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    Enploring the Behavior of Global Middle Leaders in Japanese Company ―A qualitative Research on Expatriates―

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    甲南大学博士(経営学)令和6年度(2024年度)本研究は、日本企業の組織コンテキストに適切なグローバルミドルリーダーを明らかにすることを目的とした研究である。グローバル市場主義に適した、米国を中心とする既存のグローバルリーダー研究においては、グローバルリーダーの置かれるコンテキストを捨象し、唯一普遍的なグローバルリーダーが存在するかのように議論され、彼ら彼女らはいかなるコンピテンシーを持っているのかが中心的課題として検討されてきた。  しかし、日本企業においては国際経営が喫緊の経営課題でありながら課題を抱え続けている。とりわけ日本企業におけるグローバルミドルリーダーを考えた場合には、先行研究の知見を適用したとしても問題解決には至るとは言い難いようである。そこで日本企業の組織コンテキストを見ると、価値観や制度に加え、しきたりや不文律といった仕事の進め方にグローバル市場主義とは異なる様相が見られる。したがって、これら組織コンテキストを捨象すべきではないと考えられる。 本研究はこのような問題意識のもと、「日本企業の組織コンテキストに適切なグローバルミドルリーダーのリーダー行動を明らかにする」という研究課題を設定し、グローバルミドルリーダーに対してインタビュー調査を行った。 分析の結果、グローバルミドルリーダーは、不文律、制度、人間関係重視の価値観というコンテキストのもとで行動していることがわかった。さらに、グローバルミドルリーダーは、日本企業の組織コンテキストを海外拠点に移転する行動をとっていることが明らかになった。リーダー行動の結果、創発的な成果であるキーパーソンの成長がなされていることも明らかとなった。 グローバルミドルリーダーが組織コンテキストを海外拠点に移転し、規範的統合が行われる。このことから、日本企業においてはより競争力が高まることが期待できる。規範的統合がされたということは、本社から海外子会社に対して常にかつ詳細に監視や管理をする必要がなくなる。制度的統合とは異なり、ルールや手続きで海外拠点の行動に制約をかけることなく、柔軟性も確保できる。柔軟性がある中においては、海外拠点のモチベーションも高まり、海外拠点の主体的かつ創造的な活動が見込まれるからである。 愚直な取り組みと言える海外拠点への本社の組織コンテキストの移転のためのグローバルミドルリーダーのリーダー行動が、日本企業の強みと言えよう。つまり、日本企業の組織コンテキストの海外拠点への移転は、持続的な競争力を維持するために必要不可欠な要素なのである

    Development of Intercellular Mechanotransduction Gel and Its Innovative Application to Tissue Engineering Technology

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    甲南大学博士(理工学)令和6年度(2024年度)現在のTissue Engineering研究では、三次元足場材料に担持して生体に移植した細胞に対して生化学的な活性化因子を与える手法が、最も高効率で移植細胞の再生応答を引き出すアプローチだと理解されており、この考え方に基づき世界中で研究が進められている。しかし、臨床応用に資する高い組織再生効果を示すTissue Engineering技術の開発例は少なく、近年では本研究分野の進展が停滞している。本研究では、メカノバイオロジー研究における最新の知見に着目し、生化学的な活性化因子に変わる細胞活性化因子として機械的ストレスをTissue Engineeringに導入することを考案し、生体で発生する機械的ストレスを移植細胞に効率よく伝導して活性化させ、再生応答を引き出すことが可能な「細胞間力学伝導ゲル」を開発した。筋衛星細胞を用いて作製した細胞間力学伝導ゲルでは、細胞のメカノセンサーであるインテグリンが、生体直交性のクリック反応により、剛直なアルギン酸ゲルネットワークと共有結合で連結しているため、生体で発生する機械的ストレスはアルギン酸ゲルネットワークを通じて常時安定的にインテグリンに伝わり、素早く、確実に細胞内に入力される。入力された機械的ストレスはアクチン線維を通じて核ラミナに伝わることで核膜の形態を変化させ、これに伴い核膜孔の物質通過特性が変化することで転写共役因子YAPの核内移行が促進され、MyoDなど筋分化調節因子の発現レベルが高まり、高効率な組織再生応答が誘導される。また、細胞間力学伝導ゲルは同種カドヘリンを介した選択的な細胞間結合形成により、過度な機械的ストレスを受けてゲル構造が崩壊しても自発的に元の構造に戻る自己修復能を示す。さらに、細胞間力学伝導ゲルは系内のクリック反応の進行度が低い状態では液状を示すため、低侵襲な注射投与により損傷組織に移植でき、移植後に投与部位でゲルを形成するインジェクタブルゲルになる。加えて、細胞間力学伝導ゲルの仕組みは拡張性が高く、現在の再生医療で汎用されている脂肪由来間葉系幹細胞にも適応でき、脂肪由来間葉系幹細胞で作製した細胞間力学伝導ゲルにおいても機械的ストレスによる細胞の活性化および組織再生誘導が起こる。細胞間力学伝導ゲルでは、細胞の増殖や代謝によりインテグリン-アルギン酸ゲル間の結合は解離するため、移植細胞の増殖や組織形成反応の進行に伴ってゲルは徐々に分解して最終的にはゲルは消失する。これにより、ゲルが占めていた空間は移植細胞が再建した骨格筋組織により置換され、再建組織はホストの骨格筋組織と同期して収縮・弛緩機能を示す。以上のように、細胞間力学伝導ゲルは、臨床応用に資する高い組織再生能力を有する画期的なTissue Engineering技術である

    Injectable and Sprayable Hydrogels Generated by Combining Bioactive Nanomaterials for Biomedical Applications

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    甲南大学博士(理工学)令和7年度(2025年度)温度や機械的ストレスなどに応答してゾル-ゲル転移を示す高分子水溶液は、注射やスプレーによりゲルを生体内に投与できるためinjectable gelやsprayable gelと呼ばれ、医療応用を目指した研究が盛んに行われている。特に、これらのゲルは生理活性物質を担持できることから、癒着防止材、ドラッグデリバリーキャリア、組織再生足場としての医療応用が進められている。これまでに様々な高分子を用いてinjectable gelおよびsprayable gelが開発されてきたが、ゾル-ゲル転移現象は可逆的に起こるため、生体投与後にゲルが再びゾルになり、使用目的を達成できない事例が多く報告されている。また、ゾル-ゲル転移は高分子間の弱い相互作用にもとづく繊細な現象であるため、生理活性物質の担持量が高いと高分子間の相互作用が阻害され、ゲル化が起こらない事例も報告されている。これらの問題により、実用化に至ったinjectable gelおよびsprayable gelは数例しか存在しないため、医療応用に資するinjectable gelおよびsprayable gelの開発が求められている。本研究では、従来の高分子ベースのゲルに対して、ナノスケール化およびナノマテリアルの複合化という手法を導入し、2種類の新規injectable gelおよびsprayable gelを開発し、バイオマテリアルとしての有用性を示した。具体的に、1種類目のゲルとして、粉末状-キチンをウォータージェット法により微粉砕化し、-キチンをナノ繊維化すると同時に含水させ、-キチンナノ繊維ゲルを作製した。-キチンナノ繊維はスパイク状分岐構造をとっており、ナノ繊維間でスパイク状構造が絡まり合うことでゲル化した。-キチンナノ繊維ゲルに機械的ストレスを負荷するとスパイク状構造の絡まり合いが崩壊してゾル化するが、機械的ストレスを除去すると再びゲルに戻った。これにより、-キチンナノ繊維ゲルはsprayable gelになる。生体内にスプレー投与した-キチンナノ繊維ゲルは、組織液中のタンパク質を吸着してスパイク状構造の絡まり合いが強化され、臓器の動きなどで生じる機械的ストレスを受けてもゲル状態を維持した。また、-キチンナノ繊維ゲルはスパイク状構造に起因して、組織表面への高い付着性を示した。-キチンナノ繊維ゲルは、スプレー投与できないフィルム状の市販癒着防止材セプラフィルムと同等の癒着防止効果を示し、スプレー投与型癒着防止材としての有用性が示された。2種類目のゲルとして、ナノスケールの素材であるPLGA-PEG-PLGAナノミセル、LAPONITEクレイナノ粒子、MOFs(NU-1000)のみから構成される複合ゲルを作製した。各ナノマテリアル間の相互作用により、複合ゲルは体温応答型のinjectable gelとなる。多成分間の安定な物理架橋構造により、複合ゲルは生体内でゲル状態を保持した。NU-1000の細孔をL-アルギニンのリザーバーとして利用することで、L-アルギニンの複合ゲルからの持続的な徐放特性が得られた。L-アルギニンの徐放効果により、複合ゲル内に血管新生を効率的に誘導することが可能であった。この血管新生誘導効果により、複合ゲルは市販の注射投与型組織再生足場Matrigelよりも高い骨格筋組織再生効率を示し、注射投与型組織再生足場としての有用性が示された

    Determinants of Liquid-Liquid Phase Separation of Non-Canonical DNA Structures and Cationic Peptides

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    甲南大学博士(理工学)令和7年度(2025年度)生体分子の液-液相分離(LLPS)によって形成される液滴は、生体分子の細胞内局在のみならず、種々の細胞内反応の時空間的制御機構として注目されている。特に、細胞核内においては、核酸と天然変性タンパク質の液滴が、複製、転写、RNAプロセシングなどの反応場として機能することが知られている。核酸のLLPSを誘起する重要な因子として、DNAの非標準構造であるグアニン四重らせん構造(G4)とi-モチーフ構造(iM)がある。G4やiMを形成する塩基配列は、テロメアや疾患関連遺伝子に局在し、そのLLPSは神経変性疾患やがんとの関連性が示唆されている。しかし、どのようなタンパク質・ペプチドがG4やiMのLLPSを誘起するのか、DNAの塩基配列とLLPS能の相関など、DNA非標準構造が誘起するLLPSの分子機構には未解明な点が多い。そこで本論文では、核酸の塩基配列とペプチドのアミノ酸配列を系統的に設計して、それらのLLPS誘起能を検討した。具体的には、G4のLLPSを誘起するタンパク質・ペプチドの必須配列を解明するために、アルギニンとグリシンに富むFMRP由来のモデルペプチドに系統的に変異を導入したペプチドと、種々の二次構造を形成するDNAのLLPSを検討した。その結果、アルギニンからリシンへの置換によってペプチドのLLPS誘起能が完全に消失することや、5個以上のアルギニンがLLPSの誘起に必要であることが示された。次に、グリシンを他のアミノ酸(アラニン、プロリン、チロシン、バリン)に置換したペプチドのLLPS誘起能を検討した。その結果、グリシンはG4のLLPSの誘起に必須ではなく、ペプチドの主鎖骨格を剛直にするアラニンやプロリンを含むペプチドがより高いLLPS誘起能をもつことが明らかとなった。また、チロシンやバリンに置換したペプチドとの比較から、グリシンはG4のLLPSにおける核酸構造選択性と凝集(液-固相分離)の抑制に重要であることが示された。最後に、iMを形成する種々のDNAとFMRP由来のペプチドの組み合わせによる検討から、pHや分子クラウディングといった細胞内環境要因によってiMの構造安定性が変化し、それがLLPS誘起能と相関することが示された。以上の結果から、DNAとペプチドのLLPSを決定する要因が明らかとなった。ペプチドに関してはそのアミノ酸配列がLLPSに重要であることが示された。対照的に、DNAに関しては塩基配列よりも立体構造がLLPSの誘起を決定していることが示された。G4やiMといったDNAの非標準構造は分子環境に依存して構造安定性を大きく変化させる。また、これらの核酸構造を標的としたリガンドも開発されつつあることから、G4やiMのLLPSを分子環境や低分子化合物によって制御可能であることが本研究成果により示唆された。これらの知見は、遺伝子発現プロセスの新規制御方法の構築につながるだけではなく、核酸のLLPSが発症機構に関与する疾患に対する新たな創薬指針を提示するものであり、大きな波及効果をもつと期待される

    A Study of Collective Efficacy in Jaoanese Companies ―Focusing on Influence of Indirect Leadership by Top Management―

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    甲南大学博士(経営学)令和6年度(2024年度)本論文は,日本社会全体で効力感が失われている現状が,日本の国力や未来に悪影響を与えている可能性があるという問題意識を背景に,特に,日本企業におけるコレクティブエフィカシーに注目し,トップマネジメントのインダイレクトリーダーシップがどのようにコレクティブエフィカシーに影響を与えるのか,そしてそのコレクティブエフィカシーが企業組織に属する個人にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。 コレクティブエフィカシー研究を概観したところ,組織におけるコレクティブエフィカシーの高まりが組織に属する個人の意思態度に良い影響を与えることが明らかになったものの,企業組織を対象にしたBandura(1997)の定義に沿った方法で測定している研究が少ないことと,日本企業を対象にした研究が皆無であることが明らかになった。 インダイレクトリーダーシップ研究を概観したところ,インダイレクトリーダーシップ研究はダイレクトリーダーシップ研究と同様に重要であるにも拘らずダイレクトリーダーシップと比較して,その研究蓄積は著しく少ないことと,トップマネジメントからのインダイレクトリーダーシップが組織成員にどのような影響を与えているのかについて研究しているものは皆無であることが明らかになった。 トップマネジメントからのインタビューと先行研究によって導いた実証モデルを定量調査した結果,トップマネジメントからのカルチャー,コミュニケーション,戦略提示に関するインダイレクトリーダーシップがコレクティブエフィカシーを媒介して,個人の職務満足,組織市民行動,レジリエンスに影響を与えていることが明らかになった。 トップマネジメントのリーダーシップがコレクティブエフィカシーを媒介して,従業員の態度や行動意思に大きな影響を与えており,成果変数に多少の違いはあれど,企業間の違いのほとんどをトップマネジメントのリーダーシップで説明できることを示唆している結果となった。 またトップマネジメントへのインタビュー調査によって,トップマネジメントからのエンパワーメントに関するインダイレクトリーダーシップがコレクティブエフィカシーを媒介させることなく,直接個人に影響を与えていることが示唆された。その際,トップマネジメントからのインダイレクトリーダーシップだけではなく,ミドルからのダイレクトリーダーシップの掛け合わせが重要であると示唆された。 最後に実践的含意,理論的含意,並びに本研究の限界と今後の展望を述べて本論文を閉じている

    A Post-Installable Safety Assistance System for Mobility Scooters in Residential Areas

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    甲南大学博士(工学)令和6年度(2024年度)本研究では、免許不要、歩道や住宅街などで利用可能かつ低コストのシニアカーに着目し、安全性を向上させるための支援システムの開発を目指す。シニアカーは法律上歩行者扱いとされ、歩道、車道のいずれも通行可能で自由度が高い反面、主として走行する住宅地の歩道はシニアカーを考慮した仕様になっていない場合が多く、多様な事故のリスクを伴う。  これまでの関連研究では、自動運転機能を搭載したシニアカーや障害物検知機能を持つものが提案されているが、高価なセンサーや装置が必要である点や、多種類の危険に対応する総合的なシステムが少ない点が課題として挙げられる。  そこで、本研究では以下の4つの機能を統合した多機能システムを試作する。(1)段差・溝の検知:2つの2D LiDARを用いて幾何学的手法を提案し、段差や溝の距離・高さを推定する機能。危険レベルに応じて音による警告を発する。(2)障害物検知:ステレオカメラを用い、深層学習とクラスタリング手法を組み合わせ、多様な障害物の位置推定と分類を行う機能。検知結果に基づき音で警告を発する。(3)交通標識認識:全方位カメラで撮影した画像を深層学習モデルに基づいて分析し、交通標識や信号の種類と位置を特定する機能。その結果によって音もしくは画面上で危険を提示する。(4)ドライバー状態監視:全方位カメラを利用し、顔画像から目の開閉状態や視線、頭の向きを推定してドライバーの注意状態を判断する機能。注意散漫や眠気の際に警告を発する。  試作した安全システムを搭載した実車両で甲南大学のキャンパスと周辺の住宅街を走行し、以下の各機能の実験結果が確認された。(1) 段差・溝の検知では約5cm以内の誤差で2m以内にある段差や溝を検知可能である。(2) 障害物検知では8m以内にある小さな物体も検知可能であった。(3) 交通標識認識では10m以内にある標識を検知できた。(4)ドライバー状態監視では注意散漫の検知は成功したが、眠気の検知は難しかったので今後閾値設定の改良が求められる。さらに、本システムは4つのセンサーを1台のPCに統合し、マルチスレッド処理を採用することでシステム全体の動作速度を約7FPSに到達させた。これにより、法律で定められた最高速度6km/hのシニアカーに対して、危険を知らせるのに十分な反応時間を実現できることを確認した。  本研究では、多機能センサーシステムを活用した安全支援システムを提案し、シニアカーが段差の下に落下する、障害物に衝突する、交通標識を見落とす、ドライバーの注意散漫といった危険を事前に検知する能力の有効性を示した。実用化に向けては、障害物検知の精度向上やシステム全体の動作速度のさらなる向上、多様な環境での検証実験の追加といった課題も残されている。将来的には、本試作システムをシニアカーに限らず、自転車や電動車いす、低速走行ロボットなどへの応用可能性を視野に入れ、交通弱者の安全性向上に寄与することが期待される

    Epigenetic modification effects on liquid-liquid phase separation of G-quadruplex-forming nucleic acids

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    甲南大学博士(理工学)令和6年度(2024年度)核酸や核酸結合タンパク質が関与する液液相分離は、セントラルドグマの様々な段階で遺伝子発現を制御する。そのため、生体分子の液液相分離の分子機構を明らかにすることは、生命現象の理解の深化につながる。興味深いことに、タンパク質の翻訳後修飾は液液相分離能を変化させることが明らかになりつつある。タンパク質の翻訳後修飾と同様に、DNAやRNAの化学修飾もエピジェネティックな遺伝子発現制御において重要である。特に、代表的なエピジェネティック修飾であるDNAシトシンのメチル化(mC)は、遺伝子発現を調節することで細胞の発生や分化に関与している。しかし、mCがDNAの液液相分離に及ぼす影響は明らかではない。 そこで本研究では、DNA二重らせん構造に対するmCの効果を検討した。その結果、mCによって二重らせん構造の熱力学的安定性が増大することが分かった。また、その安定化はエントロピー駆動であり、電子供与性をもつメチル基の塩基対間のスタッキング相互作用を増大させることが示唆された。さらに、細胞の分子クラウディング環境下でmCの効果を検討したところ、二重らせん構造の安定性に対するmCと分子クラウディングの効果が相加的であることが明らかとなった。 次に、mCによる液液相分離への影響を明らかにするために、液液相分離のモデルシステムを構築することを試みた。その結果、四重らせん構造を形成する神経変性疾患由来のmRNAと、これに結合するFMRPの結合ドメイン(RGGドメイン)を模倣したモデルペプチドが液液相分離を誘起することが明らかとなった。さらに核酸の塩基配列や実験条件の系統的な検討から、RNA・DNAにかかわらず四重らせん構造が液液相分離の誘起に必須であることも示された。最後に、構築した液液相分離モデルシステムを用いて、四重らせん構造を形成するDNA鎖に含まれるmCが液液相分離に及ぼす効果を検討した。その結果、mCがグアニン四重らせん構造の液液相分離を抑制することが見出された。その分子機構について検討したところ、mCがグアニン四重らせん構造をパラレル型からアンチパラレル型へと遷移させることが示された。また、パラレル型四重らせん構造は液液相分離を誘起するが、アンチパラレル型四重らせん構造は液液相分離を誘起する能力が低いことも分かった。これらの結果から、mCはDNAの四重らせん構造をアンチパラレル型へと遷移させることで、液液相分離を抑制することが明らかとなった。以上のように本研究では、代表的なエピジェネティック修飾であるmCがDNA四重らせん構造の液液相分離に及ぼす効果を明らかにし、その分子機構を解明した

    Analysis of brain-gut coupling mechanism for temperature acclimation in C.elegans

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    甲南大学博士(理学)令和5年度(2023年度)動物は生育環境の温度に合わせて生存戦略を取ることで、多様な環境の中で生存・繁殖を可能にしている。本研究では、線虫Caenorhabditis elegansが飼育温度の変化によって頭部から尾部に跨る全身周回性の神経回路を駆動させ、腸の脂肪代謝を制御する温度順化機構を明らかにした。C. elegansは飼育温度が変化すると新しい温度に慣れる「温度順化」を示す。例えば低温環境下でも生存可能な15℃飼育個体を25℃に移し3時間以上飼育すると、25℃に慣れて低温への耐性を失い、低温環境下で死滅するようになる。C. elegansの温度順化の制御において、転写因子CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)が頭部に細胞体を持つASJ温度受容ニューロンとRMG介在ニューロンにおいて温度順化を制御することが明らかになった。ASJ温度受容ニューロンとRMG介在ニューロンの間を繋ぐギャップ結合やシナプス接続は存在しないため、この2つのニューロンを仲介するニューロンの存在が考えられた。そこでASJ温度受容ニューロンとRMG介在ニューロンの間の神経細胞のシナプス伝達を過活性化させた結果、尾部に細胞体を持つPVQ介在ニューロンが温度順化に関与している可能性が得られた。カルシウムイメージングと遺伝学的な解析により、PVQ介在ニューロンはグルタミン酸を介してASJ温度受容ニューロンとRMG介在ニューロン間の温度情報伝達を仲介していることが示唆された。 以上により、頭部のASJ温度受容ニューロン、尾部のPVQ介在ニューロン、頭部のRMG介在ニューロンと全身に渡って構成される神経回路が温度順化の制御に関与することが示唆された。次にこの神経回路の下流の解析を進めた結果、腸の脂肪代謝に関わる神経ペプチドFLP-7の変異体とその受容体NPR-22の変異体で温度順化に遅れが見られることが分かった。神経ペプチドFLP-7の下流で脂肪を分解することが報告されているトリグリセリドリパーゼATGL-1は高温飼育時の方が発現量が増加した。中性脂肪を赤色に染めるOil Red Oで腸の脂肪量を定量化したところ、高温飼育時の方が腸の脂肪量が低下しており、トリグリセリドリパーゼATGL-1の増加と腸の脂肪量の低下が同じ温度域で起こっていることが明らかになった。つまり、C. elegansは全身を周回する神経回路と腸が連関し、腸の脂肪代謝を介して温度順化を制御する生体システムが明らかになった

    Chemical Synthesis of Chalcogenide Nanocrystals using Charge Compensation Reaction and Nanostructuring of Thermoelectric Bulk Materials

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    甲南大学博士(理工学)令和5年度(2023年度)熱エネルギーと電気エネルギーを相互変換可能な熱電材料は、未利用熱エネルギーの有効活用に向け盛んに研究が行われている。高性能熱電材料には、高い電気伝導率と低い熱伝導率の両立が必要不可欠である。近年この課題の解決に向けた戦略として材料のナノ構造化が進められている。現行の熱電材料作製手法は大別して物理的手法と化学的手法があるが、物理的手法では材料をナノメートルスケールで微細化することは困難であり、化学的手法では、合成時に使用する有機配位子が材料中に混入することによる電気伝導率の低下が問題となっている。そこで本研究では、有機配位子フリーでのナノ結晶熱電材料の合成手法の開発に向け、電荷補償反応を利用した新たな合成系の確立を行った。また、得られたナノ結晶を焼結することにより高純度のナノ構造化熱電材料を形成した。ターゲット材料には、約300 Kで優れた熱電変換特性を示すとして知られているBi2-xSbxTe3を選択し、さらに、他のカルコゲナイド系熱電材料として、SnTeの合成に本手法を展開した。 Bi3+, Sb3+とTe2−を2:3の比率で反応させたところ、粒径が10nm以下のBi2-xSbxTe3ナノ結晶を得ることに成功した。本合成プロセスの反応速度が極めて速いことに加え、室温条件下で合成したことにより結晶成長を抑制できたと考えられる。また、Bi3+とSb3+の仕込み比により得られる試料中のBiとSbの含有率を制御することが可能であった。焼結過程において高圧化で結晶を成長させることにより、材料の結晶内部に高密度転位を導入することに成功し、ナノ構造化材料が得られた。高密度転位を有する本材料は低い格子熱伝導率を示し、さらに、配位子が含まれていないことにより、高いキャリア移動度を維持し、高い電気伝導率を示すとともに、熱電性能は従来合成法の溶融法で形成された同一材料と比較して約40%向上した。 本合成法をSnTeのナノ結晶の合成に応用した結果、直径約200nmのナノ結晶からなる高密度粒界含有バルク材料の形成に成功し、SnTeにおいても格子熱伝導率の大幅な低減に成功した。 本研究の合成手法は、配位子フリーにてナノ結晶の合成を可能とする、電荷補償反応に基づいた新規の化学的合成法であり、これまでに報告されてきた物理的手法や、熱電材料を構成する金属元素のカチオンを同時に還元する従来の化学的手法とは大きく異なる。また、種々のカルコゲナイド系熱電材料に対応可能なアプローチであり、容易にバルク材料のナノ構造化が可能であることから、高性能熱電材料の作製において有用な手段として期待できる

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