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    十二指腸潰瘍に起因する十二指腸結腸瘻の1例

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    86歳男性。整形外科疾患に対して鎮痛剤を長期内服していた。腹痛、下痢、食欲低下などで当科受診し、高度貧血を認め精査のため入院となった。諸検査にて十二指腸潰瘍による十二指腸横行結腸瘻と診断し、絶食、中心静脈栄養、proton pump inhibitor投与を行った。その後、腹痛、黒色便は消失し、貧血は改善傾向を認めた。経過観察の上部消化管内視鏡検査では、潰瘍は縮小するも瘻孔は難治性であった。以上より、瘻孔に対する手術が必要と判断したが、瘻孔部を含めた胃切除では侵襲が大きいと考え、胃空腸バイパス手術を選択した。術後経過は良好であった。退院後2ヵ月が経過し、内視鏡検査で潰瘍は瘢痕化し瘻孔は消失した。近年、制酸剤の進歩などにより減少してきており、十二指腸潰瘍の結腸への穿通は最近では稀な疾患である。本疾患に対する治療としては瘻孔切除を基本とした手術が多く行われるが、本症例は高齢でありバイパス手術を選択したが、良好な経過を得ることができた。本症例につき若干の文献的考察を含め報告する。(著者抄録

    術前virtual navigationを併用した胸腔鏡下肝切除術の1例

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    腫瘍の局在位置が横隔膜直下の領域に局在する肝腫瘍に対しては、腹腔鏡下のアプローチは難易度が高く工夫が必要である。本症例では横隔膜直下に存在する肝腫瘍に対し、術前シミュレーションを駆使し、適切なポート位置を選定して、胸腔鏡下経横隔膜経路にて肝切除を行った。横隔膜を切開後術中超音波にて肝を観察し、腫瘍の位置を同定、マーキング後ラジオ波凝固装置および前凝固後超音波凝固切開装置にて肝を離断し、腫瘍を摘出した。術前シミュレーションにて腫瘍への最適な到達経路を確認し、良好な視野確保を可能にした胸腔鏡下経横隔膜経由肝切除手術1症例を経験したので報告する。(著者抄録

    腹腔鏡下に切除したS状結腸神経鞘腫の一例

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    神経鞘腫はSchwann細胞に由来する腫瘍で、消化管、特に大腸に発生することは稀である。今回、S状結腸に発生した神経鞘腫を経験したので報告する。症例は73歳、女性。検診で下部消化管内視鏡検査を受け、S状結腸に辺縁なだらかで表面平滑な隆起性病変を指摘された。生検では正常粘膜のみ観察されたが、間葉系腫瘍も否定できないため、腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した。術後経過良好で第8病日に退院した。病理組織学的には粘膜下層に繊維性被膜を有する腫瘤性病変を認め、S-100で濃染し、α-SMA陰性、c-kit陰性、Ki-67低率陽性であることから神経鞘腫と診断された。(著者抄録

    仮想腹腔鏡支援により切除部位を同定し得た膵インスリノーマの1例

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    症例は77歳女性。突然の意識消失発作にて当院受診。術前の血清生化学検査、CTおよび選択的動脈内カルシウム注入法にて膵体部のインスリノーマと診断された。CTより仮想腹腔鏡を作成し、その画像データをiPadに転送、術野映像との比較確認を可能として腹腔鏡手術を行った。腫瘍は腹腔鏡観察下では同定不可能であったが、主要血管から仮想画像を参考にすることにより、適切な膵切離ラインを決定可能となり、腹腔鏡下膵体尾部切除を安全に施行。術後経過は良好で合併症なく退院した。仮想腹腔鏡を用いた手術支援は、手術のナビゲーションアイテムとして有用であり、特に肉眼上同定不可能な実質臓器の腫瘍切除においては、安全と質を確保する上で必須である。(著者抄録

    緊急手術にて救命しえた呼吸不全を伴う特発性横隔膜破裂の1例 

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    特発性横隔膜破裂に対し緊急手術を施行し,救命しえた1例を経験したので報告する.症例は73歳の女性.嘔吐後に急激に呼吸困難が出現し前医を受診した.CTにて胃穹窿部の左胸腔内への脱出がみられた.呼吸不全が進行したため精査加療目的に当院へ搬入された.食道裂孔ヘルニア嵌頓と診断し,発症から20時間後に緊急手術を施行した.上腹部正中切開で開腹し左胸腔内へ脱出していた胃穹窿部を用手的に腹腔内へ整復した.食道裂孔左側に横隔膜破裂部を認めたため,特発性横隔膜破裂と診断し,同部を縫合閉鎖し手術を終了した.術後合併症はなく,第18病日に軽快退院した.特発性横隔膜破裂は極めて稀な疾患であり術前診断が困難であるが,画像所見で胸腔内への消化管脱出が認められた場合は本疾患を念頭において早期の手術を行うことが重要と考えられた

    胸腔内穿破した特発性食道破裂に対する内視鏡下閉鎖術の一例

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    症例は46歳女性で,嘔吐後の上腹部から左肩の痛み,呼吸苦を訴え救急車にて近医を受診.特発性食道破裂の診断にて当院紹介となった.CTでは左胸水が多量に認められ,胸腔内穿破を伴う特発性食道破裂と判断し胸腔ドレーンを左胸腔に挿入した.ガストログラフィン注入による透視では1cm程の穿孔部が確認され,ドレーンにより良好にドレナージされること,全身状態も保たれている事より保存的に経過観察とした.その経過中に炎症所見の遷延化を認めたため,内視鏡下クリップ閉鎖術を施行した.その直後の透視においては穿孔部の閉鎖が確認され,ドレーンからの流出も減少し,入院10日目に水分,14日目に食事開始し特に合併症なく退院となった.今回,内視鏡下閉鎖術が有効であった特発性食道破裂を経験したので報告する

    体腔内Birrloth-I法再建(デルタ吻合)を用いた腹腔鏡下幽門側胃切除術の検討

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    教室では1999年より早期胃癌に対して腹腔鏡手術を導入し、手術手技の安定に伴い2005年より一部の進行胃癌にも適応を拡大してきた。また、導入当初は小切開を置いて胃十二指腸吻合を直視下に行う腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(Laparoscopy-Assisted Distal Gastrectomy、以下LADG)を行っていたが、2005年よりさらなる低侵襲を目的に自動縫合器を用いた体腔内Billroth-I法再建であるデルタ吻合を導入し、完全腹腔鏡下幽門側胃切除術(Laparoscopic Distal Gastrectomy、以下LDG)として現在までに137例に施行した。その治療成績をLADG62例と比較検討し報告する。LDGでは病理学的進行度の進んでいる症例が多かった。平均手術時間はLDGで有意に短く(219分vs287分、P<0.001)、平均出血量も少ない傾向が認められた(86mL vs 121mL、P=0.0646)。リンパ節郭清範囲、郭清リンパ節個数、術後合併症、術後在院日数は両群間で有意な差は認められなかった。現在教室で行っているデルタ吻合を用いたLDGの短期治療成績は良好なものであった。今後は長期治療成績の検討と進行胃癌に対するD2郭清を伴うLDGの定型化が重要であると考えられた。(著者抄録
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