実社会の課題解決のためのデータ収集・分析・管理およびシステム化に関する研究

Abstract

九州工業大学博士(情報工学)第1章 序論| 第2章 材料開発における実験フローデータ管理及び類似実験フロー検索| 第3章 対話型サービスロボットの開発における評価・改善のための業務ログデータ分析| 第4章 送配電網損傷に対する早期復旧のためのデータ収集システム復旧計画策定| 第5章 サービスロボット移動効率化のためのビル内状態データ収集及び経路探索システム| 第6章 結言センサ類や小型デバイスの設置によって種々の事象を観測し,大量のデータが蓄積・利用可能となって以来,様々な業種において,IT 技術により業務の効率化を図るデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する期待が高まっている.DX において重要なのは期待する業務改善の効果を明確にすることと,それを実現するためのデータセットを整理することであるが,このためには(1)業務改善に必要なデータが既存システムにおいて利用可能でない(2)データ項目,フォーマットが統一されておらず,データの理解や統合が難しい(3)計測機器の生データやロボットの行動ログなど,そのままではデータ分析に活用できないデータが存在したり,複数のデータソースにデータが分散したりしており,データが分析に適した形式になっていない(4)実験データや生産実績データなど,類似データの横断的な検索や共通部分の抽出のように,データを柔軟に検索する方法がない,などの課題が存在する. 本研究はこのような背景に基づき,材料開発,サービスロボット,電力,ビル管理の4つの産業分野において,必要となるデータ収集・分析・管理およびシステム化に関して検討を行い,前述の課題をそれぞれの産業分野において解決するための具体的な手法について検討するとともに,その背後にある課題解決のための統一的な指針の明確化を目指す. 以下,本論文の構成に従って,概要を説明する.第1章では,DX の概要と,それを実現するためのデータ処理技術について概説し,実社会の課題解決のためにDX 推進におけるデータ収集・分析・管理の要件と課題を整理し,その解決方法を包括的に検討する. 第2章では材料開発(Material Informatics)における実験データ管理のためのシステム開発と,データ利活用を促進する類似実験フローの効率的な検索について説明する.材料開発の分野において,実験フローを材料研究者にとって統一的な形式で記述する実験データ管理基盤と,複数の実験フローを含む実験フローセットの中から,指定した条件に合致した実験フローを検索し,対象の実験フローからデータ分析に必要なデータセットを取得するための,類似実験フロー検索技術を提案する.仮想実験フローと検索を高速化するためのメタデータにより,典型的な材料開発のプロジェクトにおいて,類似実験フロー検索技術と単純手法とを比較し,提案手法が検索高速化において十分な効果が見込めることを確認した. 第3章では,対話型サービス(コンシェルジュ)ロボットの開発における評価・改善のための業務ログデータ分析について説明する.ユーザに対して対話を通して汎用的なサービスを提供するサービスロボットに対し,サービス提供者が目標と定めた業務指標値を改善するために必要なデータを,サービスロボットの行動データから特徴量として抽出するための行動ログデータ分析手法について検討し,技術展示会でのサービスコンシェルジュサービスを題材として,実社会でのデータ取得とデータ分析による評価を行った.サービスロボットの行動ログデータから,サービス品質の評価に有用な特徴量を抽出し,クラスタリングによる分類を行った.来場者の傾向を3パターンに分類した時の各クラスタ内のデータを詳細に分析した結果,来場者への対応が望ましい結果でなかったパターンが見られ,これを改善するようサービスロボットのシナリオを修正することで,業務改善の余地があることを知見として得た. 第4章では,台風によって発生した電力網への損傷に対する復旧計画の策定において,電柱の状態と,それによって付加的に得られる道路交通状況を勘案した,正確性の高い復旧計画策定技術について説明する.復旧計画の策定においては,電力網上において電柱,電線の損傷による故障点に対し,必要な人員と機器,資源,車両を送るスケジューリングが課題となるが,正確性の高いスケジューリングを実現するため,電柱に設置した柱上ジャイロセンサから得られる傾斜角および方位と,道路データから道路上の不通箇所を特定することで,道路上の閉塞区間と,これによる影響を加味した故障点間の移動コストを求める技術を提案した.提案手法を試作して,評価用の電力網に対して復旧計画の策定を行い,復旧にかかる時間を最適化計算として定式化して検証した結果,柱上ジャイロセンサによる移動コストを正確に計算した場合の方が,移動コストに誤りがある場合と比べて,短い時間で故障点を復旧することができ,なおかつ作業によって達成される復電容量も大きな値になるという結果を得た. 第5章はビル内における移動体経路検索技術について説明する.ビルIoT プラットフォーム向けに,ビル内で活動するロボット等の移動体に対し,ビル内状態に応じた最適経路を検索するビル内移動体経路探索技術の検討を行った.商業施設でのロボットによるサービス提供を想定し,ロボットの経路探索に必要な移動経由点の設定について検討した後,商業施設におけるカメラ配置の事例に基づき,移動経由点間の移動コストを監視カメラの映像分析や,施設設計時のシミュレーション結果などから類推する方法を提案した.移動経由点の集合で構成される移動経由点グラフを用いて,ロボットに対して移動経路を計算する移動経路探索システムを試作し,有用性を確認した. 第6章は結言であり,4つの分野の事例を通して,実社会の課題解決におけるデータ利活用の統一的指針と,配慮すべき点を検証した結果を総括した後,今後の展望について述べる.九州工業大学博士学位論文 学位記番号:情工博乙第61号 学位授与年月日:令和7年3月25日令和6年度doctoral thesi

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Last time updated on 16/04/2025

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