企業の事業継続戦略オプションと「お互い様BC 連携」の考察

本稿では，国内の中小企業による事業継続の取り組みの促進に向けて，事業継続戦略オプションと「お互い様BC 連携」について報告した．具体的には，これまで取り組まれてきた企業による事業継続戦略のほか，昨今の事業環境の変化にうまく対応できると考えられる戦略を考察し，これらの戦略オプションについて企業規模，業種および発生事象に応じた整理を行った．さらに，戦略オプションとして「お互い様BC 連携」に着目し，その概要を述べた上で，マッチングの要件について考察を行った．This paper aims to introduce a variety of business continuity options including a business partnership for business continuity (BC) to promote the BC efforts by small and medium-sized enterprises in Japan. It examines BC options that have been ever pursued by companies and that can be responded to recent changes in business environment and organizes the BC options according to the company size, the types of industry and incident. Then, it takes up a business partnership for BC and describes its outline and actual efforts. Finally, it considers the requirements to meet this strategy.(ONLINE先行公開につき、ページ数および発行年情報は仮のものになります。引用にはDOIをご利用ください

リアルタイム被害推定システムの機能強化および利活用－マルチハザードリスク評価に向けて－

地震発生直後に被害を推定するリアルタイム被害推定システムの機能強化を実施した．具体的には，地すべりや液状化に対する被害推定機能を試作した．また，システムの安定性向上や利活用状況の調査を目的とし，2013 年から2022 年にかけての公開サイトの運用ログを集計し，分析を行った．また，民間企業におけるリアルタイム被害推定システムの利活用状況について整理した．This paper describes functional enhancements and a utilization of the real-time damage estimation system implemented from 2019 to 2022. We developed a function for multi-hazard risk assessment targeting landslides and liquefaction. In addition, the access status of the public site of the real-time damage estimation system is described. Furthermore, we summarize the utilization status of the real-time damage estimation system in companies

SIP4D を活用した災害情報の広域連携に関する取り組み － 令和4 年度長野県地震総合防災訓練および愛知県災害対策本部運用訓練における活動報告 －

本稿では，長野県の訓練および愛知県の計3つの訓練を実験対象として2つの実験を実施した．実験の1つ目は，2つの県の訓練において同一の災害情報をWeb GIS（ISUT-SITE）にて共有し，県をまたいで同一の災害情報を共有することの効果と課題の抽出を行った．実験の2つ目は，愛知県の訓練において，災害情報入力と共有を行うための実験システム（SIP4D 利活用システム）を用いて，実動機関（警察，消防，海上保安庁，陸上自衛隊）それぞれが入力した情報の統合を行い，実動機関による情報入力，共有の有効性および課題の抽出を行った．In this paper, we conducted two experiments using three exercises in Nagano and Aichi prefectures. The first experiment was to share the same disaster information in the exercises in two prefectures by using Web-GIS (ISUTSITE), and to extract the effects and issues of sharing the same disaster information across the prefectures. In the second experiment, an experimental system for inputting and sharing disaster information (NIED-DISS) was used to integrate the information input by each of the disaster response agencies (Police department, Fire department, Japan Coast Guard, and Ground Self-Defense Force) during an exercise in Aichi Prefecture. Then we extracted the effectiveness and issues of information input and sharing by the disaster response agencies

災害レジリエンス向上のための分譲マンションの課題発見と準公共財としての活用方法の検討

本研究では大手マンション管理会社が有する管理に関するデータの分析および社員へのアンケート・ヒアリングを通じ、防災や災害対応に資する視点から分譲マンションの課題抽出を行い、準公共財として地域特性に応じた活用方法を探った。その結果、マンションでの防災活動は築年数に応じて、活動数と活動内容に変化がみられ、築年数40～50年未満で最も活動数が多く、活動内容も居住者間の交流や地域との連携が必要なものが増加していた。ただしマンション間での差が大きく、居住者のリタイアによる時間的余裕の発生、長期間居住する中での被災経験や高齢化に伴う共助意識の芽生え、活動の中心となる人物の有無などが影響していると考えられた。社会的期待としてマンションの長期のライフスパンを見据え、個々のマンションの特性に応じた防災活動に対する支援の必要性が明らかとなった。準公共財としての活用事例では、災害時の一時避難先としての活用等は一部でみられたものの今回得られた事例は少なく、行政の支援の仕組みなどが整備された一部地域に偏っていた。準公共財としての活用の促進には、行政の働きかけ（支援）が重要となっていることが示唆されるが、さらなる調査事例の収集と分析が必要と考える。また準公共財としての活用を図る上で、マンションと行政との結びつきを強化することの重要性も示され、従来の自治会を中心とした地域コミュニティ運営にとどまらない仕組みづくりの必要性が示唆された