Tsu City College Repository / 三重短期大学 学術機関リポジトリ

古畑　 淳

Japanese

Local Autonomy Law Case : Amendment of the nursery school ordinance by the mayor's discretionary action

上木 敏正

資料 レーガン政権期におけるアメリカ国内小売業に関する M&A活動の記録 ―個々の取引状況を中心として―

高橋　彩

Development of an Attitude Scale for the Anti-Scalping of Tickets Law

小野寺　一成

A Study on the History of the Central Urban Revitalization Plan with Two Bases in a Regional City - Case Study（2020～2023）of the revitalization plan for the area around Tsu Station and the Daimon- Marunouchi area in Tsu City-

小野寺, 一成

オノデラ, カズシゲ

40021213245

地方都市再生の計画及び事業と近年の都市計画関連法改正に関する考察

武田,誠一

2023 年度 みえ生活科学研究 3 号  25  【研究ノート】    ソーシャルワーク研究における「オンラインインタビュー」活用の現状分析  An Analysis of the Use of "Online Interviews" in Social Work Research   武田 誠一* Nobukazu TAKEDA      Keywords :  " Online Interviews， Qualitative Research， Social Welfare Research " 「オンラインインタビュー，質的調査，社会福祉調査」  １. 緒言 2023年 5月に新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は感染症法での位置づけが 5 類に移行した．引き続き，感染予防への意識は必要であるが，かつてのような行動制限などは必要なくなった． しかし，私達が経験したこの数年の変化は，あらゆる場面において大きな影響を残したと言える．大学教育の場面では，遠隔授業というこれまで想定していなかった講義形式が普及し，対面による授業が再開しても ICT（情報通信技術）を活用した授業展開が当たり前の光景となった． このような後戻りができない状況は，ソーシャルワーク研究においても同様である．特に「現場の人々が関心を持つ，追試不可能で一般化できないと思われる出来事を分析する」(King ら 1994：3)ことを目的とする定性的・質的研究においては，フィールドワークやインタビュー調査など実践現場に赴く研究方法が多用されている． その方法であるインタビュー調査を，北澤は「調査者と調査対象者との間で主に質問－回答形式の相互作用を行いながらデータを収集していく方法である」（北澤 2011：38）と指摘している．この「相互作用」は，これまで対面によるものであると理解されてきた． しかし，新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響で対面での接触が制限されたことによって，これまでの前提とは異なるインタビュー調査の方法が試みられるようになった． それが ICT（情報通信技術）を活用したコミュニケーションツールとして急速に普及したビデオ会議システムで，インタビュー調査もその技術を用いた「オンラインインタビュー」が実施されるようになった．  ２. 調査における ICT（情報通信技術）の活用 ICT（情報通信技術）を活用した調査は，量的調査では先行して活用されている． しかし量的調査での活用も当初は慎重な意見があり，大隅は，「インターネット調査は信頼できないとの意見が出る一方，それだからこそ新しい調査法として別の視点から検討すべき」（大隅 2022：202-203）という議論があったことを指摘している． だが課題は抱えつつも ICT（情報通信技術）を活用した量的調査は，現在「モニターウエッブ調査」としてその規模を拡大させており，この手法について小松は「低廉な調査コスト，データ作成の迅速性などのメリットから，近年いろいろな領域で急速に普及が進んでいる」(小松 2023：160)と指摘している． 一方，質的調査の分野での ICT（情報通信技術）活用について，鈴木は量的調査での活用状況を概観し「近い将来には質的データも集められるようになると予想されている」(鈴木 2017：32)と述べている．また，上野は「チャットやラインを使えば，メイル調査でも自由回答法と同じく，二次的，三次的質問をくりだせます」(上野 2018：188)と，対面によるインタビュー調査の補完として電子メールの活用方法を提案している． なお，これらは新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の世界的流行前の記述である． そのため，新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の世界的流行後の動向では，伊藤，三井はインタビ*三重短期大学 生活科学科 准教授 修士（社会福祉学），修士（医科学），修士（社会学）  Life and Environmental Science at Tsu City College．Associate Professor． (Master of Social Welfare)，(Master of Biomedical Science) （Master of Sociology）      2023 年度 みえ生活科学研究 3 号  26  ューの構成要素の一つとして「対面・遠隔（電話，WEB，会議ツール，Eメール，SNS）」を示し，インタビュー調査において対面によらない非接触での方法も提示している(伊藤,三井 2023：60-61)． また，調査において対面による接触が制限されたことが社会調査にどのような影響を与えたかについては，田辺（2023）が詳しく考察している． それでは，ソーシャルワーク研究には，どのような影響を与えたのであろうか．本論ではその点を明らかにしたい．  ３. 方法 ソーシャルワーク研究における「オンラインインタビュー」の現状に関しては，すでに大西（2021），大西（2022），大西（2023)によって報告されている．そのため本研究では，先行研究では対象になっていない期間を含めることにした． よって調査は，新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の世界的流行がインタビュー調査に与えた影響を把握するために，日本社会福祉学会発行の『社会福祉学』61 巻 1 号（2020 年）から 64 巻 3号（2023）１）までに掲載された論文，実践報告，調査報告（以下，論文等）を対象に，主たる調査方法がインタビュー調査である論文等 2)を抽出した． 抽出した論文等の記述を分析し，インタビュー調査における「オンラインの活用」3）状況，新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の研究への影響，インタビュー調査の時期などをまとめた． なお本論は，日本社会福祉学会研究倫理規程を遵守している．  ４. 結果  『社会福祉学』61 巻 1 号（2020 年）から 64 巻 3号（2023）までに掲載された論文等は全 99本で，その内訳は表 1 のとおりである．  表１ 掲載論文等の内訳 種別 件数 論文 84 調査報告 12 実践報告 3 合計    99   その中でインタビュー調査を行った論文等は 30本であった，それぞれのインタビュー方法については表 2のとおりで，多くが半構造化インタビューであった．  この 30 本のなかで「オンラインインタビュー」を行ったものは，9本であった（表３）． このうち「オンラインインタビュー」を行った理由について，6 本の論文等が新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の研究への影響を記述している． まず，小山は「新型コロナウイルス感染症の感染防止対策としてビデオ会議システムを用いて調査を行った」(小山 2022：88)と記述している． 大塚は「新型コロナウイルス感染拡大の状況下であるため，事前に調査対象者との相談の上，対面によるインタビューと Zoom を使用してのオンラインインタビューを併用して行った」(大塚 2022：43)と記述している． 戸石,大西は「新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し，オンラインでビデオ通話ができる Zoomを使用した」(戸石,大西 2023：48)と記述している． 五十嵐は「コロナ禍の状況に配慮し，1 カ所の対象者については，許可を得て Zoom での面接を行った」(五十嵐 2023：58)と記述している． 最後に太田らは「20 代 30 代は新型コロナウイルスへの懸念から，（中略）Web会議システムの Zoom を使用」(太田ら 2023：43)と記述している． これ以外に 3 本の論文等で「オンラインインタビュー」が行われている． 伊藤は「遠方の人はオンラインで，アクセス可能な地域の人には対面でのインタビューを実施した」(伊藤 2022：16)と記述している．また，安達も「インタビューを実施したが，遠方のためスカイプを使用した」(安達 2022：33)と調査対象者が遠方であったことが「オンラインインタビュー」を実施した理由としている． 一方で亀山は「インタビューは，プライバシーが守られた空間で，オンラインビデオ通話にて実施した」(亀山 2023：5)との記述のみでその選択理由には触れていない．  表２ インタビュー方法の内訳 インタビュー方法 件数 比率 半構造化インタビュー 24 80% 記述なし 4 13% グループインタビュー 1 3% 電話，訪問 1 3% 合計 30   表４ 調査時期と「オンラインインタビュー」実施の有無 調査時期 あり なし 合計 2020 年以降 9 4 13 2020 年前 0 17 17 合計 9 21 30    27 表３ 「オンラインインタビュー」を行った論文等 発行年 巻 号 種別 著者 タイトル ページ 投稿受付 調査時時期 2022 62 4 論文 小山 宰 医療福祉生活協同組合におけるコ・プロダクションへの組合員参加のプロセスと参加を促進する働きかけ――グラウンデッド・セオリーによる分析から―― 86-100 2021 年 7 月 2020 年 10 月～11 月 2022 63 1 論文 伊藤 嘉余子 スコットランドにおける里親ソーシャルワークの価値と実践 ――里親支援ワーカーインタビューの分析からの考察―― 14-29 2021 年 7 月 2021 年 5 月～6 月 2022 63 1 論文 安達 朗子 女性視覚障害者における複合差別の経験とその意味づけ ――ある女性視覚障害者のライフストーリーの分析を通して―― 30-44 2021 年 10 月 2020 年 6 月， 7 月 2022 63 2 論文 大塚 桃子 矯正施設を出所した障害者に対するソーシャルワーク実践の展開 ――地域生活定着支援センター職員へのインタビュー調査から―― 41-55 2021 年 7 月 2020 年 8 月 ～10 月 2022 63 2 論文 鈴木 智子 地域住民との連携・協働により社会資源を開発したソーシャルワーカーのプロフェッショナルコンピテンス――実践から導き出された専門職の能力―― 56-69 2021 年 10 月 2019 年 11 月～ 2020 年 2 月, 10 月 2023 64 1 論文 戸石 輝; 大西 次郎 医療ソーシャルワーカーが管理職として行う管理・マネジメントプロセスの解明 ――勤続年数 10 年以上の課長に対するインタビュー調査から―― 46-60 2022 年 4 月 2021 年 9 月 ～10 月 2023 64 2 論文 亀山 裕樹 ケアをめぐる交渉において子どもが直面する制約の検討 ――A. Sen の協調的対立概念を用いて―― 1-13 2023 年 1 月 2021 年 9 月 ～10 月 2023 64 2 論文 五十嵐 雅浩 高齢者ケアにおける外国人就労者のための教育的支援の現状と課題 ――教育担当者への半構造化インタビューによる質的内容分析―― 56-71 2022 年 10 月 2021 年 6 月～ 8 月 2023 64 3 論文 太田 健一 他 多世代で構成されたまちづくりを目的とする NPO の会員における活動継続要因の検討 ――世代ごとの活動継続要因と世代間の関係性に着目したグループインタビュー調査から―― 41-53 2023 年 1 月 2021 年 11 月  28   次に，30 本の論文等の調査時期と「オンラインインタビュー」実施の有無をクロス集計した結果，9本全てが調査時期に 2020年以降を含んでいた（表４）．  ５. 考察  調査結果から「オンラインインタビュー」の実施が，新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の感染予防対策とするコロナ禍特有の事情を示すものが多かった． 一方で，調査対象者が遠隔地であったことを理由にあげるものもあった．この点に関して大西は「もともと質的調査が抱えてきた，〝自分が足を運びやすい場所〟にいる対象者を選びがちという対面型における偏りを，オンライン型は一挙に解消することとなった」（大西 2022：104）と指摘している． しかし，そのような特徴があるとしても表４で示した通り「オンラインインタビュー」は 2020 年以前には見られない，このことは，やはりコロナ禍で「オンラインインタビュー」が調査手法として注目されたことが影響していると考えられる． ところが，調査手法としての「オンラインインタビュー」が研究にどのような影響を及ぼしたかについて 9本の論文等では考察されていない．そればかりではなく「対面インタビュー」と「オンラインインタビュー」を混在させている論文等が散見されている． このような状況について大西は「質的アプローチを用いた調査面接の際にはオンライン型と対面型の間で等質性を担保する工夫が必要であり，特に併用については報告時にそれらにまつわる注記が望ましい」（大西 2021：65）と指摘している． そのため，現状では「オンラインインタビュー」はその特徴を明確にして研究に取り入れられたというよりもコロナ禍における「緊急避難的な措置」として行われたと言えるのではないだろうか． ６. 結論 「オンラインインタビュー」に対して，久保は「オンラインでの実施では，時は共有できても，「現地」で共に在ることはできない，もどかしさを抱えたままにある」(久保 2022：99)と指摘している． ICT（情報通信技術）を活用した「オンラインインタビュー」は，まだ初期の混乱期であると言えるが，この手法は今後も拡大してくであろう． そのためにも久保が指摘する課題を乗り越えていくことが必要である． 「オンラインインタビュー」は単なる「緊急避難的な措置」から脱し,「対面インタビュー」と異なる独立した調査手法として確立されることが望まれる． 注  注1) 対象誌の『社会福祉学』は査読誌であるため，査読過程を経ることで研究時期と掲載時期にタイムラグが生じるが，これによって新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の世界的流行前後の両方の状況をこの対象期間だけで把握することができる．  注2) そのため，予備研究の段階でインタビュー調査を実施した論文は含めていない．  注3) ここでいう，「オンラインの活用」とはインタビュー調査での「Zoom」「Teams」「Skype」などのビデオ会議システムの活用を指している．  参考文献 1）King Gary・Keohane Robert O.・Verba Sidney (1994) 『Designing social inquiry : scientific inference in qualitative research』，Princeton University Press.真渕 勝監訳 （2020） 『社会科学のリサーチ・デザイン : 定性的研究における科学的推論』，勁草書房．  2）北澤 毅・片桐 隆嗣・秋葉 昌樹・ほか (2011) 「第 3 章 質的調査技法と質的データの特質」 北澤 毅・古賀 正義編 『質的調査法を学ぶ人のために』 世界思想社, 37-59.  3）大隅 昇 (2022) 「4.5 インターネット調査」 林 知己夫編 『社会調査ハンドブック（復刊）』 朝倉書店, 200-240.  4）小松 洋 (2023) 「第6章 調査票調査の方法とデータ化作業」 大谷 信介・木下 栄二・後藤 範章・小松 洋編 『最新・社会調査へのアプローチ』 ミネルヴァ書房, 144-82.  5）鈴木 淳子 (2017) 『調査的面接の技法 [第 2 版]』，ナカニシヤ出版.  6）上野 千鶴子 (2018) 『情報生産者になる』，筑摩書房.  7）伊藤 智樹・三井 さよ (2023) 「第 5 章 インタビュー」 三井 さよ・三谷 はるよ・西川 知亨・工藤 保則編 『はじめての社会調査』 世界思想社.  8）田辺 俊介 (2023) 「社会調査とコロナ禍 : その影響とこれから」 『社会と調査』(30)，5-7.  9）大西 次郎 (2021) 「オンライン型と対面型インタビューの質的調査における方法論的相違 : 『社会福祉学』直近3年の研究動向とともに」 『地域ケアリング』 23(12)，64-70.  10）大西 次郎 (2022) 「オンライン型と対面型インタビューの質的調査における実施(選択/併用)の概況 : コロナ禍以降の『社会学評論』『社会福祉学』誌をもとに」 『地域ケアリング』 24(11)，102-7.   29  11）大西 次郎 (2023) 「オンライン型と対面型インタビューの質的調査における実施(選択/併用)の概況(第2報)コロナ禍以降の『社会福祉学』『ソーシャルワーク学会誌』『ソーシャルワーカー』『保健医療社会福祉研究』『医療と福祉』誌をもとに」 『地域ケアリング』 25(11)，62-6.  12）小山 宰 (2022) 「医療福祉生活協同組合におけるコ・プロダクションへの組合員参加のプロセスと参加を促進する働きかけ――グラウンデッド・セオリーによる分析から――」 『社会福祉学』 62(4)，86-100.  13）大塚 桃子 (2022) 「矯正施設を出所した障害者に対するソーシャルワーク実践の展開――地域生活定着支援センター職員へのインタビュー調査から――」 『社会福祉学』 63(2)，41-55.  14）戸石 輝・大西 次郎 (2023) 「医療ソーシャルワーカーが管理職として行う管理・マネジメントプロセスの解明――勤続年数 10 年以上の課長に対するインタビュー調査から――」 『社会福祉学』 64(1)，46-60.  15）五十嵐 雅浩 (2023) 「高齢者ケアにおける外国人就労者のための教育的支援の現状と課題――教育担当者への半構造化インタビューによる質的内容分析――」 『社会福祉学』 64(2)，56-71.  16）太田 健一・浅石 裕司・川口 真実 (2023) 「多世代で構成されたまちづくりを目的とする NPOの会員における活動継続要因の検討――世代ごとの活動継続要因と世代間の関係性に着目したグループインタビュー調査から――」 『社会福祉学』 64(3)，41-53.  17）伊藤 嘉余子 (2022) 「スコットランドにおける里親ソーシャルワークの価値と実践――里親支援ワーカーインタビューの分析からの考察――」 『社会福祉学』 63(1)，14-29.  18）安達 朗子 (2022) 「女性視覚障害者における複合差別の経験とその意味づけ――ある女性視覚障害者のライフストーリーの分析を通して――」 『社会福祉学』 63(1)，30-44.  19）亀山 裕樹 (2023) 「ケアをめぐる交渉において子どもが直面する制約の検討――A. Sen の協調的対立概念を用いて――」 『社会福祉学』 64(2)，1-13.  20）久保 美紀 (2022) 「ソーシャルワーク部門」 『社会福祉学』 63(3)，99-112.      30   

ソーシャルワーク研究における「オンラインインタビュー」活用の現状分析

大畑,智史

文化資源活用の視点からの関西広域連合への三重県の正式参加について－エックス税構想の意義－

奥田　友技子

戦略的人的資源管理論について－－Jay Barneyの所説の検討を中心に－－

田添　篤史

ギグワークの実態把握に向けて－－統計調査における課題の予備的検討－－

裏表紙

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