Eiichi Nagai

Emi Nakamata

Iori Arisue

Rumiko Maeda

Tadashi Nakano

Yuri Fujii

中俣 恵美

中野 禎

前田 留美子

有末 伊織

永井 栄一

藤井 有里

中俣, 恵美

ナカマタ, エミ

Nakamata, Emi

藤井, 有里

フジイ, ユリ

Fujii, Yuri

中野, 禎

ナカノ, タダシ

Nakano, Tadashi

永井, 栄一

ナガイ, エイイチ

Nagai, Eiichi

有末, 伊織

アリスエ, イオリ

Arisue, Iori

前田, 留美子

マエダ, ルミコ

Maeda, Rumiko

Kansai University of Welfare Sciences: Repository / 関西福祉科学大学リポジトリ

は じ め に作業療法士協会の「臨床実習の手引き」では、『臨床実習は、作業療法士養成施設で学習した知識と技術・技能および態度を臨床における作業療法体験により統合する課程である。学生は臨床実習指導者の指導のもとに、対象者の全体像を把握、作業療法計画、治療・指導・援助などを通して、作業療法士としての知識と技術・技能および態度を身につけ、保健・医療・福祉にかかわる専門職としての認識を高めるものである』1）と定義している。理学療法士協会でも同様な位置づけに臨床実習を置いている2）。このように、理学・作業療法士養成教育において、臨床実習は実際の理学・作業療法場面において学習することのできる非常に重要な教育プログラムである3）。現在、本学において、理学療法学専攻（以下、PT）では、2年次の見学・体験実習（計 2週間）、3年次の評価実習（4週間）［調査時点では 5週間］、4年次の総合臨床実習（13週間）［調査時点では 14週］を実施し、作業療法学専攻（以下、OT）では、2年次の体験実習（2週間）、3年次の評価実習（4週間）［調査時点では 5週間］、4年次の総合臨床実習（16週間）を実施している。これらの臨床実習は、各学年における実習を通して、学内で学習した知識・技能を統合し、臨床場面に適応するための療法士養成教育の集大成的教育プログラムである3）。小野崎ら4）は、臨床実習の意義を 3つの過渡期、すなわち①学生からプロとして治療を行う社会人へ、②教えられる立場から指導する立場へ、③机上の学問から臨床応用への転換の場であると定義しており、学生は理学・作業療法士として臨床に携わるために必要な様々な変革を求められる場としている。通常、臨床実習では、依頼病院・施設等の理学・作業療法士（臨床実習指導者）の監督下で行われ、養成校の教員は、実習期間中、臨床実習を円滑に進める目的で実習施設を訪問し学習の調整を行なうことが通例となっている3）。しかしながら、山根5）が指摘するように臨床実習指導者と養成校教員の役割分担が明確となっているとは言いがたく、訪問指導教員の権限の範囲も不明確なた〈調査報告〉理学・作業療法学臨床実習における専任教員による実習地訪問の実態調査中 俣 恵 美＊，藤 井 有 里＊＊， 中 野 禎＊＊永 井 栄 一＊，有 末 伊 織＊＊＊，前 田 留美子＊A survey examining how academic staff members work with instructors at training sitesin clinical practical training for the physical and occupational therapists’ studentsEmi Nakamata, Yuri Fujii, Tadashi Nakano,Eiichi Nagai, Iori Arisue and Rumiko Maeda要旨：学生気質の変容にともない臨床実習において教員が果たす役割の重要性が増している。本研究は、学生気質変容に伴い、臨床実習において教員が学生と臨床指導者との調整にかける実態を実習地訪問に要する時間という側面から明らかにすることを目的とした。方法は、本学理学療法学専攻、作業療法学専攻に属する専任教員 22名を対象に、調査票を用い臨床実習における実習地訪問に関する実習地訪問実態調査を実施した。その結果、専任教員は限られた時間の最大限を学生指導に費やし、その多くが時間外時間で実施している臨床実習地訪問である実態が明らかになった。────────────────────────────────────────────受付日 2020. 5. 21 ／ 掲載決定日 2020. 8. 7＊関西福祉科学大学 保健医療学部 准教授＊＊関西福祉科学大学 保健医療学部 講師＊＊＊関西福祉科学大学 保健医療学部 助教― １５ ―め、問題が生じた場合、教員としての専門的な役割の遂行に戸惑う場合も少なくないと指摘されている。一方、近年学生の気質の変容に関しては様々な分野で多くの報告がなされている。仙波6）の報告では、近年の学生気質の特徴を現代キーワードで表現すると、“デジタル的思考”“リセット可能な人生”“縦社会ではなく横社会”と述べている。そしてこれらキーワードに共通することは「論理的思考を要しない」ということで、「好きだからする、嫌いだからやらない」と考え行動し、「好きだけど、〇〇だから我慢する」「嫌いだけど〇〇だからやる」などという思考は希薄であり、面倒になったら単純にすぐ「リセット」してしまうという思考になると学生気質の特徴をまとめている。つまり、教員や先輩の言葉を傾聴し、自分なりに考え、その中から最適な対処方法を模索するような逐次対応的な行動パターンはなく、「気軽に気を遣わず」、「適当に」、「友達感覚」を好むととらえることができる6）。臨床実習では、これらの気質的特徴を持つ学生が、臨床実習指導者のもと、臨床という社会の中で前述した課題を実践することになる。当然、臨床場面に適応できない学生や、主体的に実習に取り組むことが困難な学生も多い。したがって、実習地訪問においての教員の調整が必要不可欠になってきている。このように学生気質の変容にともない臨床実習において教員が果たす役割の重要性が増しているにも関わらず、教員がどの程度実習地訪問に時間を割き、学生と臨床実習指導者との調整に苦渋しているかの実態を明らかにした調査報告はほとんどない。本研究の目的は、学生気質の変容に伴い、臨床実習において教員が学生と臨床指導者との調整にかける実態を、実習地訪問に要する時間という側面から明らかにすることである。これら実習地訪問の実態を明らかにできれば、それは臨床実習のあり方を問う基礎的な資料となり得ると考える。方 法1．対象対象は、PT、OT に属する専門教員 22名（PT 13名・OT 9名、男性 13名・女性 9名）である。2．調査期間2017年 4月から 9月に行われた理学療法臨床実習ⅢおよびⅣ（4月 10日～9月 16日のうち 14週）、作業療法臨床実習Ⅲ（4月 10日～8月 4日のうち 16週）3．調査方法実習地訪問実態調査は、調査票を用い臨床実習における実習地訪問に関する次の項目に費やす時間を聴取した。調査内容は、①移動時間、②指導時間、③時間外時間（17時以降の業務時間外での時間）、④時間外時間訪問件数である。分析は、専攻ごとの①から③までの合計時間（総実習指導時間）、教員あたり、施設あたり、1学生あたりにおける各調査内容の合計時間、および平均時間を算出し、記述統計で記載した。4．倫理的配慮対象となる教員には、調査内容を説明したうえ、回答の返信をもって同意とみなすことを伝え、これをもって同意を確認した。結 果PT の専門教員は 13名、OT は 9名であった。臨床実習対象学生数は、PT 83名、OT 28名で、1教員あたりの学生数の平均は PT 6.4名、OT 2.3名であった。それぞれの分析項目を以下に示す。1．合計（実習訪問件数と総実習指導時間）それぞれの専攻の集計結果を図 1に示す。PT の総訪問件数は 151件、OT は 77件、総時間外件数（時間外件数の合計）は、PT 128件、OT 68件、総移動時間（移動時間の合計）は PT 453.5時間、OT 158.0時間、総指導時間（指導時間合計）は、PT 197.0時間、OT 101.0時間、総時間外時間（時間外時間の合計）は、PT 347.5時間、OT 208.5時間であった。2．1教員あたりの平均値1教員あたりのそれぞれの専攻の平均を図 2に示す。1教員あたりの移動時間の平均は、PT 34.9時間、OT13.1時間。1教員あたりの指導時間の平均は、PT 15.2時間、OT 17.4時間。1教員あたりの時間外時間の平均は PT 26.7時間、OT 17.4時間であった。これを授業コマ数に換算すると PT 33.4コマ、OT 14.3コマで、PT 2単位、OT 1単位分に算出された。3．1施設あたりの平均値1施設あたりのそれぞれの専攻の平均を図 3に示す。1施設あたりの移動時間の平均は PT 3.0時間、OT 2.0時間。1施設当たりの指導時間の平均は PT 1.3時間、OT 1.3時間であった。関西福祉科学大学紀要第 24号（2020）― １６ ―図 1 合計（実習訪問件数と総実習指導時間）図 2 1施設当たりの平均値図 3 1教員あたりの平均値中俣恵美・藤井有里・中野 禎・永井栄一・有末伊織・前田留美子：理学・作業療法学臨床実習における専任教員による実習地訪問の実態調査― １７ ―4．1学生あたりの平均値1学生あたりのそれぞれの専攻の平均を図 4に示す。1学生あたりにかける時間（移動時間および指導時間）の平均は PT 6.6時間、OT 9.6時間。1学生あたりの時間外時間の平均は PT 1.5時間、OT 2.5時間であった。考 察本学では、PT の学生定員は 1学年 80名、OT の学生定員は 50名、教員数は PT 13名、OT 9名で 1教員あたりの学生数は PT がおおよそ 2倍である。当然ながら臨床実習を指導する担当学生数も PT が概ね 2倍である。そのため、実習地訪問における学生指導時間、移動時間ともに PT が OT よりも高値を示している。しかしながら、1学生あたりにかける時間は、PT に比べ OT の時間数が多くなっている。OT では実習で難渋する学生に対して複数回あるいは複数教員での実習訪問をしており、OT の学生数が少ないため 1学生あたりに十分な時間を割いて学生指導にあてることが可能となっている。これは、手厚い学生フォローをしているといえる反面、OT 学生において教員の支援を必要とする学生の割合が多いともとらえることができる。一方 PT は少ない教員数で多くの学生をフォローしており、授業単位に換算すると 1教員あたり概ね 2単位を費やしている。また、近年の実習地訪問では診療時間中の訪問が困難で、学生指導の時間は時間外時間で対応せざるを得ない状況がある。したがって、PT ではこれ以上時間を割いての学生指導は事実上困難であり、限られた時間の最大限を学生指導に費やし、その多くが時間外時間で実施している状況が見えてくる。理学・作業療法士の臨床実習は、実習学生が患者を受け持つ「症例担当型臨床実習」が長く展開されてきた。症例担当型臨床実習では、「指導者の承認を受けながら、実習生が患者を評価し、自ら目標設定し、治療プログラムを考えたうえで実際に診療を行う形式で実習が展開され、その経過などを症例レポートにまとめ、終了後に養成校に提出する」という成果物を主体とした実習指導ならびに成績評価が行われてきた7）。症例担当型臨床実習では、主体的な学生の実習への取り組みが基礎となり、指導者の時間をかけた丁寧な学生指導のうえに成立する。しかし、前述のような学生気質の変容に加え、学生の学力低下が指摘されている。また、指導者側も現在の診療報酬システムや病院の動向をみると、学生のためにゆっくりと時間をとる余裕はなく、「時間外時間」での学生指導が中心にならざるを得ない状況がある8）。これら学生および指導者を取り巻く現状を鑑みると、養成校教員が臨床実習において指導者と学生との調整にかかる時間はますます必要となるが、本結果を考えると、時間的にそれも限界に達している。つまり、現状の臨床実習のあり方を再考することが喫緊の課題と言っても過言ではない。そのような状況の中、あらたな臨床実習のあり方として、「診療参加型実習」や「クリニカルクラークシップ実習」が脚光を浴びている。2020年度入学生から適応予定となっている理学・作業療法士養成課程指定規則の改定においても「診療参加型実習」の実施が推奨された。医師や看護の臨床実習では、既にこれらのパラダイムシフトは完了しており、理学・作業療法士の養成分野でもこれらパラダイムシフトの必要性は言及されている。しかしながら、未だ実習形態の変更には至らず、成果物としてのレポート指導をどのようにするかに注視される傾向は否定できない7）。図 4 1学生あたりの平均値関西福祉科学大学紀要第 24号（2020）― １８ ―「症例担当型実習」から「診療参加型実習」や「クリニカルクラークシップ実習」に変革するためには、学生が臨床活動に参加することで学びを得るという臨床実習本来のあり方に立ち、学生にとって有益な実習の実践のために臨床実習のあり方を再考する必要があると考えられる。理学・作業療法士養成課程指定規則の改定では、臨床実習については、「1単位 40時間以上の実習をもって構成することとし、実習時間以外に行う学修（自己研鑚を除く）がある場合には、その時間も含め 45時間以内とすること」と実習生が臨床実習に費やす時間の規定が明確となった。これは実習時間外での課題が恒常的に与えられるなどにより、実習生の負担となっている事態が明らかになったことが背景にある。実習指導者として、実習生の心身の健康を守ることが役割として挙げられた。これを踏まえると、養成校としては実習時間内での実習生への課題提示やフィードバック等についてどのように行っていくのかを検討し、臨床実習施設に提示していくことが必要となる。また、「臨床実習において実習生が行うことのできる行為については、あらかじめ患者に同意を得た上で、臨床実習指導者の指導・監督の下、事前に養成校と臨床実習施設において心身の侵襲性がそれほど高くないと判断した行為について行うことができる」と明示され、さらに臨床実習前後の評価が必須化された。実習前に実技試験等による評価を行い、直接患者に接するに当たり、総合的知識及び基本的技能・態度を備えていることを確認し、その評価を踏まえた教育を臨床実習施設で行い、その判定を臨床実習後の評価等で行うことが望ましいとされている。実習前の評価においては、客観的臨床能力試験（Objective Clinical Examination ; OSCE）等により、安全確保の技能練習など可能な限り事前の準備を徹底することも求められている。以上のことより、今後ますます臨床実習施設との連携を強化するとともに、養成校、臨床実習施設両者とも従来の臨床実習教育方法から脱却することが必要である。また養成校は、各臨床実習の目標に応じた事前準備を十分に行うとともに個々の学生の状況をきちんと把握する。そして臨床実習施設は教育者としての視点を持ちながら具体的臨床場面を学生と共有するなど、それぞれの役割を果たしながら、協働して行くことが重要となる。謝辞本研究・調査にあたりご協力いただきました保健医療学部森禎章学部長はじめ先生方に深謝いたします。限界と課題本研究は、一養成校の理学・作業療法士の実習地訪問調査のデータを収集している。したがって、本結果を一般的な養成校の状況に置き換えることには慎重でなければならない。他校との共同調査等対象教員を増やした再検討が課題である。しかしながら、養成校教員の実習地訪問にかける労力を時間的側面から明らかにした調査報告は皆無であり、現状を示した本結果には一定の意義があると考えられる。引用文献１）日本作業療法士協会養成教育部編．作業療法臨床実習の手引き～第 4版～．http : //www.jaot.or.jp/wp­content/uploads/2012/08/rinshoujisshuVer.422203251.pdf２）日本理学療法士協会教育部編．臨床実習教育の手引き第5版．日本理学療法士協会．東京．2007３）太田篤志，清水一．作業療法臨床実習における教員の役割．広島大学保健学ジャーナル 1（2），90­93, 2001４）小野崎善夫，後滕雅之，鈴木圭介，川上純範．当院における 3年次作業療法臨床実習－指導のポイントと援助法－．作業療法ジャーナル 26（9），688­691, 1992５）山根寛．経験から学ぶ－臨床作業療法教育をめぐって作業療法の臨床モデルから．作業療法 19（5），409­412,2000６）仙波洋史・大学生の気質的変化と導入教育．浦和大学．浦和短期大学部浦和論叢 38, 121­142, 2008７）日高正已・一般社団法人日本リハビリテーション臨床教育研究会について．Jpn J Rehabil Med 54, 464­465, 2017８）佐藤彰鉱．いまなぜ，クリニカルクラークシップ実習なのか？ 青森県作業療法研究 24（1），5­15, 2016中俣恵美・藤井有里・中野 禎・永井栄一・有末伊織・前田留美子：理学・作業療法学臨床実習における専任教員による実習地訪問の実態調査― １９ ―

A survey examining how academic staff members work with instructors at training sites in clinical practical training for the physical and occupational therapists’ students

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リガク サギョウ リョウホウガク リンショウ ジッシュウ ニ オケル センニンキョウイン ニ ヨル ジッシュウチ ホウモン ノ ジッタイ チョウサ

リガクサギョウリョウホウガクリンショウジッシュウニオケルセンニンキョウインニヨルジッシュウチホウモンノジッタイチョウサ

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