly as a conventional management Grain yield of no-phosphate application, no-Potash application and conventional plot with three major nutrient applications were discussed from the data of continuous 20 years experiments. There was no significant difference in the yield among the experiments. There was no significant difference in the root dry weigh and physiological root activities among the treatments. It is necessary to discuss if the conventional fertilizers application with three major fertilizers is need. Rice production of maximizing sustainable grain yields through environmental management of paddy field will be possible using compost or LP fertilizer and rice bran.研究期間(年度):1999–2002, 研究課題/領域番号:11660015出典:「水田の環境保全と水稲の超多収を実現させるための戦略」研究成果報告書 課題番号11660015 (KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))   本文データは著者版報告書より作

    省エネルギー栽培を目的とした水稲の耐肥性に関する研究

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    省エネルギー栽培を最終の目的として、施肥量を減少させても収量の減少が小さい品種の特性について、根系形態の観点から検討した結果いくつかの品種特性が明らかになった。(1)栄養生長期における水稲根系形態には明確な品種間差異が認められた。この品種特性は地上部諸形質としては関係なく、かつ土壌温度の変化に対しても安定であるところから、品種としての遺伝的特性の可能性が高いと考えられる。農林3号は狭い角度で密な根系を形成し、陸羽132号は広い角度で疎な根系を形成することが特徴的に認められた。(2)根系に特徴のある品種間において正逆交雑を行いF_1種子を得、F_1水稲の根系形態について検討すると、F_1水稲の根系開度、根系占有面積は親の組合せの違いにより、+と-のF_1効果が認められた。F_1水稲の根系形態の遺伝性については、次年度後代検定を行って詳細に検討し、根系形態の遺伝性について明確にしたい。(3)栽培環境の違いによる根系形態の変異について、施肥法の違いによる視点から検討した。施肥法の違いによる品種間差は、根系開度については農林3号が一番小さく、次いでコシヒカリ、陸羽132号の順で大きかった。また、深層族肥区、表層施肥区(深水)の施肥法の違いによって、根系開度に有意差が認められ、いずれの品種においても深層施肥区で狭い角度の根系が形成されていた。(4)施肥量が減少しても収量の減少程度が小さい品種は、古い品種群にも多収穫の品種群にも存在するが、概して古い品種群に多い。これが根系形態の違いに起因しているのかどうかについては、今のところ判断が難しい。しかし、品種による根系形態の差異が遺伝的な現象である可能性が示唆され、施肥法の違いによっても根系形態が変化する事実が認められたところから、根系形態を遺伝的変異と環境変異とに分離できる日も遠くはないと考えられる。今後さらに検討を進めてゆく予定である。Fertilizer responsiveness with the aim of lavor-saving culture of rice plants was investigated by using root box experiment and filed experiment. The cultivars used in this experiment were Rikuu 132, Senichi, Jyukkoku, Asahi, Futaba, Takenari, Nankin 11, Keicho 2, Raikei, Mitsuyo 23, Calrose 76, Saturn, Rancarolo, Shinriki, Norin 3, Norin 18, Kameji, Suigen 258, Akihikari, Koshihikari and Sasanishiki. Differences in the root system of rice plants at vegetative stage were significant among the cultivars. The angle of the root system of Norin 3 was significantly narrower than that of Rikuu 132, and the space of the root system in the soil of Norin 3 was significantly smaller than that of Rikuu 132. F_1hybrid rice were obtained from the next cross combination, Norin 3 x Mitsuyo 23(F_1-A), Mitsuyo 23 x Norin 3(F_1) , Rikuu 132 x Raikei(F_1-C) and Raike x Rikuu 132(F_1-D), respectively. Heterosis (F_1) effect in the angle of the root systemin the soil were recognized. Diferences in the root system under the conditions of fertilizer application to deeper layer, uniform application of fertilizer to top soil, fertilizer application to lateral and deeper layer, surface application of fertilizer and surface application of fertilizer(deep flood irrigation) were investigated. The angle of the root system in the fertilizer application to deeper layer was significantly smaller than that in the surface application of fertilizer (deeper flood irrigation).研究課題/領域番号:62560015, 研究期間(年度):1987–1988出典:「省エネルギー栽培を目的とした水稲の耐肥性に関する研究」研究成果報告書 課題番号62560015 (KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))   本文データは著者版報告書より作

    作物の固体間競合に関する研究

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    金沢大学教育学部研究課題/領域番号59560014, 研究期間(年度):1984出典:研究課題「作物の固体間競合に関する研究」課題番号59560014(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59560014/)を加工して作

    The Relationship between the Root Growth Analysis and the Growth Analysis in Lolium multiflorum Lam

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    前報では, 地下部生理活性の指標の一つとして, 根のα-NA酸化力を定量し, かつ, 乾物生産の分配率をも考慮した形で, 個体の生長を解析するという考え方を提起し, Root Growth Analysisと呼んだ. この中で, Root Activity/RwをURA (Unit Root Activity), Rw/PwをRWR (Root Weight Ratio), (1/Root activlty)・(dPw/dt)をRAR (Root assimilation Rate)と定義した. (ここで, Root activity とは, α-NA酸化量・hr-1・個体-1のことである.) 今回は, これらの各要素と, 生長解析法の要素であるLAR, NARとの相関関係を調べ, かつ, 栽培上の施肥技術との関係についても, 若干の検討を加えた. (UFA)^^^-と(LAR)^^^-(Fig. 1)との間には, 正の相関関係が認められ, (URA)^^^-と(NAR)^^^-との間にも同様の関係が認められた. 根の生理活性(URA)は, 地上部の光合成器官の生長と密接な関係があることが考察された. (RWR)^^^-と(LAR)^^^-(Fig. 2), (RWR)^^^-と(NAR)^^^-(Fig. 3)の関係は, 培地NO3-N 50ppm区では正の相関関係が, 培地10ppm区では, 負の相関関係が認められた. 培地養分条件の違いによる, この相関関係の違いは, 作物栽培上の施肥量, 施肥時期などの問題とも関係があるものと考えられる. しかし, Root Growth Analysis と Growth Analysisとの関連性, それに, 栽培技術との関係を明確にするためには, 未だ資料が不足しており, 今後, 種々の材料, 多くの培地条件での実験によって検討を加えていきたい

    Competition among Individual Plants in Crop Population : IV. Growth analysis from the viewpoint of root behavior

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    生長解析法は, 作物の生長を光合成組織としての葉面積を基盤として, 定量化するところから始った。しかるに, 個体の生育量は, 地上部生育と地下部生育との和として示され, かつ, 生長の源となる養・水分が, 根の生理活性や, 地上部-地下部の相互関連性を, 媒介として吸収され,地上部へと移動することを考慮した場合, 地上部-地下部の相互関連性と, 地下部の生理活性を定量化した上で, 個体の生育を論じる必要性が生じてくる。そこで, 筆者らは, 上記の考え方に基づいて, 個体の相対生長率(RPGR)を, 根の生理活性の程度(URA)と, 乾物の分配率(RWR), それに, 根の生理活性の強さに対する個体の生長率の程度(RAR)という, 3つの要素の積として表示する可能性を示唆した。結果の概要は以下の通りである。1. 地下部の生理活性(根のα-ナフチルアミン酸化力)や地上部一地下部の相互連関性を定量化した形での個体の生長解析法を検討すると, 以下の関係式が成立する。[numerical formula] (RPGR)=(URA)×(RWR)×(RAR) (ここで, Pwは個体乾重, Rwは地下部乾重, Root Activityは単位時間当のα-NA酸化量を示す。)従って, 個体の相対生長率は, 上記の3つの要素の積として示され, 作物群内での個体の生長を, 地下部の生理活性と, 地上部-地下部の相互関係から検討できることが示された。2. (個体の全α-NA酸化量/hr)/(根乾重)を, Unit Root Activity (URAと略記)と呼ぶ。URAの培地養分レベル間での差異はほとんど認められなかったが, 栽植密度間での差異は顕著であった。3. 個体全乾重に対する地下部乾重の割合を, Root Weight Ratioといい, RWRで表示すると, これは生産された乾物の分配率を示すことになる。RWRの栽植密度間差異は, 高NO3-N培地(50 ppm)では, 認められなかったが, 低NO3-N培地(10 ppm)では, 認められ, 培地養分濃度が低下すると, いずれの栽植密度においても, RWRは増加を示した。4. 根の生理活性の強さ(α-NA酸化量の程度)に対する, 個体の乾物増加率の比を, Root Assimilation Rate (RAR)と呼ぶ。RARは, 栽植密度が小さいほど大となる傾向を示し, 生育が進むにつれ, 栽植密度間で, RAR値は, 大きくなる傾向を示した。5. 個体の乾物増加率は,(1/(Pw))・(d (Pw)/dt)で示され, RPGRは生育が進むにつれ, 減少する傾向が認められた。RPGRは, 栽植密度が小さいほど大となる傾向を示し, また, 養分濃度(培地NO3-Nレベル)を低下させると, RPGRの値も減少する傾向を示した。6. 草型の違いによる, 競合機構の違いを, Root Growth Analysisの方法で検討してみると, 低濃度培地で, A sp. (Weeping type)のRWRが, B sp. (Erect type)より大きい傾向が認められたが, 他の要素に関しては, 草型による顕著な差は, 認められなかった
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