Aomori Public University Repository / 青森公立大学学術リポジトリ

香取, 真理

カトリ, マリ

A Model to Support Learner-Oriented English-Speaking Practice with Gamification and Self-Regulation Elements

國方, 明

クニカタ, アキラ

23１. イントロダクション　本稿では，「金融リテラシー調査（2019年）」項目パラメータの推定結果を報告する。　國方（2020）は「金融リテラシー調査（2016年）」個票データに項目反応理論（item response theory，以下 IRTと略す。）を適用して，客観問題 25問の項目パラメータを推定した。項目パラメータは，各問の難易度や識別力などの特徴を表すパラメータである。國方（2020）の推定結果を利用する学術研究が散見される。まず，阿部他（2020）は，大学生を対象にした独自アンケートの回答から推定した項目パラメータと，國方(2020）の推定値を比較した１）。次に，國方 (2021）は，國方 (2020）の項目パラメータ推定値と「金融リテラシー調査 (2019年）」個票データとを用いて，2019年における各被験者の能力パラメータを推定した。このように項目パラメータ推定値の公表は有用と考えられる。２. 分析枠組み２. １.「金融リテラシー調査」の紹介　「金融リテラシー調査」は，わが国 18歳以上の個人の金融リテラシーの現状把握を目的とするアンケート調査である。本稿執筆時点（2022年 8月 )で， 「金融リテラシー調査」は，2016年，2019年と 2022年の 3回実施されている。各調査の結果は，金融広報中央委員会（2016, 2019, 2022)で報告されている。　３回の調査で共通して，客観問題 25問が出題されている２）。正答率は , 2016年調査で 55.6%, 2019年調査で56.6%, 2022年調査で55.7%である。２.２.  IRT　IRTでは，被験者の回答パターンにロジスティック関数を当てはめる。本稿では，國方(2020）と同じ２パラメータロジスティックモデルを採用する。２パラメータロジスティックモデルのロジスティック関数は (1)式である。　　　　　　　　　　　　1　　Pj (θi ) =　　　　　　　　　　　　　　　(1)　　　　　　1＋ exp（－ aj（θi－ bj ）） 　Pj (θi )は，被験者 iが項目 jに正答する確率を表す。θiは被験者 iの能力を表す。θiは－ ∞から＋ ∞の値を取り，θiが大きいほど能力が高い被験者を表す。通常，θiが平均０標準偏差１の標準正規分布に従うと仮定する。横軸に θiを測り縦軸に Pj  (θi )を測る平面に，(1)式を描く。すると通常右上がりの S字型曲線になる。この曲線を項目特性曲線と呼ぶ。　また，(1)式右辺にある ajと bjをまとめて，項目 jの項目パラメータと呼ぶ。ajを項目識別力と呼び，bjを項目困難度と呼ぶ。　項目困難度 bjは，正答確率が 50%になるときの θiの値に当たる。bjも－ ∞から＋ ∞の値を取る。bjが小さくなるほど，能力 θiの低い被験者でも項目 jに正答しやすくなる。そこで，項目 jは，相対的に簡単な項目と判定される。　一方，項目識別力 ajは，θiと bjとが等しくなるときの，項目特性曲線の傾きを表す。通常，※  青森公立大学教授國方　明※「金融リテラシー調査 (2019年 )」に基づく項目パラメータの推定　(Estimation of Item Parameters on Financial Literacy:　 New Survey Evidence)【調査・報告】 青森公立大学論纂第 8巻第1・2号（2023）24結果は國方（2020）と同じである。　表 1下段に，全項目の推定値を使って計算した平均と標準偏差を示す。2019年調査では，項目識別力の平均と項目困難度の平均のどちらも若干小さい。３.２. 等化後の項目パラメータとテスト特性曲線　表２に，等化を行った後の項目パラメータ推定値を示す。表２の推定値は，表１の推定値とあまり異ならない。　図１に，表１と表２の項目パラメータを使って描いたテスト特性曲線を示す。テスト特性曲線は，横軸に θiを測り，縦軸に Pj (θi )の全項目合計を測る平面に，両者の関係を示す曲線である。全体として，６本のテスト特性曲線はほぼ重なっている。但し，次の２つが異なる。まず，横軸が－２以上０以下近辺の領域で，2019年調査（等化前 )の線が他の線よりも高い。次に，横軸が０以上２以下近辺の領域で，mean & sigma法の線が，他の線よりも低い。４. 結果の考察　分析結果は次の２つである。(A)全体として，項目パラメータの推定結果はあまり異ならない。(B)但し，等化を行う前の項目パラメータ推定値と，mean & sigma法で等化を行った項目パラメータの推定値が，他の推定値と若干異なる。　以上の分析結果について，２つの考察を行う。　第１に，２.１節で述べた通り，2019年調査の正答率は，2016年調査のそれよりも高かった。図１では，横軸の能力が平均０以下になる領域で，2019年調査（等化前）の線の高さが他の線よりも高い。そこで，正答率の上昇は，主に能力が平均以下の被験者で生じたと推測できる。　第２に，表２で mean & sigma法にかかわる項目識別力の平均が小さい。また図１の一部領域で，mean & sigma法の線が他の線よりも低い。これらの結果について , mean & sigma法の一次変換では，2016年調査における項目困難度の標準偏差と 2019年調査における項目困難度の標準偏項目特性曲線は右上がりなので，ajは正値になる。ajが大きくなるほど，正答確率50%近辺の領域で，項目に正答した人の能力が bjよりも高く，項目に誤答した人の能力が bjよりも低いと判断しやすい。　本稿では，次の２つの分析を実施する。　第１に，「金融リテラシー調査（2019年）」個票データを用いて，客観問題 25項目にかかわる項目パラメータを推定する。不正解の被験者と「わからない」を選ぶ被験者とを区別しない。項目パラメータの推定方法は周辺最尤推定法である。R (R Core Team, 2022）の irtoysパッケージ（Partchev, 2022）上で IRT Command Language （Hason, 2002）を操作して，項目パラメータを推定した。Rのバージョンは 4.2.1, irtoysパッケージのバージョンは 0.2.2, IRT Command Languageのバージョンは 0.020301である。　第２に，本稿と國方（2020）との間で，項目パラメータ推定値を比べる。比較に際して，國方（2020）の項目パラメータの原点と尺度を基準にして，本稿の項目パラメータの原点と尺度を國方（2020）のそれに揃える。この手続きを等化と言う。等化を実行する方法として，mean & sigma法 , mean & mean法 , Haebara法 , Stocking & Lord法の４つを採用する３）。R 4.2.1のplinkパッケージ（Weeks, 2010, 2017)を用いて等化を実施した。plinkパッケージのバージョンは 1.5-1であり，本稿と國方（2020）とで同じである。３.分析結果の紹介３.１. 等化前の項目パラメータ　表１の第１列と第２列に，「金融リテラシー調査（2019年）」個票データを用いて推定した項目パラメータを示す４）。また，表１の第３列と第４列に，國方 (2020）で報告した項目パラメータ推定値を参考までに示す５）。　表１第１列で，ajは全て正値である。また，表１第２列で，bjは 15個の項目で負値になり，10個の項目で正値になる。さらに項目 15と項目 25で，推定値が他の項目と大きく異なる。以上の25ジ 0.2.2を用いて再度推定した。今回再推定した項目パラメータの値は，國方 (2020）の推定値と全く変わらなかった。なお , IRT Command Languageのバージョンは，本稿と國方 (2020）との間で同じである。引用文献リスト阿部 　圭司・小澤 伸雄・木下 康彦 (2020)．大学生を対象とした金融リテラシーの項目反応理論に基づく検討　高崎経済大学論集，63 (1)，1-15．http://doi.org/10.20635/00001083Gonz ález, J. & Wiberg, M. (2017). Applying Test Equating Methods Using R. SpringerHaso n, B. P. (2002). IRT Command Language. Retr ieved August  5 ,  2022,  from ht tps: / /sourceforge.net/projects/ssm/加藤 健太郎・山田 剛史・川端 一光 (2014)．Rによる項目反応理論　オーム社金融 広報中央委員会 (2016)．「金融リテラシー調査」の結果　Retrieved May 31, 2022, from https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2016/pdf/16literacy.pdf金融 広報中央委員会 (2019)．「金融リテラシー調査 2019 年」の結果　Retrieved May 31, 2022, from https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2019/pdf/19literacy.pdf金融 広報中央委員会 (2022)．「金融リテラシー調査 2022年」の結果　Retrieved August 3, 2022, from https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/pdf/22literacy.pdfKole n, M. J. & Brennan, R. L. (2014). Test Equating, Scaling, and Linking Methods and Practices (3rd ed.). Springer國方 　明 (2020)．項目反応理論による金融リテラシー再検証　青森公立大学論纂，5 (1・2)，15-28國方 　明 (2021)．わが国金融リテラシー説明要因の再検証：「金融リテラシー調査 (2019年 )」差との比を用いる。一方，表１では，項目 25の困難度が，2019年調査では 2016年度調査よりも大きい。そこで，項目困難度の標準偏差が 2019年調査で 2016年調査よりも小さくなり，mean & sigma法の結果と他の結果とが異なったと考える。（2022年5月31日受付）５.謝　辞　分析にあたり，金融広報中央委員会（事務局：日本銀行情報サービス局内）から「金融リテラシー調査（2016年）」と「金融リテラシー調査（2019年）」の個票データの貸与を受けた。また，匿名の本誌査読者から丁寧なコメントを頂いた。記して感謝申し上げる。なお，言うまでもなく残された問題は筆者に属する。 １ ）阿部他 (2020)は，日本ファイナンス学会第１回秋季研究大会（2019年 11月）で筆者が國方（2020）の草稿を報告した際の推定結果を参照している。そして，報告時の推定結果は，國方（2020）の推定結果と同じである。 ２ ）各項目の設問内容については，國方（2020，表１）を参照してほしい。３ ）各方法の詳細については，加藤他（2014，第 11 章と第 14 章）, Kolen & Brennan (2014，Chapter 6）, González & Wiberg （2017, Chapter 5）を参照してほしい。４ ） IRTには一次元性と局所独立性という 2つの前提が両方成り立たなければいけない。本稿執筆過程でこれら前提が成り立つか否かを検証して，IRTの前提が成り立たないとは言えないと判断した。検証結果がご入り用の方は筆者へのご連絡をお願いしたい。 ５ ） 本稿と國方（2020）との間で，Rのバージョンと irtoysパッケージのバージョンが異なる。バージョンアップの影響を評価するために，本稿執筆に際して，國方（2020）で推定した項目パラメータを，R 4.2.1と irtoysパッケー26Statistical Computing. Vienna, Austria. . Retrieved August 4, 2022, from https://www.R-project.org/Week s, J. P. (2010). plink: An R Package for Linking Mixed-Format Tests Using IRT-Based Methods. Journal of Statistical Software, 35(12), 1-33. https://doi.org/10.18637/jss.v035.i12Week s, J. P. (2017). plink: IRT separate calibration linking methods. R package version 1.5-1. Retrieved August 5, 2022, from https://cran.r-project.org/web/packages/plink/の利用　東北経済学会誌，74 (1)，1-28. Retrieved August 5, 2022, from https://sites.google.com/site/touhokukeizaigakkai2/touhoku-keizai-gakkai-shiPartc hev, I. (2022). irtoys: A Collection of Functions Related to Item Response Theory (IRT). R package version 0.2.2. Retrieved August 5, 2022, from https://cran.r-project.org/web/packages/irtoys/R Co re Team (2022). R: A Language and Environment for Statistical Computing. R Foundation for 27［表１］　項目パラメータ推定結果（等化前）注： 平均および標準偏差は，項目１～項目 25それぞれの推定値を用いて計算した平均および標準偏差である。出所：2019年調査については筆者作成。2016年調査については，國方 (2020)表２に基づき筆者作成。28［表２］ 項目パラメータ推定結果（2019 年調査，等化後）注：表１と同じ。出所：筆者作成。29［表２］　続き注：表１と同じ。出所：筆者作成。30注： 凡例のMS, MM, HB, SLは，等化の方法を指す。MSはmean & sigma法を，MMはmean & mean法を，HBはHaebara 法を，SLは Stocking & Lord 法を，それぞれ指す。出所：筆者作成。［図１］　テスト特性曲線

Estimation of Item Parameters on Financial Literacy: New Survey Evidence

石本, 雄大

イシモト, ユウダイ

Regional Brands and Foods: Effects and Challenges of Utilizing Regional Collective Trademarks in Aomori Prefecture

丁, 圏鎭

ジョン, ゴンジン

The Roles of Individual and Organization in Social Innovation

青森公立大学大学院　経営経済学研究科博士(経営経済学)2021年度thesi

楠山, 大暁

クスヤマ, ヒロアキ

Empirical Analysis of the Changes in the Long-term Care Industry Following Long-term Care Insurance Reform

佐藤, 三三

サトウ, サンゾウ

On The Historical Positions of "Shakai Kyoiku Ron" by Zenjiro Sato and by Kamegoro Inoue

On the Historical Position of "Shakai Kyoiku Ron" by Jiro Yamana in Japanese Adult and Community Education

江連, 敏和

エヅレ, トシカズ

The Nature of Priority Messages about Covid-19 Provided by Governments in English Language

丹藤, 永也

タンドウ, ヒサヤ

The Development of AOMORI Picture Book: A Storytelling Teaching Material Introducing the Characteristics of Aomori

紫関, 正博

シセキ, マサヒロ

The Institutional Meaning of the Revision of German Audit Standard "IDW PS 340" :Audit Institution of German Early Risk Detection System

Not a member yet