Tomokazu Onishi

オオニシ トモカズ

大西 智和

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オオニシ, トモカズ

大西, 智和

Onishi, Tomokazu

The International University of Kagoshima Repository System

日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート調査による資料館活性化の方向性の検討大西智和＊1． はじめに筆者は現在， 日置市との包括連携協定に基づく連携事業への取り組みの一環として， 日置市吹上歴史民俗資料館の活性化をとおして，地域振興・観光振興への寄与を目指した研究を進めている。2018年度には吹上歴史民俗資料館の現状の観察や展示．所蔵されている資料調査を行うとともに，吹上歴史民俗資料館の活性化に役立てる目的で， アンケート調査を実施した。本稿ではアンケート調査の結果および， そこから得られた指針について述べたい。2． 日置市吹上歴史民俗資料館について日置市吹上歴史民俗資料館は日置市吹上町中原2568番地に所在する。旧吹上町の施設として昭和57(1982)年に開館し，平成17(2005)年の合併による日置市の誕生以後は， 日置市吹上歴史民俗資料館として現在に至っている。 『かごしまミュージアムガイド』によると， 「吹上町の歴史と民俗について，実物資料を中心に展示。歴史部門では， 旧石器時代から近・現代までの，吹上町の歴史を概観できる。力を入れているのは，戦国島津氏の基礎をつくった伊作島津氏10代領主忠良（日新公）に関係する展示。民俗部門は町内で使われていた民具や，町内の祭りに関する展示」と紹介されている'。入口側から向かって右側に歴史系の展示が，左側には主として民俗系の展示が行われている。収蔵されている資料も古文書や考古資料などがたいへん充実しているが， 開館日時は平日の9時から16時30分であり，土曜日や日曜日および祝日は原則開館していない。また，館員は常駐しておらず，観覧希望の際は連絡して開けてもらう必要がある。入館料は有料で，大人100円，小・中・高生50円である。なお，本資料館の概要と課題については常田和彦氏が述べているので参照されたい2。S. アンケート調査についてアンケート調査は2018年11月25日に日置市伊集院文化会館で実施した。この日文化会館で行われた明治維新150周年記念事業「おじゃったもんせ！ひおき明治維新博」記念講演会， 「小松帯刀と明治維新一大政奉還を中心に－」 （講師桐野作人氏)，および企画展3への来場者にアンケート用紙を配布し，協力をお願キーワード：資料館，博物館，文化財，活性化， アンケート調査*本学国際文化学部教授l 鹿児島県博物館協会2015『かごしまミュージアムガイド」2 常田和彦2018「吹上歴史民俗資料館の活用と課題について」 『鹿児島国際大学ミュージアム調査研究報告」第15集3 企画展はll月23日から25日まで開催きれた。-61-地域総合研究第47巻第1号(2019年）表1 居住地域と来館経験の有無 表2 日置市内の居住地域と来館経験の有無来館経験有来館経験無計 来館経験有来館経験無計日置市内市外（鹿児島県内）市外（鹿児島県外）院来集市吉上伊東日吹羽４週１別５１岬岨１銘Ⅳ２蛆０３８胡４略９計 27 60 87計 21 47 68表4年齢層と来館の有無表3性別と来館経験の有無来館経験有 来館経験無 計来館経験有 来館経験無 計満歳歳歳上未釣弱乃以歳一一一歳０００００２２４６８男性女性００９銘３００Ⅲ師６略９35255334００５岨３計 27 60 87計 8727 60いした。300枚の配布に対して， 91枚の回答をいただいた。回答者の居住地は日置市内が最も多く，有効な回答90枚中, 71枚を占め，率にすると78%となる。なお，設問によっては無回答など，欠損するデータが含まれている。実施したアンケートの全文は末尾に「資料」として掲載した。4． アンケート調査の結果4.1 来館の経験の有無と居住地との関係来館の経験の有無と居住地との関係の結果は表1のとおりである。日置市内居住者の来館経験は68名中21名で，率にすると30.9%となる。いつぽう， 日置市外居住者の来館経験は19名中6名で，率にすると31.6%となり， ほとんど変わらない。来館経験者の比率が30％を超えているが， これは高い値といえるかもしれない。その理由として，資料館に関するアンケートのため，博物館に関心のある層からの回答が高かった可能性がある。また， アンケートの調査対象とした「おじゃったもんせ！ひおき明治維新博」のイベントに来場した人々は， 「歴史」への興味・関心が強く，その結果歴史系の資料館である，吹上歴史民俗資料館への来館経験者が多く含まれることになった可能性が考えられる。なお， 日置市の居住者については，居住地区（伊集院・東市来・日吉・吹上） も尋ねた（表2)。居住地が伊集院地域の回答者が多いが， これはイベントの会場が伊集院地域であることに加えて，伊集院地域の人口が最も多いことも関係しているのであろう4．表2によると，伊集院・東市来・日吉地域の居住者は59名中13名が来館経験ありと回答した。率にすると22％である。いつぽう吹上地区の居住者は9名中8名（率にして88.9%）が来館経験ありと回答し， 日置市の居住者であっても居住地域によって来館経験の有無にかなり差異のあることがわかる。4.2来館経験の有無と性別・年齢層性別と来館経験の有無は表3，年齢層と来館の有無は表4のとおりである。ちなみに，回答者の男女比は4 平成27年の人口は，伊集院地域が24,593人，東市来地域が11,704人． 日吉地域が8,034人，吹上地域が8,034人である（日置市総務企画部企画課2019I2018 日置市の統計｣）－62－日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート調査による資料館活性化の方向性の検討表5資料館にまた行きたいかどうか 表6来館未経験の理由人数 理由 人数また行きたい行きたくない無回答知らなかった遠いから興味がないからその他Ⅳ１９謎６２６計 37計 48男性60％，女性40％だった。来館経験のある男性の率は34％，来館経験のある女性の率は26.5％であり，来館経験の率は男性の方が若干高いことがわかる。表4によると回答者の年齢層はほとんどが40歳以上，最も多いのが60～79歳で， 20歳未満， 20～39歳未満の回答は無かった。会場で観察した印象ではあるが， 当日の会場への来場者に若年層の姿はほとんど見られなかった。したがって，来場者とアンケート回答者の年齢層はおおよそ同様であると思われる。その場合， アンケートへの回答者の年齢層は， 「歴史」に関心がある年齢層を示していると読み取ることができるかもしれない。なお，本アンケートでは来館の時期は問うていないため，来館時期とアンケート回答時期にはかなり時間差がある，つまり， この結果は必ずしも来館者の年齢層を示しているとは限らないことに留意する必要がある。4.3来館した際の印象について43から4.8の項目は記述式の問いもしくは記述式を含む問いである。必要に応じて表現を若干変更したものや，回答を分割したもの， 回答が設問に， より適するように項目を移動したものもある。印象として「貴重な資料があり，改めて歴史の深ざを感じた｣， 「興味があるものがあると思った」「細かな資料等，丁寧に展示されていた｣， 「よい資料がさりげなく展示されていた｣， 「本物の資料が展示してあり，すばらしい資料館ではある｣， 「資料が沢山あってよかった｣， 「日新公，島津義弘のことがよくわかった｣， 「資料が整い，伊作島津家に興味を持つ機会を与えてくれた｣， 「説明をしてくださる方が丁寧でよかった」などの，好意的な印象が多く見られた。いつぽう「展示スペースが狭く， きゅう<つな感じがした」 （同様の意見複数あり)， 「記憶に残る物がなかった｣， 「内容がよくわからない｣， 「全体的に暗い感じがした｣， 「地味である｣， 「来館者が少なく寂しい感じがした」といった改善を要望する回答もあった。4.4 また行ってみたいかどうかおよびその理由結果は表5のとおりである。回答者の多くは， また行ってみたいと考えていることがわかる。しかし，来館経験者でこの項目への無回答者が， 9名（率にして24.3％）あったことは留意しておく必要がある。再来館希望の理由としては， 「時間をかけてゆっくり見学したい」が複数， 「何回も行かないと覚えられないし，理解できないので，何回でも行きたい｣， 「興味のある資料が多いから｣， 「知識を広め確固たるものにするため｣， 「自分が住む地域の歴史をふりかえるため」などがある。また， 「展示が変わったら」という条件付きの再来館希望理由も見られた。4.5来館したことのない理由について結果は表6のとおりである。資料館があるのを知らないという回答が最も多かった。－63－地域総合研究第47巻第1号(2019年）表7資料館内にあると良い設備設備 件数休憩スペース体験コーナーミュージアムショップ喫茶店特産品売り場観光案内所その他ｕ８６ｕｕＭ１計 634.6見たい展示「日置市全体の展示」 （複数あり)， 「島津氏と日置とのかかわり」 （島津忠良，伊作島津家に関する展示など複数あり)， 「寺･宗教の歴史（多宝寺跡，常楽院，西福寺跡，天昌寺跡，海蔵院跡など)｣， 「有馬新七，小松帯刀に関する資料｣， 「西郷隆盛に関する資料｣， 「旧吹上町長の足跡｣， 「タッチパネル等による吹上の歴史説明コーナー｣， 「昔の道具を使った体験コーナー（実際の脱穀をしたり，粉をひいたりする)」などがある。とくにこの地域にゆかりのある日新公（島津忠良）に関する展示の希望が多かった。また，体験やタッチパネル式の解説など展示の内容に関する要望も見られた。4.7資料館内にあると良い施設この設問には来館経験者のほか，来館未経験者からの回答があり，複数回答も含む。その結果は表7のとおりである。観光案内所が最も多く，休憩スペース，喫茶店，特産品売り場が続いたものの， それ以外の項目も決して少ない回答数とはいえない。その他として， 「読書ができる閲覧スペース」が挙げられている。4.8資料館についての意見や要望「案内板や宣伝によって周知を図る必要性｣， 「企画展や展示品の更新を行ってほしい｣， 「触れる資料の展示｣， 「土日祝日に開館してほしい｣， 「歴史学習の場としての活用｣， 「関連資料が示されたウェブサイトの整備｣， 「伊作の歴史，明治維新などに関する講演会を開いてほしい｣， 「歴史をテーマにしたまち歩きの開催｣， 「日新公（島津忠良）の業績をもっとPRしてほしい｣， 「伊作島津氏発祥の地ということを広く知ってもらえるようにしてほしい｣， 「日置市の各地域（4つの地域）に資料館があれば良い」など，資料館を知ってもらう必要性や資料館の展示・運営に関する要望などが挙げられている。5． まとめアンケートの結果を紹介してきたが，回答からは吹上歴史民俗資料館の活性化につなげることができると思われる点が種々含まれると考えられるので，以下で論じたい。4.1で述べたように， 日置市内居住者の来館経験の比率が地域によってかなり異なっていた。つまり吹上地域の比率が高いのに対し，その他の地域は低かった。また，4.5でみたように来館未経験の理由として，資料館の存在が認知されていないことが大きかった。これらのことから，吹上地域以外の日置市居住者に対して資料館の周知を図ることが，資料館の活性化にとってまずは必要であろう。しかし，現在の資料館の展示は吹上地域の資料が中心である。4.6の回答にも見られるように， 日置市全体の展示を考盧する必－64－日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート調査による資料館活性化の方向性の検討要があるのかもしれない。42からは，女性や若年層へのアピールの必要性が読み取れる。ただし，見方によっては， 「男性｣， 「40歳以上の年齢層」は，資料館に来館してくれる傾向が高い層とも捉えられる。この層にアピールするような方針の策定は，資料館の活性化のために有効だと思われる。4.3の結果も参考になる回答が多い。本物で貴重な資料が多いといった好意的な指摘をさらに活かし，改善が望まれる回答や， 4.8で寄せられた意見や要望に配慮することによって，資料館の魅力をさらに増すことができるはずである。4.6では， 日置市に関わる島津家とくに島津忠良や，幕末の志士に関する展示の希望が多かった。関心の高いテーマの展示が，資料館の活性化につながることは確かであり，考慮すべきであろう。4.7からは，資料館に対して，観光に関する設備， ゆっくりと過ごすことができる機能が求められていると言えるかもしれない。前者に関しては，来館者を日置市内や吹上地域の史跡や遺跡につなぐような展示を行うことも一つの方法であると考えている。後者については4.4の回答にも， ゆっくりと時間をかけて観覧したいという意見複数あることから，滞在時間を延ばしてもらえるような施設の設置が有効と考えられる。本アンケート調査は対象者や回答者に偏りが見られ，必ずしも広い意見を汲み取れていないかもしれない。しかし，いただいた回答は，資料館活性化のための手がかりに富むものと考えている。今後はさらに，本資料館が保管する資料と資料館の施設およびアンケート調査の結果を考慮しつつ，本資料館活性化のための研究を進めたい。謝辞本研究は平成30年度鹿児島国際大学附置地域総合研究所共同研究プロジェクトの助成を受けて実施したものである。アンケート調査に協力いただいた皆様に深く御礼申し上げます。吹上歴史民俗資料館の現状調査では日置市教育振興課社会教育係（当時）の常田和彦氏に，また，アンケート調査の実施および集計に際しては，日置市教育委員会社会教育課文化係の瀧川哲哉氏にたいへんお世話になりました。心より感謝申し上げます。－65－陸建議咋翠期珊令腓識』叩（ｇ邑扮）囲 團日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート 日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート鹿児島国際大学の「包括連携協定に基づく日憧市との連携事業」の一環として、 「日置市吹上歴史民俗資料館の活性化のための取り組み」を行っています。このアンケートの結果はその取り組みのための参考にさせていただきます。アンケートへのご協力、どうぞよろしくお願いいたします。なお、 日置市吹上歴史民俗資料館は「吹上町の歴史と民俗について、実物資料を中心に展示。歴史部門では、 lﾛ石器時代から近・現代までの、吹上町の歴史を概観できる。力を入れているのは、戦国島津氏の基礎をつくった伊作島津氏10代領主忠良（日新公）に関係する展示。民俗部門は町内で使われていた民具や、町内の祭りに関する展示」 （鹿児島県博物館協会『かごしまミュージアムガイド』より）を行っている施設です。鹿児島国際大学の「包括連携協定に基づく日置市との連携事業」の一環として、 「日置市吹上歴史民俗資料館の活性化のための取り組み」を行っています。このアンケートの結果はその取り組みのための参考にさせていただきます。アンケートへのご協力、どうぞよろしくお願いいたします。なお、 日置市吹上歴史民俗資料館は「吹上町の歴史と民俗について、実物資料を中心に展示。歴史部門では、 lﾛ石器時代から近・現代までの、吹上町の歴史を概観できる。力を入れているのは、戦国島津氏の基礎をつくった伊作島津氏10代領主忠良（日新公）に関係する展示。民俗部門は町内で使われていた民具や、町内の祭りに関する展示」 （鹿児島県博物館協会『かごしまミュージアムガイド』より）を行っている施設です。問1本日の会場へはどこからおいででしょうか。該当する番号に○を付け（ ）内も記入ください。1 日置市→ （ ）町2 日置市以外一 （ ）都・道・府・県（ ）市・町・村問1本日の会場へはどこからおいででしょうか。該当する番号に○を付け（ ）内も記入ください。1 日置市→ （ ）町2 日置市以外→ （ ）都・道・府・県（ ）市・町・村性別をお教えください。該当する番号に○をお付けください。男性女性２１２問 ２１２問 性別をお教えください。該当する番号に○をお付けください。男性女性ｌまＩおおよその年齢をお教えください。該当する番号に○をお付けください。20歳未満20～39歳40～59歳60～79歳80歳以上３１２３４５問 ３１２３４５問 おおよその年齢をお教えください。該当する番号に○をお付けください。20歳未満20～39歳40～59歳60～79歳80歳以上間4 日置市吹上歴史民俗資料館に行ったことがありますか。該当する番号に○をお付けください。1行ったことがある（問5．問6へ）2行ったことはない（問7へ）問4 日置市吹上歴史民俗資料館に行ったことがありますか。該当する番号に○をお付けください。1行ったことがある（問5．問6へ）2行ったことはない（問7へ）問5その時の印象をお教えください。 問5その時の印象をお教えください。

Examination on revitalization of Fukiage Museum of History and Folklore in Hioki city by the questionnaire results

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日置市吹上歴史民俗資料館に関するアンケート調査による資料館活性化の方向性の検討

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