京都大学0048新制・課程博士博士(医学)甲第22737号医博第4655号新制||医||1046(附属図書館)京都大学大学院医学研究科医学専攻(主査)教授 伊佐 正, 教授 林 康紀, 教授 髙折 晃史学位規則第4条第1項該当Doctor of Medical ScienceKyoto UniversityDFA

Hamatani, Mio

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Altered features of monocytes in adult onsetleukoencephalopathy with axonal spheroids andpigmented glia: A clue to the pathomechanism ofmicroglial dyshomeostasis( Abstract_要旨 )Hamatani, MioHamatani, Mio. Altered features of monocytes in adult onset leukoencephalopathy with axonal spheroids andpigmented glia: A clue to the pathomechanism of microglial dyshomeostasis. 京都大学, 2020, 博士(医学)2020-09-23https://doi.org/10.14989/doctor.k22737京都大学 博士（  医学  ） 氏 名 濱 谷 美 緒 論文題目 Altered features of monocytes in adult onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia: A clue to the pathomechanism of microglial dyshomeostasis.（神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症患者における末梢血単球の変化） （論文内容の要旨） 【背景】神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症（adult onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia; ALSP）は、成人発症の遺伝性白質脳症である。原因遺伝子 Colony stimulating factor 1 receptor（CSF1-R）は、単球系細胞の分化増殖に関わるMacrophage colony stimulating factor（M-CSF）の受容体である。このためALSP 病態にはミクログリアの関与が示唆されるが、詳細は未解明である。末梢血単球では同様に CSF1-R が重要な機能を担い、また一部の末梢血由来単球系細胞は脳内に浸潤し貪食や炎症に関与する。本研究では生体より採取した末梢血単球の機能解析を行い、ALSP 病態への関わりを検証する。 【方法】解析対象は CSF1-R 遺伝子変異を認めた ALSP 患者 4 名で、平均年齢は39±7.8 歳（SD）、いずれも本疾患に特徴的な脳 MRI 所見を呈した（Fig. 1）。最年少（26 歳）の最重篤例は、初期より運動症状を呈し、進行も早く、検体採取時の日常生活動作は寝たきりであった。mitochondrial alanyl-transfer RNA synthetase （AARS2）遺伝子変異をもち、ALSP と臨床的・神経画像的・病理学的 な 類 似 性 を 持 つ 成 人 発 症 進 行 性 白 質 脳 症 で あ る AARS2-related leukodystrophy（AARS2-L）患者 1 名を疾患対照群とし、年齢・性別を合致させた健常者群を加え、血液検体を採取した。CD14 陽性末梢血単球を単離し、フローサイトメトリーを用いて各解析を行った。表面分子は、M-CSF ならびにGranulocyte-macrophage colony stimulating factor（GM-CSF）で刺激した際の発現変化も解析した。また、細胞内染色によるサイトカイン産生と、蛍光色素標識ビーズを用いた貪食能の測定を行った。 【結果】ALSP 患者では non-classical subset の単球分画が減少していたが、最重篤例では増加していた（Fig. 2）。また ALSP 患者由来の単球では、ケモカイン受容体 CCR2 発現が亢進し、CX3CR1 も同様の傾向がみられ、接着因子 CD62L発現が亢進していた（Fig. 3A）。また ALSP 単球では抗原提示関連分子の CD86が高発現し、CD80 も同様の傾向であった（Fig. 3B）。一方 M-CSF・GM-CSF 刺激後の CD86、CD80 発現は健常者に比べ低かった（Fig. 3D）。ALSP 単球では、リポポリサッカライド（LPS）刺激時、腫瘍壊死因子産生が亢進し、インターロイキン 10 産生が低下していた（Fig. 4）。ALSP 単球では免疫グロブリン G（IgG）付着ビーズに対する貪食能の低下がみられた（Fig. 5A）。Fcγ受容体の CD64の発現は ALSP 群と健常群で差はなかった（Fig. 5B）。スカベンジャー受容体の CD163 発現は最重篤例を除き健常群に比して低下し、CD204 発現も同様であった（Fig. 5B）。AARS2-L 患者由来の単球では、多くの形質は健常者に類似していた（Table S1）。 【考察】ALSPでは、non-classical subsetは 3例では既報通り減少していたが、最重篤例ではむしろ増加していた。CCR2や CX3CR1は単球系細胞の中枢神経移動に重要であり、CX3CR1 は脳内のホメオスタシス維持も担う。これらの発現変化は、ALSP に見られる脳内でのミクログリアの分布異常や脳内環境の変化に関与しうる。CD62L は炎症部位への単球系細胞動員に重要で、ALSP 単球での発現亢進は中枢神経系の炎症の反映又は代償性変化と考えられる。CD80や CD86の恒常的な発現亢進と刺激への反応性不良は、ALSP での単球系細胞の持続的活性化を示唆する。ALSP 単球では LPS 刺激時サイトカイン分泌は炎症性にシフトし、感染等への反復暴露による炎症の蓄積が成人発症と発症後の比較的急速な進行をもたらす可能性がある。また ALSPでは単球系細胞の貪食能の変化が示唆される。最重篤例ではミクログリア上の分子発現が一部異なり、これらが ALSP病期に応じ変化するとの既報に合致する。類似した白質脳症である AARS2-L では単球は健常群に類似した形質を持ち、本研究でみられた単球の変化がALSP特異的であることを支持する。ALSPでは末梢血単球機能障害に伴う全身症状は呈さず、本研究結果と ALSP病態との関係については症例の蓄積と今後の研究を待つものであるが、本研究は ALSP病態解明への一歩となることが期待される。                             （論文審査の結果の要旨） 神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症（ALSP）は、成人発症の遺伝性白質脳症であり、原因遺伝子としてコロニー刺激因子 1 受容体（CSF1R）が同定された。ALSP 病態には CSF1R を発現する単球系細胞のミクログリアの関与が示唆されている。本研究では、同様に CSF1R を発現する末梢血単球の機能解析を行い、ALSP 病態への関わりを検証した。ALSP 患者 4 名より採取した単球では、non-classical 分画の変化、ケモカイン受容体や接着分子の発現亢進、抗原提示関連分子の発現制御異常、炎症性サイトカインの産生亢進と抗炎症性サイトカインの産生低下、免疫グロブリン G を介した貪食能の低下がみられた。一方、ミトコンドリアアラニル転移 RNA 合成酵素（AARS2）遺伝子変異をもち、ALSP と臨床的・神経画像的・病理学的に類似性した成人発症進行性白質脳症を呈する AARS2 関連白質ジストロフィー患者の単球では、健常者群と同様の傾向を認めた。これは、本研究でみられた単球の変化が ALSP 特異的であることを支持する。以上より ALSP において、ミクログリアを含む単球系細胞に前述の変化が生じ、これが中枢神経のホメオスタシス破綻を介して病態に関与する可能性が示唆された。  以上の研究はヒト生体における ALSP 単球系細胞の機能解明に貢献し、遺伝性白質脳症ALSP の病態解明に寄与するところが多い。   したがって、本論文は博士（ 医学 ）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、本学位授与申請者は、令和２年８月２７日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日：      年   月   日 以降 

神経軸索スフェロイド及び色素性グリアを伴う成人発症白質脳症患者における末梢血単球の変化

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