511 research outputs found

    高年齢者の大企業から中小企業への円滑な転職 ―「中小企業における仕事の仕方」を理解している大企業勤務者の特質とは―

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    大企業勤務者が中小企業へ移動(転職)するためには,現在の勤務先や取引先のネットワークを利用して,移動(転職)先の経営理念・方針や労働時間等の労働条件,能力開発等についての情報を積極的に収集するだけでは十分ではない。移動(転職)者である大企業勤務者が,中小企業と大企業では「経営者との相性を含めた仕事の仕方」が異なっていることを理解しているかどうかが大企業から中小企業へ円滑に移動(転職)し,移動後に成果を上げることができるかどうかの重要なポイントである。  「中小企業での仕事の仕方」を理解するためには,以下のことが重要である。第1に,ボランティア活動を行うことにより小さい組織で活動する経験をすることである。ボランティア組織と中小企業では営利・非営利の違いがあるが小さい組織で働く(活動する)ことには変わりがないからである。第2に,中小企業では「特定」の仕事だけでなく「幅広く」仕事を担当する必要があるため多くの仕事を経験すること,あるいは「営業」の仕事(中小企業との取引など)を経験することにより,中小企業とビジネスを行う機会をもつ,あるいは,増やすことにより,「中小企業での仕事の仕方」を理解することができる。  他方,出向に関しては,大企業勤務者の出向先が必ずしも中小企業でない可能性が高いため,出向経験が「中小企業における仕事の仕方」を理解することに貢献していない。したがって,今後は,中小企業への移動(転職)を見据えたキャリア構築を考え,意識的に,出向先として,中小企業を選択肢の1つに加える必要がある。さらに,公的な職業資格など仕事に関する能力を証明する資格が「中小企業での仕事の仕方」を反映するような形で構築されていない可能性が高いため,今後は,個人の能力開発投資行動に際しては,公的な職業資格の取得だけを行動目標にするのではなく,中小企業の経営者や従業員と議論できるような異業種交流会や社外の研究会・勉強会に参加するような幅の広い能力開発投資行動が必要になってくると考えられる。departmental bulletin pape

    企業の高年齢者の採用行動の特質と戦力化戦略―「50歳代正社員」と「60歳代正社員」との比較を通して―

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    著者が参加した高齢・障害・求職者雇用支援機構(2013)『企業の高齢者の受け入れ・教育訓練と高齢者の転職に関する調査研究報告書』で実施された企業アンケート結果の再分析を通して,以下のことが明らかになった。第1に,企業の高年齢者(50歳以上の正社員)の採用行動にはどのような特質があるのかについてみると,採用に熱心な業種は年齢により左右されないが,これに対して,採用規模は,50歳代の採用では関係がないが,60歳代の採用については規模が小さい企業ほど採用に積極的である。第2に,採用者の早期の戦力化に熱心な職場の管理職とはどのような管理職な者であるのかについてみると50歳代の戦力化については,企業レベルで採用者の戦力化に積極的に取り組んでいる企業の管理職は職場レベルでの取り組みも熱心である。他方,60歳代の戦力化については,50歳代の戦力化とは若干異なり,会社が60歳代の採用者に対して,「受け入れ者の役割を事業所の従業員に周知している」,「健康・疲労面で定期的にチェックを行っている」,「職場の責任者に受け入れ者の仕事に関する要望を伝えている」,「不満や要望を聞く機会を設けている」及び「積極的に声をかけている」を実施している企業の管理職ほど,職場での戦力化に熱心に取り組んでいる。早期の戦力化は企業側のメリットだけでなく,中途採用者や出向・転籍者の離職防止にも大きな貢献を果たすことにつながる。そのためには,企業や職場の管理職が「中途採用者に期待する役割」を明確化し,明確化された期待を知らせる仕組みと企業や職場の管理職が「中途採用者の能力・適性や働き方の希望」を知る仕組みの構築は必要不可欠である。しかしながら,こうした仕組みを構築するためには,企業や職場の管理職と中途採用者の両方を知る社外の第3者からの相談・支援がかかせなく,出向・転籍者や「前の会社」からの紹介等の人的ネットワーク以外の中途採用者にとっては,採用された会社で,早期の戦力になるためには,社会的に両者をつなぐ仕組みを構築することができるかが重要になってくる。既に,障害者雇用の枠組みには,こうした企業と障害者をつなぐ仕組みが構築されており,60歳以降の高齢者についても,同様に,企業と高齢者をつなぐ仕組み(企業や職場の管理職及び高齢者に相談・支援する仕組み)が必要である。departmental bulletin pape

    「基金訓練」から「求職者支援訓練」への移行―どのような変化が起きたのか―

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    求職者支援訓練の状況について「各訓練の受講者数」からみると,基金訓練時に比べて「大幅に減った」と答えている教育訓練プロバイダーが6割以上にも達している。さらに,「やや減」という回答も含め,基金訓練時から受講者が減っているという回答の割合は実に9割弱を占めている。基金訓練から引き続き求職者支援訓練に取り組んでいる事業所のほとんどが受講者減を経験しており,そのことが訓練あるいは組織そのものの運営に深刻な影響を及ぼしている可能性は高い。また,「受講者の受講態度」と「就職支援の取り組み」については,前者は良くなったという回答が約4割で,悪くなったという回答の割合を大きく上回る反面,後者は難しくなったという回答が約4割で,2割弱の容易になったという回答の割合を大きく上回っている。また,「受講者の受講態度」,「訓練の進行」,「就職支援の取り組み」と「訓練受講後の就職状況」は「受講者数」と密接な関係にある。基金訓練から求職者支援訓練に移行するに際しての受講者数の減少は教育訓練プロバイダーの認定基準を厳しくしたことと関係している。認定基準を緩くすれば,教育訓練プロバイダーのモラルハザードを防ぐことが難しく,これに対して,厳しくすれば,教育訓練プロバイダーの組織運営が困難に陥る可能性が高くなる。こうした課題を解決するためには,これまでの公共職業訓練と民間委託の求職者支援訓練の役割分担を大きく変更し,新しい役割分担を構築する必要がある。departmental bulletin pape

    非正社員の人事管理と人事部の役割

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    企業は非正社員と正社員を別の制度で管理するという分離型の人事管理をとっているが,それがいま大きな変革を迫られている。それは非正社員の活用が拡大しているからである。量的な増加だけでなく,活用業務が補助的な業務から基幹的な業務(正社員と同等の仕事をすること)へ拡大してきている。非正社員の戦力化や基幹労働力化の進展である。このように,非正社員の基幹化が量的にも質的にも進んでくると,正社員と非正社員を分けて管理する分離型の人事管理では,非正社員の勤労意欲を引き下げ,離職率を高めることにつながりかねず,人的資源の有効活用が図られるかどうか問題になってくる。そのため,非正社員の活用(とくに質的な基幹の程度)の程度に合わせて分離型の人事管理を再編し,非正社員と正社員を同等に扱う統合型の人事管理への移行が必要になってくる。その場合,非正社員の処遇制度を,その基盤を形成する社員区分制度と社員格付け制度の整備から始める必要がある。分析結果からも明らかなように,仕事レベルからみてパートタイマーには多様な社員が含まれているという現実があるにもかかわらず,パートタイマーを複数のグループに区分して管理する社員区分制度を導入している企業は2割強にとどまり,多くの企業はパートタイマーを同一の社員グループとして扱う単一型の社員区分制度を導入する段階にとどまっている。同様に,パートタイマーの社員序列を明確に制度化するための社員格付け制度を導入している企業は1割強にとどまっている。加えて,人事部門が現場のライン管理職に対して「非正社員の活用に関する教育・研修」を実施している企業は4割強に過ぎない。今後は,実際に多様なタイプの人材を活用する管理職への非正社員や派遣社員などの外部人材の活用にかかわる法制面を含めた情報提供や活用のための教育訓練を積極的に行っていくことも必要である。多様な人材をマネジメントし,戦力として活用することができる管理職を効果的に育成するためには,改めて,人事部門の役割が重要になってきている。departmental bulletin pape

    就職氷河期時代の学校から職業への移行と利用媒体・サービス―求められる公共職業訓練の再構築―

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    就職や進路を考えるための情報を得るために,学校の資源をどの程度有効利用しているのかについて,現在,正社員として働いている者と非正社員として働いている者(フリーター)を比較すると,正社員の方が多くの学校の資源を活用している。正社員になるためには,職業や就職に関する情報確保への貪欲さが正社員になれるか否かの可否に大きな影響を及ぼしている可能性が高い。また,就職活動のために利用した媒体(サービス)についてみると,正社員は「出身学校の就職部・キャリアセンター・進路指導室等」及び「出身学校の学生」など学校の資源を中心にしながら,「親・兄弟姉妹・親戚」及び「出身学校の先輩」などの人的ネットワークを活用している。会社や仕事などに関する良質な情報を保有している媒体(サービス)を活用している。これに対して,フリーターは「公共職業安定所」を中心にしながら,「求人情報誌(有料)及び(無料)」及び「新聞・折り込み・チラシ」などの媒体を活用している。また,フリーターを対象に,アルバイト先を探すために利用している媒体についてみると,時間とコストをかけることなく情報を収集することができる「求人情報誌(無料)」,「新聞・折り込み,チラシ」及び「求人情報誌(有料)」を利用する者が多くなっている。こうした傾向は利用率の高低差はあるが,就職活動のために利用した媒体とほぼ同じような傾向を示している。人的ネットワークを有効に活用することができないフリーター(とくに,中・高卒者)にとっては,求職者に対する企業の情報提供のあり方について,改善の余地が大きいと言える。とりわけ数値化が難しいような質的な情報の提供努力が必要である。しかし,このような情報は入社して初めて知り得ることが可能である情報であるため,労働市場におけるマッチング機能の向上が図られたとしても残ってしまう大きな課題の1つである。こうした課題を解決するためには,公共政策の1つとして実施されているジョブ・カード制度の拡充が必要不可欠である。departmental bulletin pape

    福祉(介護)経営と人事管理―求められるインセンティブ・システムの再構築―

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    介護サービス事業を担う人材は,何の基準をもってどのように評価されているのか,「働きの結果」に対して,どのようなインセンティブが用意されているのかが重要である。しかし,その基準は一律ではなく,福祉経営に携わっている人々が自らどのような「経営(組織)目標」(経営(組織)理念)を設定するのかによって異なってくる。本稿では,経営学の基本的な分析道具(戦略論の「事業構造戦略」と「競争戦略」,管理論の「コントロ-ル(管理)・システム(方針管理)」)を用い,なぜ,介護事業を担う人々に対して,インセンティブ・システムの再構築が必要であるのか。さらに,こうした再構築を成し遂げるためには,介護事業経営(戦略や管理の面)の再構築(新しい「福祉(介護)経営」の構築)が必要である。具体的には,施設サービスでは,それぞれの組織でビジネスリーダーになる人材の育成,他方,居宅(とくに,訪問介護サービス)サービスでは,ホームヘルパーの雇用関係の構築や「能力開発型」の人事処遇制度の整備とサービス提供責任者の育成,が必要不可欠であることを提示する。departmental bulletin pape

    Epidermoid cyst of the testis: a case report

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    A 28-year-old man was admitted to our department with the chief complaint of a painless nodule in the left scrotal content. Physical examination revealed that a small, thumb-finger sized, hard mass with a smooth surface was palpable at the upper part of the left scrotal content. With the preoperative diagnosis of testicular tumor, the left testis was explored under ischemia. Appearance of the testis was normal and the mass was felt in the upper portion of the testis. Since the mass was suspected to be malignant, left radical orchiectomy was performed. The histological diagnosis was epidermoid cyst of the testis. Sixty-five cases of testicular epidermoid cyst including this case have been reported in the Japanese literature, and are reviewed briefly here

    60歳以降社員(高齢社員)の支援制度の歴史的展開―製造業X社の事例研究(1996年~2014年の取り組み)―

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    製造業X社の高齢者活用は「会社が定めた年齢で全員が退職する定年制」でなく,「従業員自身が定年年齢を決める定年制」であるため,こうした定年制を機能させるために,同社では,企業(高齢者を活用する職場の管理職)が「高齢者に期待する役割」を高齢者に「知らせる」取り組みと,「高齢者の持っている能力・意欲」を会社(高齢者を活用する職場の管理職)が「知る」取り組みと,これら2つの取り組みをサポートするために,「人事部門」でも「職場の管理職」でもない「社内の第三者」が「高齢者と高齢者を活用する職場の管理職」に対して,相談・支援を行う取り組みを1996年4月から実施している。本稿では,製造業X社へのヒアリング調査を通して,上記の取り組みが開始された1996年から2014年までの間に,経営・職場環境の変化,社内の人員構成の変化,職場の管理職の役割の変化,及び法律の改正等に対応する形で,どのように変化し,さらに,どのように「取り組み」から「システム」として制度化されてきたのか,さらに,制度化されたシステムとしてどのような点に課題があるのか,を分析した。departmental bulletin pape

    団塊世代の就労意欲と学習活動―雇われている団塊世代を中心として―

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    60歳以降も働き続けるためには,個人の学習活動・経験として,仕事の経験を積みながら得るOJTだけでなく,より自発性が求められる,あるいはより高度な経験を積むことと,60歳以前からの自学自習の経験が重要である。つまり,高齢期に引き続き就業するためには,個人は,現役時代に自発的に自らのキャリアを決定し,それに合わせた能力開発をしていくことが求められるのである。自ら決定したキャリアのためにどういった仕事をするのかを,企業(あるいは上司)に伝え,仕事の経験によるOJTの機会を質・量ともに高めるとともに,自学自習を行うことである。しかしながら,自学自習に対する支援を企業にのみ求めるには限界がある。したがって,今後,わが国として「70歳雇用」や「生涯現役」社会を目指すのであれば,そのための社会的基盤を整備する必要がある。さらに,団塊世代に対しては,働き続ける(就業意欲の継続)だけでなく,仕事を辞めた後の社会参加を促すという点からも,現在の学習活動が重要な役割を果たしている。そのため,学習活動を促進させる仕組み作りが必要となる。また,一度仕事を辞めた団塊世代に再び仕事に就いてもらうためには,仕事を辞めた理由が様々であるため,一律な支援は難しく,学習活動だけでなくより個別の事情に即した支援体制を整備することも重要である。departmental bulletin pape

    業界団体型教育訓練プロバイダーの特質と課題 ―訓練を継続していくための要因を探る―

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    中間組織(非営利組織である公的組織)は,企業固有の特殊能力を開発する個々の企業組織と,極めて汎用性の高い一般能力を養成する公共的な組織のとの“中間”に位置することで,従来型の学校から仕事への移行システムの枠から溢れ出してしまった「ヒト」の育成という問題に対して,効果的かつ効率的な解となる可能性を秘めている。1年間の延べ受講者数で教育訓練プロバイダーの規模をみると,民間部門と公的部門のシェアはほぼ等しく,さらに,中間組織のなかの「公益法人」が3割強と民間企業に迫るシェアを占めている。このようにみてくると,教育訓練サービス市場における主要な教育訓練プロバイダーは民間部門と公的部門であり,とくに「民間企業」と「公益法人」が大きな役割を果たしている。  公益法人及び経営者団体等が運営している業界団体型教育訓練プロバイダーを対象にしたヒアリング調査から,業界団体型教育訓練プロバイダーが訓練を継続していくためには,以下の6つが必要であることが明らかになった。第1に,前提条件は,①企業の社内養成神話から社外機関活用への転換すること,②業界全体のレベル向上を実現するための,人材育成を目標にする企業人,業界人の団結することである。第2に,組織のスタートアップ時の条件は,行政が重要な役割を果たすことである。第3に,訓練を継続していくための条件は訓練機能だけでなく別の付加価値機能を付けることである。第4に,運営体制は,①業界・企業ニーズを反映する企画,モニタリングを担当する組織の整備,②マネジメント担当の専門組織・専門人材の存在,である。第5に,訓練体制と訓練内容は,①企業を超えた共通能力と訓練目標の明確化,②効率的・機動的な実施体制の構築(企業の協力体制の整備,企画・モリタリング担当組織と実施組織の分離),③訓練方法は「わかる能力よりもできる能力」養成型にすること,④訓練の品質保証(外部機関の選択による保証),⑤地域・業界の既存資源の発掘と活用(指導員は経験者の活用,外部調達),である。第6に,公共政策の観点からみると,産業政策担当組織との協力関係の構築が重要になってくる。departmental bulletin pape
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