Musashigaoka College Repository / 武蔵丘短期大学リポジトリ

ArticleAssociation between 24 h Urinary Sodium and PotassiumExcretion and Dietary Intake in Japanese Male AdolescentFootball PlayersYosuke Nagashima 1,* , Akiko Horikawa 2 and Mari Mori 31 Department of Health Science, Musashigaoka Junior College, 111-1 Minamiyoshimi,Yoshimi 355-0154, Saitama, Japan2 Department of Sport Science, School of Human and Social Sciences, Tokyo International University,2509 Matoba, Kawagoe 350-1198, Saitama, Japan; akhorika@tiu.ac.jp3 Department of Health Management, School of Health Studies, Tokai University, 4-1-1 Kitakaname,Hiratsuka 259-1292, Kanagawa, Japan; m_mori@tsc.u-tokai.ac.jp* Correspondence: nagashima-y@musashigaoka.ac.jp; Tel.: +81-493-54-5101Abstract: High urinary sodium-to-potassium ratio is considered a strong risk factor for hypertension.This study aimed to evaluate urinary excretion of sodium and potassium, and we analyzed theselevels associated with dietary intake in Japanese adolescent football players. This cross-sectionalstudy included 120 Japanese male adolescent football players. Over 24 h, urine was collected andmeasured for creatinine, sodium, and potassium levels. A dietary assessment was performed using aself-administered diet history questionnaire. The study analyzed 79 participants. The mean urinarysodium was 143.2 mmol/day, urinary potassium was 42.8 mmol/day, and the mean urinary sodium-to-potassium ratio was 3.6. Compared with the Japanese Dietary Reference Intakes, the estimated saltintake was 73.4% for the participants who exceeded the sodium intake, and the estimated potassiumintake was 73.4% for the participants who did not satisfy it. Multiple regression analysis revealed thatmilk and dairy product intake was independently and positively associated with urinary potassium(β = 0.252) and independently and negatively associated with the urinary sodium-to-potassium ratio(β = −0.254). Adolescent football players had a high-sodium and low-potassium diet, well above theJapanese Dietary Reference Intakes recommendations. Milk and dairy products could be effective forincreasing urinary potassium and decreasing the urinary sodium-to-potassium ratio.Keywords: adolescent football players; cardiovascular diseases; urinary potassium; urinary sodium;urinary sodium-to-potassium ratio; dietary intakeAdolescents 2021, 1, 461–472. https://doi.org/10.3390/adolescents1040035 https://www.mdpi.com/journal/adolescents外部発表論文-75-ArticleAssociations between Milk and Dairy Product Intake, UrinarySodium-to-Potassium Ratio, and Socioeconomic Status inJapanese Male AdolescentsYosuke Nagashima 1,* , Akiko Horikawa 2, Ayana Mitsume 1 and Mari Mori 31 Department of Health Science, Musashigaoka Junior College, 111-1 Minamiyoshimi,Yoshimi 355-0154, Saitama, Japan; mitsume-a@musashigaoka.ac.jp2 Department of Sport Science, School of Human and Social Sciences, Tokyo International University,2509 Matoba, Kawagoe 350-1198, Saitama, Japan; akhorika@tiu.ac.jp3 Department of Health Management, School of Health Studies, Tokai University, 4-1-1 Kitakaname,Hiratsuka 259-1292, Kanagawa, Japan; m_mori@tsc.u-tokai.ac.jp* Correspondence: nagashima-y@musashigaoka.ac.jp; Tel.: +81-493-54-5101Abstract: Although socioeconomic status (SES) may affect children’s urinary electrolytic excretionand dietary intakes, few studies have reported the association between SES and urinary sodium(Na)-to-potassium (K) ratio in Japanese adolescents and children. Therefore, this study aimed toinvestigate the association between SES and urinary Na/K ratio (Analysis 1) and between dietaryintake and urinary Na/K ratio to determine the SES effects in children and adolescents (Analysis 2).This cross-sectional study included 168 Japanese male adolescent and child football players. Theurinary Na/K ratio was calculated from three spot urinary electrolyte values. Multiple regressionanalysis was performed in both first and second analyses to assess the associations between SES andthe urinary Na/K ratio and between dietary intake and the urinary Na/K ratio for ages 9–12 and13–15 years separately. The mean urinary Na/K ratio was 4.8, with higher SES associated with a lowerurinary Na/K ratio. Our results suggested that urinary Na/K ratios in Japanese child football playerswere high due to poor childhood diets, and higher SES was associated with lower urinary Na/Kratios. Further, milk and dairy products are associated with the urinary Na/K ratio, independent ofSES in children and adolescents.Keywords: cardiovascular diseases; adolescents and children; urinary sodium-to-potassium ratio;dietary intake; socioeconomic statusAdolescents 2022, 2, 73–85. https://doi.org/10.3390/adolescents2010008 https://www.mdpi.com/journal/adolescents外部発表論文-76-

Abstracts of papers published in other journals

島田, 里緒菜

シマダ, リオナ

伊藤, えつ子

イトウ, エツコ

Research on support for special needs education in high schools

蔦, 洋子

ツタ, ヨウコ

植松, 大介

ウエマツ, ダイスケ

八板, 将明

ヤイタ, マサアキ

太田, あや子

オオタ, アヤコ

An Attempt to Understand Japanese Culture through  Practical Lectures and Training Practical report of Special Off-Campus Training to Understand Japanese Hospitality and Culture in the Modern Era

武蔵丘短期大学武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻 2022 年 目 次 原著論文 栄養士養成校の学生の SDGs に対する関心と取り組み実態について ･････小河原 佳子･･････ 1 ～ 5 保護者の食支援と男子中学生サッカー選手における 食教育プログラムの体格、食行動、食事の前後差との関連 ･･･････････長島 洋介、堀川 昭子、小城 明子、小西 敏郎･･････ 7 ～20 給食の満足感に影響する心理的要因 ―構造方程式モデリングによるアンケートデータの解析― ････････････菊地 亨、三ツ目 彩菜･･････  21～27 研究ノート 学校保健・学校安全・危機管理に関する研究 群馬県内高等学校における新型コロナウイルス感染症への 対応についての考察 その 3   ･････････････････････････････ 内藤 郁芳･･････ 29～42 高等学校における特別支援教育の現状について    ･･････････････････････････････ 島田 里緒菜、伊藤 えつ子･･････ 43～48  「総合的な学習の時間」の展開について ･･･････････････高橋 勇一、福島 邦男･･････  49～54 栄養専門学校生の基本味の識別について（第 2 報）  ･･････池田  大佑、木元 泰子、浅香 透、 藤岡 幸枝、鈴木 涼介、朝日 直人･･････ 55～58 実践報告 本学におけるアンチ・ドーピング教育について ････････････････････ 高橋 琴美、田本 育代、島田 里緒菜･･････ 59～62 カヌー指導教材の作成  ･･･････････････････････････ 福島 邦男、太田 あや子･･････ 63～68 実践型講義及び実習を通しての和文化理解の試み 「現代における和文化の在り方と日本のもてなし文化の 理解を目的とした特別学外実習実践報告」 ･･････････蔦 洋子、植松 大介、太田 あや子、八板 将明･･････ 69～74 外部発表論文要旨 ･････････････････････････････････････････････････････････････････ 75～76 学術出版物及び学会発表の目録  ･････････････････････････････････････････････････････ 77～81 武蔵丘短期大学紀要に関する要領 ････････････････････････････････････････････････････ 82～83 編集後記 ･････････････････････････････････････････････････････････････････････････ 85

高橋, 琴美

タカハシ, コトミ

田本, 育代

タモト, イクヨ

- 59 -実践報告 本学におけるアンチ・ドーピング教育について The report of anti-doping education at Musashigaoka college 高橋 琴美  田本 育代 島田 里緒菜 Kotomi Takahashi  Ikuyo Tamoto  Riona Shimada   Abstract 本報告では、アンチ・ドーピング教育を行っている「スポーツ医学実習」及び「スポーツ医学」の授業時にアンケートを実施し、アンチ・ドーピングについての理解が得られたかどうか、得られた知識が定着しているかどうかを確認するとともに、本学授業におけるアンチ・ドーピング教育の課題について検討及び報告する。2017 年（平成 29 年度）から 2021 年（令和 3 年）入学生でスポーツ医学実習の履修者である 1 年生 400 名（健康栄養専攻 139 名、健康スポーツ専攻 247 名、健康マネジメント専攻14 名）、及びスポーツ医学履修者である 2 年生 264 名（健康栄養専攻 90 名、健康スポーツ専攻 162名、健康マネジメント専攻 11 名、無回答 1 名）を対象とし、アンチ・ドーピングに関する授業の前後にアンケートを実施し、無記名、自由記述で回答させた。その結果、アンチ・ドーピングに関する授業への理解度は非常に高く、ドーピングをただ否定するのではなく、その理由についても理解できていた。また、「ドーピング」や「ドーピング検査」へのイメージは、1 年授業後ではドーピング検査は大変で厳しい検査ではあるが、選手自身を守るための検査であり、選手の潔白を証明する検査であることを理解していることが推察されたが、2 年時に調査すると 1 年授業後に回答が増えた項目は回答数が減少しており、1 年授業前とほぼ同じ結果を示した。このことから、授業で理解した知識の定着が不十分であることが示され、今後は正しい知識を定着させるためにも、継続的にアンチ・ドーピング教育を実施していくことが必要であると考えられた。 キーワード： アンチ・ドーピング教育、理解度、定着Ⅰ はじめに ドーピングとは、一般的に競技能力を向上させることを目的として、薬物、方法などを不正に使用することであり 1)、スポーツでは厳しく禁止されている。また承認された場合を除き、治療目的で薬を使用し、競技力向上の意図がなかったとしても、アスリートから採取した検体（尿、血液）から禁止物質が検出されると、アンチ・ドーピング規則違反とみなされ、制裁が課される 1)。このようなドーピングを防止する活動の目標は、スポーツ固有の価値を保全することであり、具体的な活動としては（1）関係者への教育・啓発および情報提供の実施、（2）禁止物質の流通制限、（3）ドーピング検査、の3つよりなっている 2）。本学でもさまざまな授業でアンチ・ドーピングの内容を授業に取り入れているが、前回の報告では「スポーツ医学実習」でのアンチ・ドーピング教育・啓発の取り組みについてアンケート調査を実施し、授業後はアンチ・ドーピングに対する理解度が非常に高く、ドーピングをただ否定するのではなく、その理由についても理解できていたことが示された。またいかに継続してアンチ・ドーピング教育を行うかを検討し、実践していくことが必要であると考えられた4）。そこで本報告では、1年後学期の「スポーツ医学実習」の授業の前後、及び2年前学期の「スポーツ医学」でアンケートを実施し、アンチ・ドーピングについて理解が得られたか、その知識が定着しているかを調査するとともに、本学授業におけるアンチ・ドーピング教育の課題について報告する。 Ⅱ 方法 1. 対象2017 年（平成 29 年度）から 2021 年（令和 3 年）入学生でスポーツ医学実習の履修者のうちアンケートに回答した 1 年生 400 名（健康栄養専攻 139 名、健康スポーツ専攻 247 名、健康マネジメント専攻 14名）、及びスポーツ医学履修者のうちアンケートに回答した2年生264名（健康栄養専攻90名、健康スポーツ専攻162名、健康マネジメント専攻11名、無回本学におけるアンチ・ドーピング教育について - 60 -答1名）を対象とした。 2. 方法「スポーツ医学実習」履修者に対しては、1年後学期 12 月（2017、2018 年入学の健康栄養専攻については2月）のアンチ・ドーピングに関する授業の前後に、「スポーツ医学」履修者に対しては 2 年前学期 7月のアンチ・ドーピングに関する授業の前にアンケートを実施し、無記名で回答させた．2017年〜2019年はアンケート用紙への記入としたが、2020、2021年はコロナ禍によりスポーツ医学の授業を遠隔授業で実施していたため、Google フォームを利用し、アンケートを実施した。 3. アンケート内容授業前のアンケートについては、以下の1）〜4）の設問について回答させた．設問3）については、前回の報告で回答数が多かった項目を選択肢とした。 1）将来、どのようにスポーツに関わっていきたいと考えていますか。選手、指導者、サポートスタッフの中から当てはまるものを選んでください。（複数回答可） 2）これまで「ドーピング」について話を聞いたことはありますか。 3）「ドーピング」のイメージに当てはまるものを以下の中から選んでください（複数回答可）。 ⑴パフォーマンスが上がる（記録が伸びる） ⑵100％以上の力が出る  ⑶筋力がアップする ⑷やる気が出る ⑸疲れが残らない ⑹有名になれる ⑺薬を使う ⑻ずるい ⑼違反 ⑽体に悪い（副作用がある）  ⑾試合に出られない  ⑿記録が取り消される  ⒀その他（自由記述） 4）「ドーピング検査」のイメージを教えてください．  また、授業後のアンケートでは、上記の設問1）2）の代わりに授業内容への理解度を 5 段階で記入させ、上記設問3）については自由記述で記入させた。 4. 授業内容日本アンチ・ドーピング機構作成の資料 3）を参考に以下の内容を解説した。 1）ドーピングとは何か 2）ドーピングの歴史 3）アンチ・ドーピング活動の歴史 4）世界アンチ・ドーピング機構設立と日本アンチ・ドーピング機構の設立 5）禁止されている理由 6）規則違反と実際の規則違反例 7）アスリートの役割と責務 8）ドーピング検査とその手順  また、2019 年からは日本アンチ・ドーピング機構作成の新たな資料を使用し、これまでの内容の他に以下内容を加えながら説明した。 ⑴アンチ・ドーピングの目的とルール ⑵スポーツの価値とは ⑶世界アンチ・ドーピング規定 ⑷日頃から注意すること  一方的な説明にならないように、アンチ・ドーピングに関する問題を出し、検査手順についてはDVDを用いて説明をした．配付資料については、2018 年入学生までは授業で使用した内容と同じものを、2019年からは日本アンチ・ドーピング機構作成の FAIR PRIDEガイド 5）を資料として配付した。  Ⅲ 結果及び考察 1. アンケート結果1）将来の方向性（スポーツとの関わり方）  1年時では、選手 148名（31.3％）、指導者129名（27.3％）、サポートスタッフ157名（33.2％）、2年時では選手 83名（29.3％）、指導者 62名（21.9％）、サポートスタッフ77名（27.2％）との回答だった（図1.2）。1年時では全体の91.8％．2年時では78.4％の学生が、選手、指導者、サポートスタッフとしてスポーツに関わることを希望していた。どちらの科目のスポーツ指導に関わる資格やスポーツ栄養士などの資格必修となっている科目であり、将来の方向性として何らかの形でスポーツに関わることを希望している学生が多かったと考えられた。 武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻 - 61 -2）アンチ・ドーピング教育の有無  1年時では「ドーピング」について話を聞いたことがあると回答したのは 257 名（64.4%）、2 年時では238 名（90.2%）であった。2 年時は 1 年時にスポーツ医学実習や他の科目、テレビ等のニュースなどで「ドーピング」に関する情報に触れていることが考えられた。 3）アンチ・ドーピングの授業内容への理解度  「よく分からなかった」を1、「とても理解した」を5 とし、5 段階で評価したところ、4 または 5 の回答が91.3％であり、多くの学生が授業内容を理解していると考えられた。  4）「ドーピング」のイメージについて  授業前では、1、2年時とも「パフォーマンスが上がる（記録が伸びる）」「薬を使う」「違反」「試合に出られない」「記録が取り消される」の回答が多かった（表1）。  授業後は自由記述の回答を 7 項目に分類して集計したところ、ドーピングを否定する「やってはいけない」との回答が最も多く、次いで「ドーピングの内容、効果」「体に悪い」が多く、授業前の回答とほぼ同じ回答内容だった（図3）．しかし授業後の回答では、「禁止物質は身近にあるため自己管理が必要」との回答が見られた。このことから授業によってドーピングを否定するだけでなく、ドーピングが禁止される理由やアスリートの役割と責務などについてしっかり理解していると考えられた．  表1 「ドーピング」のイメージ（授業前） 1年 2年 1.パフォーマンスが上がる（記録が伸びる） 183 301 2.100％以上の力が出る 87 129 3.筋力がアップする 135 197 4.やる気が出る 68 67 5.疲れが残らない 47 46 6.有名になれる 23 22 7.薬を使う 179 270 8.ずるい 127 178 9.違反 207 300 10.体に悪い（副作用がある） 124 119 11.試合に出られない 162 244 12.記録が取り消される 190 236 13.その他 5 11 回答数合計 1、537 2、120 5）「ドーピング検査」のイメージ 自由記述の回答を検査内容（尿検査、血液検査など）、検査方法（抜き打ちで実施、検査室で検査員に監視されるなど）、検査実施の印象（厳しく検査される、ルールが細かいなど）、検査の目的・意味（フェアにスポーツをするため、選手の潔白を証明するためなど）、その他の5項目に分類し集計したところ、1年時授業前、2年時授業前では「検査内容」についての回答が多く、1年時授業後では「検査実施の印象」、「検査の目的・意味」についての回答が多かった。検査内容のイメージは時間を経過しても残っているが、授業後には理解31.3%27.3%33.2%8.2%選手指導者サポートスタッフ無回答29.3%21.9%27.2%21.6%選手指導者サポートスタッフ無回答37.8%18.1%13.8%18.6%5.9%4.1%1.6%やってはいけない体に悪い身近にある，自己管理ドーピングの概念・効果ドーピングによって起こること違反ずるい図3 「ドーピング」のイメージ（1年授業後） 図2 将来の方向性（2年時） 図1 将来の方向性（1年時） （回答数，複数回答可） 本学におけるアンチ・ドーピング教育について - 62 -していた検査実施の印象」、「検査の目的・意味」については、半年で薄れていた． Ⅳ 今後の課題 本学でアンチ・ドーピング教育を行っている「スポーツ医学実習」及び「スポーツ医学」は、日本スポーツ協会公認指導者共通科目に該当する科目であり、選手として活動している学生から、指導者を目指す学生、アスレティックトレーナーや栄養士として選手をサポートすることを目指す学生まで、履修者の幅広く履修している。これまで同様に、単に同じ内容、同じ説明をするのではなく、選手の視点、指導者の視点、栄養士の視点で話をすることで、アンチ・ドーピングの問題がより身近に捉えられるよう工夫している。今回のアンケート結果でも、前回の報告同様に授業への理解度が高かったことから、今後も履修学生に合わせたさまざまな視点からアンチ・ドーピングについて考える機会を設けていく必要があると考えられた。 授業後のドーピングのイメージについての回答から、授業を通してドーピングはやってはいけないこと で、体にも悪影響があり、身近なものから禁止物質を摂取してしまうことがあるため、選手だけでなく周りの指導者やサポートスタッフも注意をする必要があるということを理解していることが推察された。同様に「ドーピング検査」のイメージについての回答からも、授業前では尿検査、血液検査といった「検査内容」についての回答が多かったが、授業後では厳密に、細かいルールの中で検査を実施しているといった「検査実施のイメージ」や「ドーピング検査の目的・意味」についての回答が多くなっていることから、ドーピング検査は大変で厳しい検査ではあるが、選手自身を守るための検査であり、選手の潔白を証明する検査であることを理解していることが推察された。しかし、「ドーピング」や「ドーピング検査」へのイメージは、2年時に調査すると 1 年時の回答とほぼ同じ結果を示し、1年授業後に回答が増えた項目も回答数が減少していた。このことから、授業で理解した知識の定着が不十分であることが示され、今後は正しい知識を持ち続けていくためにも、継続的にアンチ・ドーピング教育を続けていくことが必要であると考えられた。また、「ドーピング」や「ドーピング検査」についての誤解や言葉の意味を混同している回答もいくつか見られた。これは前回の報告でも同様の結果が示されており、授業においては注意して説明をした部分でもあったが、説明がまだ不十分であったと推察された。今後はこれまで以上に言葉の意味・違いを正確に理解させた上でアンチ・ドーピング教育を進める必要があるとも考えられた。 本学学生は、将来選手として、指導者として、サポートスタッフとして活躍することを目指しており、常に情報が更新されていくアンチ・ドーピング教育を受けることは非常に重要なことである。今後は、学生がアンチ・ドーピングについて正しい理解をするだけでなく、その知識を定着させていけるようなアンチ・ドーピング教育について検討・実践を行っていくことが課題になると考えられた。 【引用・参考文献】 1）赤間高雄編（2014）『スポーツ医学【内科】』化学同人 2）公益社団法人日本体育協会（2015）『公認スポーツ  指導者養成テキスト』 3） 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構（2015）『アンチ・ドーピング研修会資料（2015.12 改訂版）』 4）高橋琴美・田本育代：本学におけるアンチ・ドーピング教育について、武蔵丘短期大学紀要 25（1）、pp31-37、2017 5） 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構（2019）『FAIR PRIDEガイド-アンチ・ドーピングの基礎知識-』 0501001502002501年授業前1年授業後2年授業前  図4 「ドーピング検査」のイメージ （回答数） 

The report of anti-doping education at Musashigaoka college

  - 85 -    編集後記  この度、武蔵丘短期大学紀要第 30巻を無事発刊できる運びになったことに厚く御礼申し上げます。今回もお忙しい中、多数の教員各位のご協力を賜った結果であることは言うまでありません。原著論文 3 報、研究ノート 3 報、実践報告 3 報を掲載できることになりました。姉妹校である後藤学園武蔵野調理専門学校や本学非常勤講師の先生方からも投稿があり、本学紀要がさらに多彩な内容となったことを喜ばしく思っています。 先生方が日頃から地道に頑張ってきた成果を社会に発表する場として、紀要の持つ意味は重要です。本学紀要の内容がさらに充実し、社会に多くの成果を還元する場となることを願って止みません。  図書委員会紀要分科会  図書委員会紀要分科会  茗荷 尚史 （委員長）                                    田本 育代 （健康スポーツ専攻）               辻   将也  （健康スポーツ専攻）            八板 将明 （健康マネジメント専攻） 鳥羽   愛    (図書館） 

An editorial postscript

福島, 邦男

フクシマ, クニオ

- 63 -実践報告 カヌー指導教材の作成A Development of teaching materials for canoeing class 福島邦男 太田あや子 Fukushima Kunio Ota Ayako  本研究の目的は、カヌー操船技術について学生の理解を促進する視覚的教材を作成することである。 キーワード：カヌー指導法、段階的指導、視聴覚教材1. はじめにカヌーは競技やレクリエーションに広く取り入れられている水上アクティビティの種目である。本学では学生は水泳1や水泳2の授業や野外活動ゼミナールでその操船技術を学習している。また、総合型地域スポーツクラブNPO法人武蔵丘スポーツクラブの地域活動に取り入れられており、本年度は、夏休みに開催された8回の外部委託事業で幼児や小学生を対象にカヌー体験を設け、学生が補助して実施した。   これらの事業にむけて、本学では2名の教員が学生のカヌー操船技術の指導にあたってきたが、指導学生の増加や学生の幼児や小学生への指導機会の増加に伴い、より効率的で安全な本学の学生指導用教材の必要性が生じてきた。 本研究の目的は、効率的なカヌー操船方法指導のための画像を使った教材を作成することである。 2. カヌー授業概要「水泳1」履修者を対象に7月中旬に土曜日集中授業で、B&G財団（ブルーシーアンドグリーンランド財団）の『安全水泳』のプログラムをB&G財団の指導員の協力を得て実施し、ライフジャケットの使用法、SUP（Stand Up Paddleboardスタンドアップパドルボード：ボードの上に立って乗り、パドルで漕ぐ）を体験し、授業で1回カヌーの操船を体験し、地域の子どものカヌー体験を補助した。 3. 地域におけるカヌー体験事業7月、8月に「吉見町子どもプール教室（4回）」、「東松山市子育てネットプール教室（3回）」、「東松山市子育て支援課（各1回）」の計8回のNPO法人武蔵丘スポーツクラブの外部委託事業で、幼児や小学生を対象にカヌー体験を設けて実施した。これらのプール教室では、幼児や小学生1名ないし2名を原則学生1名が担当してプールでの水遊びや水泳指導にあたるとともに、ライフジャケットを装着させてカヌーに乗せ、パドル操作をして漕ぐ体験をさせる内容となっている。実際には幼児や小学校低学年の児童は操船が難しいため、子どもたちはパドルを持ち漕ぐが、実際には学生がカヌーの前後をもってコントロールすることが多い。中学年や高学年の児童は自ら操船する意欲も高く、短時間で操船できるようになる者もいるため、学生は泳ぎながら衝突を避ける手助けを水面で行うことが多い。カヌー体験は子どもや保護者からの人気が高く、プール教室の特徴ともなっている。 また、令和3年度には連携協定を締結している川島町の川島町総合型地域スポーツクラブの委託事業としてカヌー体験教室を、また東松山ボーイスカウトのカヌートレーニングを、令和元年度にはTJUP（東武東上地域大学教育コンソーシアム）の事業として学生対象のカヌー体験教室を本学プールで実施してきた（写真3－1）。 この体験教室は波の静かな湖水でのカヌーツーリカヌー指導教材の作成- 64 -ングに発展させることを目標にしている。平成23年、30年には独立行政法人国立青少年教育振興機構の「子ども夢基金」の助成金を得て、「川の生活」というテーマで荒川の玉淀湖にある「玉淀カヌーリゾート」」の協力でクラブの自然体験活動としてカヌーツーリングを実施している（写真3－2，3）。令和3年度は夏に川島町総合型地域スポーツクラブと武蔵丘スポーツクラブの連携事業として名栗湖でのカヌーツーリングを予定していたがコロナ禍のため中止となった。 写真3－1  TJUPカヌー体験教室 写真3－2 平成30年「川の生活」（1） 写真3－3 平成30年「川の生活」（2） 4. カヌー教材の作成4－1 作成の経緯 これまでのカヌー体験の指導は主に本学の福島教授があたり、パワーポイントの指導教材を用いてきた。しかしながら、実際の学生の体験の様子を観察する中で、安全な乗船下船方法、うまく操船するためのポイントをより分かりやすく説明する必要が生じてきた。 4－2 作成の方法  令和4年9月23日に、初心者としてTJUPの教職員2名（山村学園短期大学、大東文化大学）、経験者として本学学生2名（夏季野外活動実習履修学生：健康栄養専攻女子1名、健康マネジメント専攻女子1名）計4名を対象に本学プールにてカヌー体験教室を実施した。この事業は令和4年度のTJUPの施設共同利用関連事業として開催した。 教室は事前にパワーポイントを用いた座学を40分間実施し、その後屋外プールにてカヌーを操船した。 操船の様子を本学教員太田と職員の鴻野がデジタルカメラで写真と動画で記録し、初心者と経験者の違いや上達の違いによる操船技術習得の違いに着目して、福島が分析し、画像教材を作成した。 5. カヌー教材の内容5－1 艇への乗り方の説明 写真5－1－1 乗り方の説明1 ①パドルを使用して、艇を簡易的に係留する。パドルを差し渡し、ブレードを艇にひっかける（写真中の丸）ことで、艇を引き留める役割をしている。 写真5－1－2 乗り方の説明2 武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻 - 65 -②パドルをコクピット後方に差し渡し、シャフトとコーミングを沖側の手で一緒につかむ（写真中の丸）。つかむ位置は、船体の中央よりも沖側にする。 写真5－1－3  乗り方の説明3 ③岸に差し渡したシャフトの途中を、陸側の手でつかむ。この時に身体が両手の間になるが、両手とも離さない様に注意する（写真中の丸）。 写真5－1－4 乗り方の説明4 ④シャフトの上に腰を下ろす（写真中の丸）ことで、シャフトへの荷重により艇が安定することを説明し、且つ体験させることで、船体が安定することを確認させる。 写真5－1－5 乗り方の説明5 ⑤写真4-5は、乗り方の説明（写真4-4）を前方から撮影したもの。シャフトに腰を下ろし、長座姿勢から乗る。 写真5－1－6 乗り方の説明6 ⑥シャフトに腰を下ろしたまま、沖側の足先から艇へ入れていく。この最中も、両手を離さずに行う。シャフトから手が離れると、バランスを崩し転覆する恐れがある。 写真5－1－7 乗り方の説明7 ⑦足先が入った後、膝、腰の順で乗り込み（写真矢印）し、コックピットへ腰を据える。 写真5－1－8 乗り方の説明8（失敗例） ⑧膝を入れる前に腰を下ろしてしまうと、コックピット内に膝を入れることができなくなる。ただし、対象者が小学生低学年等、体格によっては、この順序でも乗ることが可能である。 カヌー指導教材の作成- 66 -写真5－1－9 乗り方の説明9 ⑨バランスに注意しながら、パドルを体の前に持ち変える 5－2 艇から降り方の説明 基本的には乗り方の際の動作を逆再生するイメージで行う。パドリングで、身体の前方に支持していたパドルを後方（背中側）に持ちかえる。 写真5－2－1  降り方の説明1 ①基本的には乗艇時の逆順である。左右の手でシャフトをつかみ、腕力で上半身を持ち上げ、シャフトに腰を乗せる。 写真5－2－2 降り方の説明2 ②その後、岸側の脚から艇の外に出し、岸に足を降ろす。両足で確実に立てる状況になるまで、パドルから手を離さない。 写真5－2－3 離岸 乗降の練習を終えた後は、離岸して、実際に水上へ移動する。 パドルを使用して、岸を押すことで、岸から離れる。パドルが岸に触れないだけの距離を取らないと、この後のストローク練習ができなくなる。 5－3 沈脱（チンダツ）練習と水抜き  転覆を沈（チン）、艇からの脱出を脱（ダツ）と呼び、一連の動作を沈脱と呼ぶ。本来は、練習の過程で必ず沈脱練習を行い、沈脱し岸まで戻り、浸水したカヌーから水を抜く方法までを体験させる。今回は水温、気温ともに低く、参加者の健康状態を考慮し、沈脱練習を実施しなかった。 しかし、不意の転覆によってパニックに陥らないためにも、この段階での沈脱練習は事故防止の上で重要である。 写真 5－3－1 から 4 は別日程で実施した、本学学生を対象とした沈脱練習と水抜きの様子である。 写真5－3－1 沈脱練習の様子1  沈 ①慌てずに、身体の両脇のコーミングに左右の手を添えて、腰から脱出する。 水を飲み込んでしまわない様に注意する。 武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻 - 67 -写真5－3－2 沈脱練習の様子2 脱出 ②脱出する際、普段とは天地が逆になることも事前に説明し、理解させる必要がある。 写真5－3－3 沈脱練習の様子3 艇の復元 ③脱出後はすみやかに、転覆している艇を復元させる。 ここまでで、実際の自然の水域では、パドルを手放さないことが紛失予防の条件であるが、プールを利用した指導では、脱出体験を優先し、パドルは手放してしまっても良い（写真赤枠）としている。 写真5－3－4 艇からの水抜き ④プールサイドで水抜きを行い、再乗艇して練習を継続する。 5－4 ストローク練習 沈脱と水抜きの練習を終えた後は、漕ぎ方（ストローク）の練習へ移行する。  前進（フォワードストローク）、停止（ブレーキング）、後退（リバースストローク）を練習する。 写真5－4－1 フォワードストローク練習 ①ブレードの向きを目視で確認し、注意しながら、パドル操作を行い、前進する。慣れてきたら目視せずに漕げると良い。 写真5－4－2 停止練習 ②初歩の手順としてのフォワードストロークからのブレーキングでは、ブレードの背面を使用して、体の後ろでスイープする（水面をなでる）ようにすることで、減速させる。 写真5－4－3 リバースストローク練習 ③フォワードストロークで前進し、停止した後に、リバースストロークで後退の練習を行う。ブレードの面を変えずに、体の後ろから前へ漕ぐことで、後退が可能となる。後方に注意させて衝突を防ぐ必要がある。後退からの停止には、フォワードストロークを僅かに行わせることで停止可能となる。 カヌー指導教材の作成- 68 -5－5 ストローク練習での注意点 ここでは、ストローク練習中に陥りやすい注意点として主に2点について紹介する。 写真（写真5－5－1から3）に注意点1と注意点2を示す。 写真5－5－1 注意点1 パドルの左右の長さが偏ってしまう事例。 ここでは左ブレードがより遠くを長くストロークすることとなり、艇が右へ向かって回転を始めるきっかけとなる。本人に左右差があることを伝え、パドルの左右の長さを均等にすることを心がけさせ、グリップの位置を調整させる。 次の注意点は写真 5－5－2 と 3 に示した。これらは連続して撮影されたものである。 写真5－5－2 注意点2-1 写真5－5－3 注意点2-2  ここでは、パドル長さの左右差に加え、ブレードを水中に差し込む際の角度に注目する必要がある。  グリップ位置の左右差から、正中線から右ブレードへの距離が長く、艇から離れた水中に、パドルの角度を浅く入水されているのに対し、左ブレードへの距離は短く、艇の近くに角度を大きくして入水している。このことから、進行方向左へ艇を進める結果となり、直進することが困難になっている。  この場合、パドル長さの左右差を調整し、パドリングの左右差を補正していく必要がある。口頭での説明だけでなく、自身の動きを動画撮影して確認することも有効である。 5－6 各自で課題を持って練習  ここまでの手順で、カヌーへの乗り降りから、ストローク練習を経て、進む、曲がる、止まるを習得できる。この後は、各自がさらに技能を洗練させることを目標に、カヌーを楽しみながら、お互いが教え合い、主体的に取り組むなかで、指導者は的確な声がけを行い、技能の向上を図る。 6. まとめ本研究の目的はカヌー操船技術指導のための効果的な画像教材を作成することであった。今までの教材に不足していた角度の画像や、失敗例（写真5－5－1から 3）を含め、初心者と経験者を比較して得た情報を整理し、より分かりやすいものが完成した。今後はこの教材を授業の学生指導に活かしていきたい。 

A Development of teaching materials for canoeing class

池田, 大佑

イケダ, ダイスケ

木元, 泰子

キモト, ヤスコ

浅香, 透

アサカ, トオル

藤岡, 幸枝

フジオカ, ユキエ

鈴木, 涼介

スズキ, リョウスケ

朝日, 直人

アサヒ, ナオト

- 55 -  研究ノート  栄養専門学校生の基本味の識別について（第 2 報） Five taste identification among students (II)    池田大佑* 木元泰子** 浅香透* 藤岡幸枝* 鈴木涼介* 朝日直人* Daisuke Ikeda Yasuko Kimoto Toru Asaka Yukie Fujioka Ryosuke Suzuki Naoto Asahi  *武蔵野栄養専門学校、**武蔵丘短期大学  Abstract 基本 5 味の識別について、専門学校生を対象に調査を行った。閾値付近の溶液を使用して調査を行ったところ、酸味や苦味が識別しやすく、甘味やうま味が識別できなかった。うま味について、甘味や塩味と誤って回答するものが多く、本来の美味しさとうま味の区別が出来ていないように感じた。苦味は前報より濃度の上昇をし、正答率が上昇した。  キーワード：味の識別、うま味、美味しさ、カフェイン  Ⅰ はじめに 前報 1）において、栄養士養成校として、学生の味覚感度に関する評価を目的とし、基本5味の閾値に近い溶液を用い、識別調査を行った。その結果、酸味に対する正解率が 43.4％と最も感じにくい味であることが分かった。  前回の調査で大きく2つの課題が挙げられた。まず1つ目として、甘味・塩味・苦味について「うま味」であると誤答した数が多かったことである。矢島らの研究 2）でも、塩味をうま味であると誤答した人が多かったとしている。うま味の識別調査を行う中で、ほかの味との相関性について、改めて検討する必要性を感じた。2つ目は、閾値の再検討である。前報では甘味成分として 0.5％ショ糖溶液、苦み成分として0.02％カフェイン溶液を用いたが、これらについて正答率が低かった。甘味に関しては閾値の検討も行いながら、被験者の嗜好調査を取り入れることで、日常的な食生活状況を加味した考察が行えるのではと考えた。苦味に関して、ヒトは生得的に毒物と感じ、拒否するために感じやすいと考えられている。3,4）だが一方で、苦味は薬理効果をもつ成分でもあると広く知られ、その経験的な生理的変化を望み、求められる味の一つとして知られている。5)学生の生活に合わせた検討を再度行うことで、現代の味覚に関する傾向を把握するに相応しいものになるのではないかと考えた。 以上の観点から、基本5味についての調査を昨年度より継続して行うこととした。味を感じることのできる最小濃度である閾値付近の溶液を使用し、学生の基本味に対する識別調査を行い、現状の評価と傾向の把握を行った。  Ⅱ 調査方法 1. 被験者、時期 被験者は、武蔵野栄養専門学校に在籍する2年生167名（19～43歳）のうち、目的や方法に関して説明を行い、書面で参加の同意が得られた学生150名（男性36名、女性110名、未回答4名）とした。 令和3年12月3日から12月9日に全5回に分けて実施した。 2. 調査方法 被験者には調査を始める前に、調査前の飲食物の影響を避けるため、水道水で含そうさせた。 5種類の試料から1つずつ（順不同）口に含み、5秒以上口腔内でしっかりと味を確認し、その試料の味質を回答用紙に記録した。回答は「塩味」「酸味」「甘味」「苦味」「うま味」「わからなかった」の 6つの中から選択式とした。 1 つの試料が終わったら、残味を防ぐため水道水でよく含そうさせた後、次の試料へと進めた。 3. 試料 試料は、ヒトの閾値に近い濃度で試料液を調製した。閾値は測定方法や解析方法などで大きく変動が見られるため、先行研究 4～8)と比較しながら試料濃度は以下の通りに設定した。苦味の代表物質は複数あげられるが、今回は身近な飲料等で目にするカフ 栄養専門学校生の基本味の識別について（第 2 報）  - 56 - ェインを使用した。なお試料は精製水で溶解し、体温に近い40℃の状態で使用した。 試料①：0.3%塩化ナトリウム溶液（塩味） 試料②：0.4%ショ糖溶液（甘味） 試料③：0.02%酒石酸溶液（酸味） 試料④：0.06%カフェイン溶液（苦味） 試料⑤：0.03％グルタミン酸ナトリウム溶液 （うま味） 甘味であるショ糖については、0.2～0.4％が閾値であるとしているものが確認できた。過去当校で行っている実験では 0.5％としていたが、昨年度の甘味正答率の低さや近年の研究データを踏まえ変更を行った。同様の理由で、苦味であるカフェイン濃度について0.02％から0.06％へと濃度を上げた。 また、うま味については授業時間などの都合上、これまで調査を行っていなかったが、前報の結果より、特に塩味や甘味がうま味と誤答されることが多く、新たに加えた。その際、濃度については先行研究 7）の閾値を参考に0.03％とした。  4. 解析方法 検定には、Excel2019 を用い、有意差検定を行った。（両側 t -検定）有意水準p<0.05を有意差ありとみなした。  Ⅲ 結果 各試料の回答数と正答率を表1に示した。 塩味について、正答したのは123名（82.0％）であり、誤答として最も多かったのはうま味であった。（23名:15.8%）甘味について、正答したのは88名（58.7%）であり、最も正解率が低い結果となった。誤答として最も多かったのはうま味であった。（26名:17.3%）酸味について、正答したのは 133 名（88.7%）であり、最も正答率が高い結果であった。苦味について、正答したのは131名（87.3%）であった。うま味について、正答したのは92名（61.3％）であった。誤答として、甘味（19名：12.7％）や塩味（14名：9.3％）と回答する人が10名を超える結果となった。 正答率を比較したところ、塩味と甘味、甘味と酸味・苦味、うま味と塩味・酸味・苦味の正答率の間にそれぞれ統計学的な有意差が認められた。（p<0.05）  IV 考察 1. うま味と他の味との関連性  今回うま味の他の味との正答率を調査したところ、塩味・酸味・苦味との間に有意差が認められた(p>0.05)ものの、甘味との有意差は認められなかった。うま味の正解率が低い結果について、川上らの研究 8)でも同様に感受性が低いと報告がされている。 うま味についてはかねてより、被験者が「検査試料が美味しくない」＝「うま味ではない」とうま味を選択しないケースがあるとされている。9,10）栄養士養成校の授業カリキュラムを通して見ても、検査試 料であるグルタミン酸ナトリウム溶液に実験等で触れる機会は初めての学生がほとんどであると推察され、そのケースに当てはまるのではないかと示唆された。 2. 閾値の再検討  今回の調査では、昨年度の調査より試料濃度の検討を行った。それを踏まえ、昨年度は調査を行わなかったうま味以外の結果について正答率の比較を行ない、表2に示した。  回答（人） 正答率（％） 塩味 甘味 酸味 苦味 うま味 わからない 試料液 ①塩味 123 1 1 1 23 1 82.0 ②甘味 5 88 7 13 26 11 58.7 ③酸味 0 8 133 5 1 3 88.7 ④苦味 0 3 4 131 8 4 87.3 ⑤うま味 14 19 9 7 92 9 61.3 表1：回答数と正答率（* : p>0.05） * * * * * *  武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻  - 57 -   まず、甘味の調査で使用したショ糖溶液は、昨年度の 0.5％から 0.4％に濃度を変更して調査を行った。正答率は58.1％から58.7％となったが、有意差は認められなかった。このことから、今回の 0.1％の濃度低下によって結果に大きな影響は与えなかったと推測される。甘味は他の研究に比べ、当校の調査では閾値よりも高い濃度であろう溶液を使っていたことから、本来出るべき正答率よりも高い数値が出ているのではないかと考えられたが、同じような正答率であった。  次に、苦味の調査で使用したカフェイン溶液は、昨年度の 0.02％から 0.06％に濃度を変更して調査を行った。正答率は43.4％から87.3％となり、有意差が認められた。このことから、今回の濃度上昇によって正答率が上がったと考えられる。味覚の研究には、苦味成分として酢酸キニーネを利用しているものが多く見受けられる 4,7,9）が、当校では学生が普段身近で、苦味成分としてイメージのついたカフェイン溶液を用いて実験を行っている。同じように閾値近くの濃度である溶液を用いていても、成分の意いで正答率が異なってくるのではと推測された。  Ⅴ 結論 今回基本5味の識別調査について、従来当校で行っていた調査濃度を検討した結果、苦味の調査に用いていたカフェイン溶液において本来閾値とされていた値よりも低い濃度で調査を行っていたと推察される。基本5味の閾値濃度については苦味以外の味にも共通して、研究により差が認められる。調査に協力してくれている当校学生は調査の訓練を積んでいるわけではないが、先行研究で示されている味覚閾値により近い数値での調査を進めることができた。 うま味に関しては今後追って調査を進めていく必要があると示唆された。学生が「うま味」と聞いて連想する味と舌で感じる試料の味との間に大きな食い違いが生じていることで、正答率に影響をしているのではないかと推測された。 実際の料理の中で生まれる「おいしさ」は味覚以外にも生理的、心理的、環境要素とのかかわり方から評価され、様々な味が複雑に絡み合い創出される。11）そのため、ヒトそれぞれの持つ「美味しさ」という言葉は元来から多岐にわたり、その本質をつかむのは難しいのかもしれない。12）この調査が、時代とともに移り行く「美味しさ」に少しでも近づく足がかりになればと考える。  謝辞  本調査の実施に当たり、主旨に賛同しご協力いただきました武蔵野栄養専門学校第 51 期生の皆様に心よりお礼を申し上げます。    【参考文献】 1）池田大佑 木元泰子 浅香透 藤岡幸枝 朝日直人: 栄養専門学校生の基本味の識別について（第 1報）武蔵丘短期大学紀要29巻, pp.49-52 (2021) 2）矢島由佳, 髙澤まき子 : 食生活状況と味覚感度に関する研究, 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 67(0), 24(2015) 3）山口静子: 食品の趣向と味,日本食品工業学会誌vol.41, No.3 , pp.241-248 (1994) 4）小俣靖 : “美味しさ”と味覚の科学, 日本工業新聞社 (1986) 5) 佐藤昌康, 小川尚編 : 最新味覚の科学, pp.83-89,中川正 : ストレスと苦味, 朝倉書店(1991) 昨年度の結果 今年度の結果 昨年との 有意差 試料液 正答率（％） 試料液 正答率（％） 0.3%塩化ナトリウム溶液 73.5 0.3%塩化ナトリウム溶液 82.0 p<0.05 0.5%ショ糖溶液 58.1 0.4%ショ糖溶液 58.7  0.02%酒石酸溶液 89.0 0.02%酒石酸溶液 88.7  0.02%カフェイン溶液 43.4 0.06%カフェイン溶液 87.3 p<0.05 表2：昨年の調査との比較  栄養専門学校生の基本味の識別について（第 2 報）  - 58 - 6) 山口静子 : 味の研究における官能検査の役割と有効性, 日本食品工業学会誌 vol.38,No.10, pp.972-978 (1991)  7) 前田清一 : 味の化学, 生活衛生 5巻2号, pp.73-77(1961)  8) 川上育代,我如古菜月,池上由美,湯之上祐子,松添直隆,北野直子 : 女子大生における味覚感度の現状と「だし」の嗜好性, 栄養学雑誌 Vol.69 No.1, pp.10-19 (2011)  9）細村弓子 : 旨味の臨床的検査について, 日本耳鼻咽喉科学会会報 87 巻 11 号, pp.1549-1555 (1984) 10）河合美佐子 : 「うま味」に関する味覚障害, 口腔・咽頭科24巻1号 (2011) 11）川端晶子 大羽和子 他 : 新しい調理学 第2版, 学建書院 (2015) 12）菅野洋一朗 : “おいしさ”の定義, 生物工学会誌, 91, 4 (2013) 

Five taste identification among students (II)

内藤, 郁芳

ナイトウ, イクヨシ

The Study of school health , school safety and crisis management Correspondence to COVID-19 in the high school in Gunma prefecture part 3

小河原, 佳子

コガワラ, ヨシコ

- 1 -  原著論文  栄養士養成校の学生の SDGs に対する認識と 取り組み実態について The actual state of recognition in and approach to the SDGs  among junior college students for training dietitian  小河原 佳子     Yoshiko Kogawara      Abstract 本研究は栄養士養成校の学生の SDGs について認識と取り組み実態を把握する目的で調査した。調査時期は 2022 年 7 月に 2 回、自記式のアンケートを実施した。結果は以下の通りである。 ほとんどの学生が SDGs を知っていたが、意味の理解ができていない学生が 6 割いた。 1 回目の調査で「1. 貧困をなくそう」「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」は認知度が高く、7 割近くの学生が知っていた。 学生に SDGs の 17 の目標で気になる取り組みを選択させた結果、「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」「14. 海の豊かさを守ろう」の順に多かった。 学生自身が取り組んでいる SDGs の 17 の目標中で 1 番多いのは「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が 10 人で、次いで「2. 飢餓をゼロに」「14. 海の豊かさを守ろう」が 9 人だった。 1 回目のアンケート後に授業で SDGs の取り組みを紹介し、自分でできる取り組みを考えてもらった後、12 人がエネルギー問題として省エネルギー対策を取り組み始めた。また、フードロス対策として食べ残しや消費期限、賞味期限を気にするようになった学生は 6 人だった。  キーワード： SDGs、栄養士養成校、認識、取り組み  The purpose of the survey was to determine the actual level of recognition and approach to the SDGs among junior college students for training dietitians. The survey was conducted twice in July 2022, using a self-administered questionnaire. The results are as follows.  Most students were aware of the SDGs, but 60% of the students did not understand their meaning. In the first survey, among the SDGs, many students were familiar with "1. No Poverty," "5. Gender Equality," and "2. Zero Hunger," with nearly 70% of the students knowing about these items. When students were asked to select the initiatives, they cared about among the 17 goals of the SDGs, the most common responses were "5 Gender Equality" and "2 Zero hunger" followed by "14 Life Below Water Protect". Of the 17 SDGs that the students themselves are working on, the most common was "7. Affordable and Clean Energy" (10 students), followed by "2. Zero hunger" (9 students) and "14. Life Below Water Protect". After the first survey, we introduced the SDGs initiatives in class and asked the students to think about the initiatives they could take on their own, and then asked them to name the initiatives they had started. 12 students started working on energy conservation measures as an energy problem. In addition, 6 students began to pay attention to leftovers, expiration dates, and best-before dates as food loss countermeasures.  Key words：SDGs, junior college students for training dietitians, recognition, approach   Ⅰ はじめに 2015年国連総会で全ての国で人類を貧困の恐怖や欠乏の恐怖から解放し地球を癒し安全にするために持続可能な開発目標（SDGs）を採択し、2030年栄養士養成校の学生の SDGs に対する認識と取り組み実態について  - 2 - までに目標を達成するために行動を促進している。SDGsの目標達成のために17の目標と169のターゲット 1)が掲げられた。 日本政府は国として各省庁で具体的な取り組み案2)が計画されている。また、企業も積極的にこれらの取り組み 3)を推進し進めている。2021年に東京で行われた夏季オリンピックでもこのSDGsに配慮した運営計画 4)が策定され開催された。たとえば、調達する物資は持続可能性を考慮し個別基準に合わせたり、食品ロス削減や容器包装廃棄物削減を図ったり様々な工夫がなされた。この社会の流れの中で、研究教育機関である大学では、各々の特徴を活かしたSDGsの取り組み 5)を行なっている。短期大学においても貢献できる領域があり取り組んでいる。また栄養士として社会で働くときに、学生自身もSDGsの取り組みに関わり、率先してSDGsを活かした教育に取り組み、対象者を教育していく立場になる。その為に将来、栄養士として活躍する学生にもSDGsやカーボンニュートラルの取り組みに対する認識をもち、日常生活の中でSDGsに積極的に関心を持って取り組むことが望まれる。栄養士養成校の学生にもSDGsに関わっていくために教育が必要であり、学生の推進力を高めるためにSDGsに考慮した授業を実施する必要がある。その為の基礎資料として、本学の学生のSDGsに対する関心度や取り組み姿勢の実態を把握する必要がある。今回は、学生のSDGsに対する認識や取り組みの実態を把握することを目的としてSDGsに関するアンケート調査を行った。  Ⅱ 方法 1. 対象者 栄養士養成校に通う短期大学 2 年生 59 名に対して行った。1 回目のアンケートは有効回答者数 45人（7月4日実施分 回収率76.3%）、2回目のアンケートは有効回答者数46人（7月25日位分 回収率78.0%）について分析した。 2. 調査日時 2022年7月4日、25日栄養指導論2の授業中に自記式のアンケートを実施した。1回目は7月 4日に認識についてのアンケート調査を実施した。2 回目は、7月11日に授業でSDGsについて講義をし、7月25日に取り組み実態アンケートを実施した。  Ⅲ 結果 1. SDGsの授業前の認識について 「SDGs を知っていますか」の問いに対して約89％の学生が知っていると答えた。   図1 SDGsを知っている学生の人数（割合）  SDGsを日本語になおす問いには42%の学生は正しく日本語訳ができていたが、訳が曖昧だったり、日本語訳ができていなかったりした学生は未記入を含め、6割近くいた。   図2 SDGs を日本語に訳すことのできる学生の人数（割合）  SDGs の 17 の目標の中で学生が知っている取り組みの番号を選択させたところ、「1. 貧困をなくそう」「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」が多く、7 割近くの学生が知っていた。中武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻  - 3 -  には1〜17まで全て選択した学生が7人いた。  1.貧困をなくそう 2.飢餓をゼロに 3.すべての人に健康と福祉を 4.質の高い教育をみんなに 5.ジェンダー平等を実現しよう 6.安全な水とトイレを世界中に 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに 8.働きがいも経済成長も 9.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任 つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう 16.平和と公平をすべての人に 17パートナーシップで目標を達成しよう 図3 SDGsの17の目標  図4 SDGsの17の目標別学生の周知人数  学生に SDGs の 17 の目標で気になる取り組みを選択させた結果、「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」について「14. 海の豊かさを守ろう」の順に多かった。  図5 学生が気になるSDGsの17の目標  学生が知っている取り組み例を自由表記させた結果 19 人が記入した。一番多かった取り組み内容は「プラスチックストローを他素材に変更した取り組み」が4人、次いで「ジェンダー平等」が3人だった。他に「エコバッグ・マイボトル」「食品ロス」「ポイ捨て」「子どもの貧困」「エネルギー問題」「水の節約」「植林」などであった。  学生が取り組みたいSDGsの目標をあげさせたところ、無回答の学生は13人いた。1番多い目標は「14.海の豊かさを守ろう」で6人だった。次いで「5. ジェンダー平等を実現しよう」「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が4人だった。  図6 学生が取り組みたいSDGsの17の目標 栄養士養成校の学生の SDGs に対する認識と取り組み実態について  - 4 - 2. SDGsの授業後の取り組み状況について 学生自身が取り組んでいるSDGsの17の目標中1番多いのは「7．エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が 10 人で、次いで「2．飢餓をゼロに」「14. 海の豊かさを守ろう」が9人だった。  しかしながら、「特になし」や無回答が 6 人ずついた。  図7 学生が取り組んでいるSDGsの17の目標  1回目のアンケート後に授業でSDGsの取り組みを紹介し、自分でできる取り組みを考えてもらった後、始めた取り組みをあげてもらった。2 回とも回答した学生のうち 12 人がエネルギー問題として省エネルギー対策を取り組み始めた。また、フードロス対策として食べ残しや消費期限、賞味期限を気にするようになった学生は 6 人だった。エコバッグ、マイボトルの取り組みを始めた学生は 5 人だった。「特になし」と答えた学生は5人だった。 今回の授業後に取り組みに対して実施した学生の感想では「SDGs は考えればできることが多くあると思うので続けて世界が良くなるよう少しでも協力したいです。」「当たり前のようなことがSDGsにもなることが改めてわかった。今後も続けていきたいです。」「少しのことで変わることがあるので、これからも取り組んでいきたいです。」など SDGs の取り組みに関心を持ち、継続していこうとする姿勢が見られた。また実践したことにより「電気代が浮いた。優しい気分になれた。」「いつもより暑く感じたけれど、少しずつ少しずつ変えていくだけで、電気代も変わるし地球にも優しい」「とても気持ちが良く感じた」などのメリットと優しさを感じた学生もいた。「スーパーなどに行くとつい買いすぎてしまい食べ残ってしまいがちだったので、食べ切れる量だけ買うことに意識して取り組みました。初めは考えながら取り組んでいましたが、慣れてくると自然に適量を選ぶことができるようになりました。今後も継続していきたいです。」「節電したことで無駄に電気を使うことがなかったので、電気代の節約にもなりました。」など日常生活の見直しになった学生もいた。  Ⅳ 考察  SDGsの名称は新聞紙、TV、インターネットなどで広く学生に伝わり、9 割の学生が知っていると答えていたが、SDGs の取り組みの具体的な内容までになると実際には理解していない学生が多かった。多くの学生が知っていると答えた目標「「1. 貧困をなくそう」「2. 飢餓をゼロに」は、具体的な取り組み例としてあげられたのは「子どもの貧困」で数名あげたにとどまった。「SDGs」という言葉だけがひとり歩きしている実態となった。現状では、理論や政策について理解していない。SDGs 活動の具体的な活動を知っているかを見てみると「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」は、関心を持っている学生が多かった。ニュースや SNS での発信が多く見られた時期との関連も考えられ、学生世代に認知が高かったと推測できる。「5. ジェンダー平等を実現しよう」「2. 飢餓をゼロに」に次いで「14. 海の豊かさを守ろう」は気になる目標として関心度が高く、特に「14. 海の豊かさを守ろう」と直接結びついてはいなかったが、プラスチック製品を少なくするための活動である「エコバッグ」「マイボトル」「ストロー」「使い捨てフォーク・スプーン」について積極的に実践している学生が目立った。また、授業中に自分でできる取り組みを考えてもらった後、始めた取り組みとして「エコバッグ」「マイボトル」をあげた学生が5人ほどいた。活動が広まり、また実践しやすさがこの結果に繋がったと考えられる。食や栄養、健康を教育していく立ち位置になる武蔵丘短期大学紀要 第 30 巻  - 5 -  栄養士として、職場で実践しやすく、SDGs の取り組みになるため、授業で、焦点を絞って栄養教育と結びつけられる取り組みとしてもあげられる項目ではないかと考えられる。また、「食べ残し」「消費期限」「賞味期限」に気をつけるようになった学生も複数人いた。 実際にSDGsを授業で学んだ後、学生自身が関心を持ち、取り組み始めたものに「節電」や「フードロス」「エコバッグ」「マイボトル」などが多く、取り組みのきっかけがあれば、学生も積極的に取り組むことができたようだった。また栄養士の教育課程として学んできたことと結びつきやすい目標は積極的に取り組めているようだった。特に「フードロス」は取り組みやすい傾向が伺えた。横山らの研究 5)でも栄養士養成課程の学生はフードロスの関心が高いとの報告があった。 2回目のアンケート結果で、授業後にSDGsの目標の取り組み始めたことに対して「特になし」「無回答」だった学生も、すでに取り組んでいる目標が複数あったり、項目に分類できずに活動内容を感想としてあげたりしていたため、学生のSDGsに対する関心度や取り組み度としては高い傾向だったと推測できる。SDGs の取り組みに関心があっても具体的な取り組みを理解できていなかったり、きっかけがなかったために取り組めていなかったりした学生が授業で「できることを始めてみよう」と促した結果、ほとんどの学生が、他の学生が取り組んでいることや社会の取り組みを知ることで自分でもできると自信を持って取り組み始めたようだった。その結果、学生からの感想で「社会に役立つこと」と「自分の生活でもメリットを感じたこと」でより継続する意思を示した学生が多かった。 今までの取り組み以外でも日常生活でできることに気づき、積極的に取り組む姿勢を示した学生が増えた。今回は学生の自主性に任せ、各自での取り組みを始めた段階の報告だが、将来、指導者を育成する上でも、短期大学として地域貢献の取り組みとしても、甲斐荘 6)が示すような高等教育機関として全体の目標やプログラムを計画し、実施していく必要性があると考える。 今回のSDGsについて学生の認識と授業後の取り組み実態について調査の結果から、学生のSDGsについての認識は不足しているため、SDGs の目標・目的をしっかり理解する初期の取り組みが必要である。荒井 7)のようにグループ学習と講義を組み合わせたプログラムによって、SDGs を認識させ、それに伴う行動を自ら起こす、または指導することに繋がると推察する。継続して授業でのプログラムを検討していきたい。  【参考文献】 1）外務省 持続可能な開発のための2030アジェンダ（日本語訳）https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402. pdf  2022年9月7日閲覧 2) 外務省 JAPAN SDGs Action Platform https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/ effort/index.html  2022年9月7日閲覧 3) 東京2020×持続可能性東京オリンピック・パラ リンピック競技大会組織委員会 https://www.env.go.jp/content/900496790. pdf 2  2022年9月6日閲覧 4) 森口祐一, 東京オリンピック・パラリンピック2020大会における持続可能性への配慮 : 日本LCA学会誌16 巻 1 号 p. 2-6 2020  5) 横山恵, 佐藤佳織, 菅原百合：短期大学生を対象とした食品ロスの実態および意識に関する調査, 修紅短期大学紀要 第41号 p.43-49 2021  6) 甲斐荘正晃, 短期大学におけるSDGs取り組み の方向性について:大妻女子大学家政系研究紀要 第57号 p.107-111 2021  7) 荒井義則, 環境教育とSDGsに関する一考察:埼玉女子短期大学紀要 第41号 p.13-26 2020  

The actual state of recognition in and approach to the SDGs among junior college students for training dietitian

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