京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第22773号工博第4772号新制||工||1746(附属図書館)京都大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻(主査)教授 岩井 裕, 教授 吉田 英生, 教授 江口 浩一学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Sugihara, Shinichi

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RIGHT:URL:CITATION:AUTHOR(S):ISSUE DATE:TITLE:Experimental Study of a Direct InternalReforming Solid Oxide Fuel Cell：ThermalEffects of Steam-Methane ReformingReactions( Abstract_要旨 )Sugihara, ShinichiSugihara, Shinichi. Experimental Study of a Direct Internal Reforming Solid Oxide Fuel Cell：Thermal Effects of Steam-Methane Reforming Reactions. 京都大学, 2020, 博士(工学)2020-09-23https://doi.org/10.14989/doctor.k22773許諾条件により本文は2021-03-31に公開 1  京都大学 博士（工学） 氏名 杉 原 真 一 論文題目 Experimental Study of a Direct Internal Reforming Solid Oxide Fuel Cell: Thermal Effects of Steam-Methane Reforming Reactions （直接内部改質式固体酸化物形燃料電池の実験的研究：メタン水蒸気改質反応の熱的影響） （論文内容の要旨） 本論文は、直接内部改質を伴う固体酸化物形燃料電池（ Solid Oxide Fuel Cell: SOFC）において、発電反応で生じる熱を吸熱反応である改質に有効利用し、あわせてセルの熱的制御を実現するための基礎的知見を得ることを目的としている。 SOFC の典型的な燃料極であるニッケル-イットリア安定化ジルコニア（Ni-YSZ）多孔質体を触媒として用いた基礎実験により改質反応速度を定式化したうえで、発電反応による発熱と改質反応による吸熱が単セルの局所温度分布およびその過渡変化に与える影響を、特殊なセルホルダーを用いた実験で明らかにしている。さらに 10 セルで構成されるスタックでの実験を実施し単セル実験の結果と比較することで、両者の相違を明らかにしている。本論文は６章から構成される。 第１章は序論であり、高効率な発電装置として期待される SOFC について主に熱管理の面から概説したうえで、炭化水素系燃料の直接内部改質に伴う吸熱をセルの熱制御に積極的に利用することの意義を説明している。  第２章では、Ni-YSZ 多孔質体の小片を試験触媒とし、発電反応のない状態で、メタン水蒸気改質の基礎実験を行っている。650℃から 750℃の中低温域において供給ガスである加湿メタンの組成を種々に変更し、排出ガス組成を詳細に分析することでメタンおよび水蒸気の分圧が改質反応に与える影響を明らかにしている。試験触媒の多孔質微構造を、収束イオンビームを備えた電子顕微鏡で観察・定量化し、得られた構造データと改質反応実験の結果とをあわせることで、Ni-空隙の単位接触面積当たりの改質反応速度を Power-law 型の速度式として定式化している。さらに、試験触媒とは異なる微構造をもつ Ni-YSZ 多孔質体を用いて検証実験を実施している。その結果、触媒の微構造データが与えられれば、上記の反応速度式と組み合わせることで、反応率などの触媒性能を良好に予測できることを明らかにしている。 第３章では、商用に開発された燃料極支持型の平板単セルを対象に、観察窓を有する特殊なセルホルダーと赤外線熱画像装置を用いて、セルの局所温度の分布を計測する方法を確立し、メタンと水蒸気を含む模擬燃料のガス組成あるいは電流密度が定常温度場に与える影響を、燃料と空気が並行流である場合と対向流である場合のそれぞれについて明らかにしている。その結果、並行流と対向流ともに、発電や内部改質に伴う温度変化が燃料入口付近でより顕著に見られること、発電反応と直接内部改質反応が同時に進行する場合には、改質反応がない場合に比してセル平均温度の上昇が抑制されるのみならず温度分布も影響を受けることを明らかにしている。特にセル面内の温度均一化の観点で並行流と対向流を比較すると、本研究の範囲内では対向流の方が優位であることを明らかにしている。これは改質反応をセルの温度分布制御に利用できることを示している。 第４章では、第３章と同じ実験装置を用いてセル温度の過渡特性を明らかにしている。設定した初期条件においていったん定常状態を実現したのちに、電流密度あるいは供給ガス組成をステップ的に変更し、セル局所温度の過渡応答を赤外線熱画像装置で観察・測定している。その結果、局所温度の時間変化の時定数は流れ方向に一様で 2 京都大学 博士（工学） 氏名 杉 原 真 一 はなく、燃料流の上流側から下流側へ向かって増大することを明らかにしている。また、電流密度の変化に対する時定数と、供給ガス組成すなわち直接内部改質の反応量の変化に対する時定数とでは、その大きさに顕著な違いがあり、設定した条件範囲内では後者の方が前者の 2 倍近く大きいことを明らかにしている。さらに、実験のテストセクション部に対応する熱回路網モデルを用いた数値解析を実施し補遺にまとめている。その結果、局所時定数の非一様は、セル面内方向の熱伝導抵抗が大きいことと、燃料流の上流域において発電・改質反応が活発に生じることに伴い吸発熱がその領域に集中することとの、複合効果であることを明らかにしている。 第５章では、第３章および第４章で使用した単セルと同等のセルを用い、商用機を模擬した 10 セルで構成されるスタックにおいて、積層方向の 5 層目のセルと 6 層目のセルの間に 9 本の熱電対を挿入し、セル面内方向の定常温度分布の計測と、発電条件をステップ的に変更した場合の局所温度の過渡応答の計測を実施している。その結果、セル面内温度分布の様相は第３章および第４章の単セル実験の結果とは異なるものの、実験の範囲内においては、10 層スタック内の方が温度勾配の最大値は小さくなることを明らかにしている。  第６章は結論であり、本論文の結果についてまとめ、考えられる今後の展開を提案している。  3   氏 名 杉 原 真 一 （論文審査の結果の要旨） 本論文は、直接内部改質を伴う固体酸化物形燃料電池（ Solid Oxide Fuel Cell: SOFC）において、発電反応で生じる熱を吸熱反応である改質に有効利用し、あわせてセルの熱的制御を実現することを目的としたものである。SOFC の典型的な燃料極であるニッケル-イットリア安定化ジルコニア（ Ni-YSZ）多孔質を触媒として用いた基礎実験により改質反応速度を定式化したうえで、発電反応による発熱と改質反応による吸熱がセルの局所温度分布およびその過渡変化に与える影響を、主に実験的手法により明らかにした。得られた主な成果は次のとおりである。 １． Ni-YSZ 触媒におけるメタン水蒸気改質反応速度を、多孔質微構造に基づいて定式化した。Ni-YSZ 多孔質体の小片を触媒とし、 650℃から 750℃の中低温域において供給ガスである加湿メタンの組成を種々に変更した改質反応実験を実施した。触媒微構造はイオンビームを備えた電子顕微鏡で観察・定量化し、得られた微構造データと改質反応実験の結果とをあわせることで、 Ni-空隙の単位接触面積当たりの改質反応速度を Power-law 型の速度式として定式化した。 ２． 燃料極支持型の平板単セルを対象に、観察窓を有する特殊なセルホルダーと赤外線熱画像装置を用いて、セルの局所温度の分布を計測する方法を確立し、供給ガス組成、電流密度などが定常温度場に与える影響を明らかにした。発電反応と直接内部改質反応が同時に進行する場合には、改質反応がない場合に比してセル平均温度の上昇が抑制されるのみならず温度分布も影響を受けることを明らかにし、改質反応をセルの温度分布制御に利用できることを示した。また、電流密度あるいは供給ガス組成がステップ的に変化した場合のセル局所温度の過渡応答を測定し、その時定数が流れ方向に一様ではなく燃料流の上流から下流へ向かって増大することを明らかにした。さらに、熱回路網モデルによる数値解析を実施し、局所時定数の非一様は、セル面内方向の熱伝導抵抗が大きいことと、燃料流の上流域において発電・改質反応が活発に生じることに伴い吸発熱がその領域に集中することとの、複合効果であることを明らかにした。 ３． 商用機を模擬した 10 セルで構成されるスタックにおいて、中央付近に設置されたセルを対象に、9 本の熱電対によるセル面内方向の温度分布計測を実施した。本実験の範囲内においては、セルホルダーを用いた単セル実験で得られた結果と比較し、10 層スタック内の方が温度勾配の最大値は小さくなることを明らかにした。 本論文は、以上のように、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和２年８月６日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行って、申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。   

直接内部改質式固体酸化物形燃料電池の実験的研究：メタン水蒸気改質反応の熱的影響

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直接内部改質式固体酸化物形燃料電池の実験的研究：メタン水蒸気改質反応の熱的影響

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