京都大学0048新制・課程博士博士(地球環境学)甲第22816号地環博第203号新制||地環||39(附属図書館)京都大学大学院地球環境学舎地球環境学専攻(主査)教授 西前 出, 教授 柴田 昌三, 准教授 落合 知帆学位規則第4条第1項該当Doctor of Global Environmental StudiesKyoto UniversityDFA

NGUYEN, THI HONG

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Exploring Potential Utilities of Forest Ecosystem Servicesand Local Resources Towards Livelihood Improvement-The Case of Bach Ma National Park and its Buffer Zones inVietnam( Abstract_要旨 )NGUYEN, THI HONGNGUYEN, THI HONG. Exploring Potential Utilities of Forest Ecosystem Services and Local Resources Towards LivelihoodImprovement- The Case of Bach Ma National Park and its Buffer Zones in Vietnam. 京都大学, 2020, 博士(地球環境学)2020-09-23https://doi.org/10.14989/doctor.k22816学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により本文は2021-09-30に公開;Preliminary Assessment of Nature-Based Tourism Resources in the Buffer Zone of BachMa National Park, Vietnam, ISSN 2433-3700 (Online), International Society ofEnvironmental and Rural Development, IJERD Volume 10 Number 1 June 2019.（ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（地球環境学） 氏名 Nguyen Thi Hong 論文題目 Exploring Potential Utilities of Forest Ecosystem Services and Local Resources Towards Livelihood Improvement -The Case of Bach Ma National Park and its Buffer Zones in Vietnam （森林生態系サービスと地域資源の生業改善に資する潜在的有用性の検討－ベトナム・バックマー国立公園とその緩衝地域における事例） （論文内容の要旨） 途上国の多くでは，都市部の経済発展に対して，農村部では自然資源が収奪され，そこに住む人々の貧困が課題となっている。森林地域に住む人々は，様々な森林資源を生活に必要な資源として活用しており，森林依存度が高まるとともに，過剰な採取が森林における生態系に悪影響を及ぼし，さらには生物多様性の低下が課題として浮き彫りとなっている。本研究の対象地域であるベトナム，バックマー国立公園とその緩衝地域では，政府による森林保全の方策が施されている一方で，経済的には貧困層に区分されている多くの少数民族が定住しており，彼らの生業改善と貧困解消が課題となっている。 本論文は，現地調査によって収集した一次データの解析から得られる情報により，当該地域における森林生態系サービス（森林から得られる生活に有用な資源と本研究では定義）と地域資源が持つ，生業改善に資する潜在的有用性を検討し，これらを活用した住民の生活向上のための提言を行ったものであり，７章からなっている。 第１章は，序論であり，森林資源への依存と貧困の関係，および森林の適切な管理に関する背景をまとめた上で森林生態系サービスと地域資源の定義を明確化し，本論文の枠組み，研究の目的を述べている。 第２章は，既往研究のレビューであり，生態系サービス，森林保全地域，緩衝地域における様々な地域環境問題を紹介し，その解決策として代表的なツーリズムを導入することの様々な利点を解説している。本研究対象地域のある中部ベトナムにおいても多くの地域で実際に住民の貧困解決に貢献してきたツーリズム導入の事例を概説している。 第３章では，バックマー国立公園とその緩衝地域の概要を紹介した上で，研究に用いた手法として，参加型マッピング，地理情報システムによる多基準決定分析，インタビュー調査の方法を概説している。 第４章では，参加型マッピングによって，住民が収集している森林生態系サービスの種類，量，場所，利用目的を明確化している。その結果，１５種類の森林生態系サービスが彼らの生活に利用するために収集されており，その多くは山間部の少数民族によるものであること，これらは家族の生活のために利用されているケースが多いこと，村や主要道路に近いといったアクセス条件を持つ生産林において多くの収集が行われていることを明らかにした。 第５章では，緩衝地域内に位置する６つの村の６４世帯へ，収集している森林生態系サービスの種類，収集・活用の方法について聞き取り調査を実施した結果を示している。また，収集している森林生態系サービスの金銭的価値を市場価格の調査を通じて算出し，その他の収入に比して，最も大きいことを示し，かつ，全世帯において収集が行われていること，ベトナムの他地域における依存度に比べて，より高い依存状況になっていることを明らかにしている。 第６章では，３０名の地域マネージャーとのグループデイスカッションを６回開催し，かつ１５８名への地域住民へのインタビューを実施した結果に基づいて，「生業改善に資する地域資源」を明確化している。自然的，または文化的資源として価値はあるものの，十分には活用されていない地域資源を掘り起こし，それらがどのような主体によって維持されてきたかを明示している。 第７章は，結論であり，各章で示された主要な成果をまとめ，生業改善のための１つの方策としてツーリズムを導入することを提案しており，本論文の意義を総括している。   （ 続紙 ２ ） （論文審査の結果の要旨） 途上国では，都市部に住む人々は生活が豊かになり，自然との距離が徐々に離れていく中で，農村部では自然資源に強く依存した生活を行っている貧困層の人々が多く暮らしている。ベトナム中部では森林資源に依存している人々の生活基盤の脆弱さは，解決すべき課題として長らく指摘されてきた。住民による森林資源の過剰な収奪は森林生態系に影響を及ぼすため，森林保全と共に住民の生活向上を成し遂げるための方策がこれまで試行錯誤されてきたが，未だに明確な解決方法は確立されていない。近年は近隣の都市部の開発が進み，貨幣経済の価値観が農村部にも浸潤しつつあるものの，経済的に大きな利潤を生みだす生業が農村部に存在しないため，都市と農村の格差は徐々に拡大している現状にある。 こうした背景の中，本論文は，ベトナム中部に位置するバックマー国立公園とその緩衝地域における住民の森林依存の状況を調べ，彼らの生業改善に資する森林資源・地域資源の潜在的有用性を検証したものである。精緻な現地調査を通じて研究を行っており，主たる成果は以下の通りである。 第一に，国立公園の緩衝地域において，森林資源の利活用の状況等（種類，量，場所，利用目的）を聞き取り調査で把握し，地理情報システムで地図化している。緩衝地域における住民と森林資源利活用を定量的に示した研究は過去にほぼ例がなく，その実態調査で得られた一次データ自体の価値は高く，今後の森林保全政策にも貴重な情報を提供しうるものであり，地域資源管理の観点から大きな貢献を行っている。 第二に，現地調査を通じて森林資源に大きく依存している地域とその地域の文脈を明確にし，主に少数民族が住む山間部では収入あるいは生活基盤の多くを森林資源に強く依存していることを明らかにした。ベトナム政府による少数民族の貧困問題に対する支援の在り方に貴重な情報を提供するものであり，実用的な成果を挙げている。 第三に，対象地域に脈々と受け継がれている地域資源の潜在的価値を再評価し，生業改善の一つの方法としてツーリズム導入の可能性を指摘している。現地の将来的な生活向上に資する具体的な提言がなされており，問題解決に資する研究として意義のあるものである。 以上のように本論文は，ベトナム，バックマー国立公園およびその緩衝地域における精緻なフィールド調査を通じて，住民の生業改善に資する森林生態系サービスと地域資源の潜在的有用性を明示し，これらを有効に活用したツーリズム導入による課題解決の可能性を示唆している。アジアの多くの大都市にみられる急速な都市化によって，喫緊の課題となっている農村部における自然資源の保全と住民の生活向上の実現について，適用可能な枠組みと知見を提供しており，地域計画学，地球環境学に寄与するところが大きい。よって本論文は博士（地球環境学）の学位論文として価値あるものと認める。また，令和２年８月３日，論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果，合格と認めた。 なお，本論文は，京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し，公表に際しては，当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  要旨公開可能日：  令和２年 ９月２３日以降 

森林生態系サービスと地域資源の生業改善に資する潜在的有用性の検討-ベトナム・バックマー国立公園とその緩衝地域における事例

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/259084/1/ytikk00203.pdf

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