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    近接覚を用いた反射動作に基づくハンド・アーム統合制御による把持

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     ロボットハンドによる把持・操作では,視覚と触覚の組み合わせが一般的に用いられる.しかしながら,ハンドと物体が近い位置関係にあるとき,視覚からは対象物が見えず,また,接触するまでは触覚センサは機能しないため,情報欠落が生じる.そこで,近接覚を用いてハンド表面から物体の位置を直接センシングすることで,適切な把持位置に修正する手法が提案されている.ただし,従来研究は平行グリッパや劣駆動ハンドなど,比較的,低自由度のエンドエフェクタを対象としており,多指多関節ハンドとアームを統合的に制御する試みは行われていない. 本論文では近接覚により多指多関節ハンドとアームを統合的に制御する方式を提案し,高速な把持位置・姿勢修正の動作を実現する.この方式はセンサ出力により,直接,ハンド関節とアーム手先位置・姿勢を制御することから,反射型把持(reactive grasping) の一種であり,応答速度が速く,物体ごとにソフトウェアの変更が不要であるという特徴を持つ. この統合制御の実現にあたって,指先部の近接覚センサの素子配置設計や,統合制御システムの構築,物体形状に倣って指先配置を調整するためのプリグラスプ制御,物体表面の反射率に依存しない把持制御,および,ハンド関節8 自由度とアーム手先6 自由度の統合的な制御方式を提案した.本論文は以下に示す全9 章から構成され,その内容の要旨は以下のとおりである. 第1 章緒言 第1 章では,まず,本研究を行う背景として,自動化が求められている作業を紹介し,位置・姿勢,形状や重量,摩擦係数が未知の対象物を自律的に把持するハンドの必要性について説明する.次に,視覚,触覚,近接覚センシングに基づく把持研究例を挙げ,視覚・触覚センシングのみに基づく把持で生じる情報欠落と把持速度の低下の問題を指摘し,近接覚の導入により,把持の確実性と高速性を向上できることを述べる.次に,近接覚を用いた把持の関連研究を紹介し,これまでに多指多関節ハンドとアームを近接覚のみで制御する試みが取り組まれていないことについて言及する.この上で,本論文では多指多関節ハンドとアームの統合制御方式を提案し,高速な把持位置・姿勢調整動作を実現することが目的であることを述べる.そして,この統合制御方式と各章の内容との関連について明確にする. 第2 章ロボットアーキテクチャの変遷と分類 第2 章では,本論文で提案する統合制御方式の特徴や位置づけを明確にするために,ロボットアーキテクチャの変遷を述べ,これらを分類し比較を行う.そして,従来の近接覚・触覚を用いた制御では,平行グリッパ等の低自由度のハンドのみを対象としているのに対し,本論文では多自由度のハンドとアームの統合制御を可能としている点が異なることを述べ,本研究の新規性と有用性を明確にする. 第3 章指先部近接覚センサの設計 第3 章では,ハンドとアームの統合制御方式を実現するにあたり,まず,物体面の傾きと距離検出に適した指先部近接覚センサの設計を行う.具体的には,指先に実装する近接覚センサの素子配置角度や間隔を調整することで,物体面の傾き検出感度の向上と,指先姿勢に依存しない距離計測特性を実現する.このための素子配置パラメータを考案し,光学シミュレーションにより,パラメータ調整によるセンサ出力特性変化を検証することで,適切な検出素子配置を決定する. 第4 章指先部近接覚センサによる傾き・距離検出特性 第4 章では,新たに開発した指先部近接覚センサによる物体面の傾き・距離検出特性を実験により検証する.まず,標準反射板におけるセンサ出力特性から,3 章の素子配置パラメータ調整の効果を検証し,次に色,模様,材質,形状の異なる物体面の傾き.距離検出実験により,対象物表面での光の反射特性がセンサ出力に与える影響を明らかにする. 第5 ハンド・アーム統合制御システム 第5 章では,近接覚センサ出力を基に,ハンドとアームを高速リアルタイム制御するためのシステムの構築を行う.まず,各ハードウェアと制御器の接続関係を明示し,ハンドとアームの外観と主な仕様,センサ計測回路の詳細について述べる.次に,複数の近接覚センサ間での光の干渉を防止するためのセンサLED の点灯制御を紹介し,また,アームの運動学的な特異点近傍での制御について説明する.以上の工夫により,第6 ~ 8 章の実験において正しくセンサ出力を計測し,ハンドとアームを安定かつ高速に制御可能なシステムを構成する. 第6 章プリグラスプ制御 第6 章では,指先部近接覚センサの出力に基づき,物体形状に倣って指先配置を調整するための制御方式について説明する.センサ出力を目標値として直接,関節角度を駆動する反射型制御を提案し,実験により指先と物体の初期位置を変化させた際の応答特性や収束位置等を検証する.なお,ここでは物体表面の光の反射率は既知として制御目標値を設定することとし,未知反射率の物体への適用を可能とする制御方式は第7 章で述べる. 第7 章物体表面の光の反射率によらない把持制御 第7 章では,物体表面の光の反射率に依存しない1) 絶対位置制御と2) 相対速度制御を提案し,これらを応用した把持について述べる.両方式ともにアクティブセンシングを利用したものであり,反射率推定のための新たなセンサの導入が必要ないという長所がある.まず,1) 絶対位置制御では,指先の相対移動距離とセンサ出力変化率から,反射率を推定することで,物体面に対し指先位置を一定に調整する手法を提案する.また,この手法により各指を一定距離に配置することで,全指同時接触での把持が可能となることを実験で示す.次に,2) 相対速度制御では,鳥などが飛行制御の際に用いる衝突までの残り時間推定(Time-to-contact)を用いた反射率によらない制御方式を提案する.そして実験により,果物やぬいぐるみ,プラスティック製のおもちゃ等に対し,物体に依存しない把持が可能か検証する. 第8 章ハンドとアームの統合制御 第8 章では,物体形状に倣うハンド各指の制御に加えて,さらにアーム手先位置・姿勢も同時に調整する反射型制御を導入することで,ハンドとアームの統合制御方式を実現する.この方式では,ハンドとアームの制御は独立・並列して実行されるが,ハンド関節角度とアーム手先位置・姿勢が相互に作用することで,ハンドとアームの協調動作による把持位置・姿勢修正を可能としている.実験では,テーブル面に置かれた対象物への把持位置・姿勢修正や人が手で持ってランダムに移動させる物体への追従が可能か検証した. 第9 章結論と今後の展望 第9 章では,本研究の成果,結論をまとめ,今後の課題,展望について述べる.電気通信大学201
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