観光地の人気の変化に影響する特徴量の分析

近年，スマートフォンやタブレットなどの普及により，Webから容易に有益な情報を得ることが出来るようになっている．そこで，旅行者が目的地を決定する際の重要な情報源としてTripAdvisorなどの観光情報サイト（観光に関する情報を掲載するウェブサイト）に対する需要が増加している．このような旅行におけるインターネットの重要性の増加と同時に，その利用方法も変化しており，観光情報サイト上のユーザのレビューなどが旅行者の意思決定を左右する重要な情報となっている．これらの観光情報サイトでは，一般的にランキングの形式で観光地を掲載しており，現在までのユーザのレビューにおける評価を基にして観光地のランキングを提案している．したがって，これらの観光情報サイトにおけるランキングは，観光地に対する過去の総合的な評価を基にしたランキングであると考えることができる．また，基本的に内部のアルゴリズムに関しては，Google検索などと同様に意図的な操作を避けるために非公開である．ここで，観光地の人気に関して，観光地にもトレンドが存在する．例えば，イベントや季節などの時間や状況によって観光地の人気は変動する．この時，現在の観光情報サイトにおける観光地のランキングでは，過去に投稿されたユーザのレビューのみを特徴量としてランキングを行うため，新興の観光地や人気の変動が大きい観光地などがランキングの上位に出現しない可能性がある．ユーザが観光スポットを選択するときのニーズとして，来訪時点で最も楽しめる観光地，つまり，季節などのトレンドを考慮した観光地を提案する事は，ユーザヘのランキングの提示方法の一つとして考えられる．しかし，一般的にランキングにおいては，ユーザは上位に位置づけられている一部の情報のみを閲覧すると考えられるため，過去に投稿されたレビューのみを特徴量として観光地をランキングすることはユーザのニーズを十分に満たしていない可能性が存在する．例えば，このユーザのニーズに的確な観光地のランキングとしては，新宿御園など桜の名所として有名な観光地などが春の時期には上位に位置している必要がある．そこで本研究では，過去の総合的な評価に加えて，現在時点における人気の変動を考慮した．観光地のランキングを生成することを目的とする．現在では，Twitterなどのソーシャルメディア上に観光地に対する感想が大量に投稿される．これらの投稿は観光情報サイトにおけるレビューよりも直近性の高いユーザの感想であり，最近の投稿を観光地のランキングに利用することで，ランキングの改善に寄与すると考えられる．しかし，Twitterは様々な屈性を持つユーザが利用をしており，Botによる投稿なども存在する．そのため，投稿における情報の信頼性が低く，Twitterに投稿されたテキストにおける観光地に対する感想や情報のみに基づいて，観光地をランキングすることは非常に困難である．そこで本研究では，TripAdvisorにおける観光地のランキングに対して，ツイートを用いてモデル化をする事で観光地のランキングを生成する．TripAdvisorなどの観光情報サイトにおけるレビューでは，各投稿における情報量がTwitterと比較して多く，より詳細な観光地に対する感想が反映されている．また，多くの観光情報サイトが存在する中でもTripAdvisorは最大規模の観光情報サイトであり，そのレビューやコンテンツに対する信頼性と影響が検証されており，多くの旅行者にTripAdvisorが利用されている事が明らかにされている．このTripAdvisorにおける観光地のランキングから生成したモデルに対して，最近の観光地におけるツイートを適用することにより，人気の時間変化の考慮した観光地のランキングを生成する．これにより，ユーザが実際に目にする機会が多いランキングの上位に対して，イベントや季節などのトレンドを考慮した観光地が位置することになり，ユーザのニーズの一つである来訪時点で最も楽しめる観光地を満たすようなランキングの提案が可能になる．これらの観光地のランキングに対して影響する特徴量は非常に複雑であると考えられる．そこでまず，観光地のランキングにおいて人気に影響する特徴量の分析を言語的特徴量と統計的特徴量の2つの観点から行う．観光地におけるツイートに対して，回帰分析を用いて各特徴量の寄与率や順位相関を算出した上で有効な特徴屋の分析を行う．それらの分析結果を踏まえて，各特徴量に対してランキング学習を用いて観光地のランキングのモデル化を行う．このモデルに対して，最近のツイートを適用する事でトレンドを考慮した観光地のランキングを生成した上で，その結果における有用性に対して考察と検証をした．本稿の構成は以下の通りである．第2章では，インターネット上の投稿における特徴量分析と観光地推薦における関連研究について述べる．第3章では，ツイートにおける言語的特徴量と統計的特徴量に関する分析の結果と考察について述べる．第4章では，回帰分析を用いて特徴量について評価した上で，ランキング学習を適用した結果について述べる．第5章では，得られた結果に対する考察を述べる．第6章では，まとめと今後の展望について述べる．首都大学東京, 2019-03-25, 修士（工学）首都大学東