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    子どもの心的状態と性格を考慮した遊び相手ロボットの設計原理

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    核家族化,少子化,地域のつながりの希薄化などを背景に,乳幼児を持つ母親の育児負担が増大している.多くの子育て世帯は核家族のため祖父母からの日常的な支援を受けられず,保育施設などの社会的育児支援も,昼間だけ,週1 日だけなどと限定的にしか受けられないため,多くの家庭内では,母親が一人で育児と家事を同時にこなさなければならない状況にある.現在,家事の間の子守りの代替となっているのはテレビやDVDである.長時間のテレビ視聴は子どもの発達への悪影響が指摘されているが,気軽に利用できる手立てが他になく,母親は家事と育児を両立させるためにテレビに頼らざるを得ない.このように,家庭内での育児支援の欠如と,それにともなう子どもの発達の問題が存在しているが,それを解決する有効な育児支援策は未だ存在しない.そこでこの問題を解決する一助として,本研究では,家庭内で子どもの相手をする遊び相手ロボットを提案する.30 分ほどの間ロボットが子どもの興味を引きつけ遊んでいてくれるなら,母親の家事の時間を確保でき,育児ストレスの軽減が期待できる.本研究の最終的なゴールは,未就学児をもつ核家族の育児支援を目的とした,家庭内で子どもと遊ぶロボットの実現であり,本論文ではこの遊び相手ロボット実現のための方法論について議論する.遊び相手ロボットに対する基本的な要求は,子どもの発達を促す遊びができることである.遊びは子どもの発達の鍵であり,おもちゃや身体を使った幅広い遊びを行なうことで心身の発達が促される.長時間視聴されているテレビに代わり,子どもの身体的な活動を誘発させるために,おもちゃや身体を使った標準的な遊びを幅広く行えるロボットのデザインを行う必要がある.そしてさらに遊び相手ロボットに重要なのは,発達を促す遊びができるだけでなく,そのような遊びを子どもと成立させられることである.遊びの成立に対する課題は,課題1"長く遊び続けられること" と課題2"どんな子どもとも遊べること" の二つある.一つ目の課題は,子どもと1 対1 で長時間かつ長期的に継続して遊べることである.従来の子どもを相手としたロボットは,教育や遊戯療法などを目的としており,遊びの継続は考えられていない.本研究では遊びの継続が次のように成り立つと考える.長時間の遊びは,ロボットが様々な遊びや働きかけで子どもの興味を引きつけることで成立し,長期的な遊びは,子どもの気持ちを考慮した適切な振る舞いをロボットが行い,それを受けた子どもがロボットに好意的な関心をもつことで成立する.本研究では,この子どもの興味に関する問題を"興味度" の軸,好意的な関心を"友好感" の軸と定義する.遊びの継続には,子どもの興味度と友好感を維持する人間類似の行動決定モデルが必要であると考え,本研究では,子どもの心的状態を推定しながら行動を決定する仕組みを構築する.二つ目の課題は,ロボットがどんな子どもとも柔軟に遊べることである.従来の対人ロボットは,対話が容易な相手とのコミュニケーションのみ検討してきているが,育児支援を目的とした本ロボットは,保育者がどんな子どもとも遊びを成立させるように,誰とでも柔軟に遊べることが望ましい.そこで本研究では従来焦点が当てられてこなかった関係構築がより困難な相手に着目し,子どもの性格に応じた行動選択の仕組みが必要であると提案する.本論文ではその仕組みを実現する第一歩として,初対面の人との関係構築が困難な人見知り性格に焦点を当て,人見知りの子どもと良好な関係を築くための有効な行動を探る.以上のように本論文では,子どもの心的状態と性格を考慮した行動決定によって友好感を創出し,どんな子どもとも長く遊べる遊び相手ロボットを実現するための設計原理を,実際の遊び相手ロボットの開発と検証を経た構成論的手法により明らかにする.本論文では,第1 章にて研究背景である現代の育児問題を概説し,対子どもロボットの関連研究と比較しながら本研究の位置づけと目的を述べる.第2 章では,提案する遊び相手ロボットに求められる要求仕様と子どもとの遊びを成立させる因子について議論し,実現に向けた課題を明確にする.第3 章では,子どもの発達を促すことを踏まえた遊び相手ロボットの構想について述べる.第4 章では課題1"長く遊び続けられること" について論じ,その解決手法としてのロボットの行動決定モデルを提案し,モデルの有効性を検証する.第5 章では課題2"どんな子どもとも遊べること" について論じ,その解決手法として性格を考慮した仕組みを提案し,その有効性を検証する.第6 章では,これまでの研究結果を踏まえ,現時点で実社会に役立つ実用的な遊び相手ロボットを示す.最後に第7 章で本論文の内容をまとめる.電気通信大学201
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