京都大学0048新制・課程博士博士(農学)甲第22504号農博第2408号新制||農||1077(附属図書館)学位論文||R2||N5284(農学部図書室)京都大学大学院農学研究科農学専攻(主査)教授 白岩 立彦, 教授 丸山 伸之, 准教授 田中 朋之学位規則第4条第1項該当Doctor of Agricultural ScienceKyoto UniversityDGA

Fakhrul, Islam Monshi

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TitleStudies on the diversity of seed storage proteins fordevelopment of hypoallergenic common buckwheat(Fagopyrum esculentum Moench)( Abstract_要旨 )Author(s)Fakhrul, Islam MonshiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2020-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k22504Right学位規則第9条第2項により要約公開; 許諾条件により要約は2020-04-01に公開; Breeding Sciencedoi:10.1270/jsbbs.19016. Title: Structure and diversity of 13Sglobulin zero-repeat subunit, the trypsin-resistant storageprotein of common buckwheat (Fagopyrum esculentum M.)seedsType Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University - 1 -（ 続紙 １ ）                             京都大学 博士（  農 学  ） 氏名 Fakhrul Islam Monshi 論文題目 Studies on the diversity of seed storage proteins for development of hypoallergenic common buckwheat (Fagopyrum esculentum Moench)（低アレルゲンソバ育成のための種子貯蔵タンパク質の多様性に関する研究） （論文内容の要旨） 種子貯蔵タンパク質は人類が消費する食品タンパク質の主要供給源である。ソバ種子は他の穀実作物に比べてタンパク質含量が高く、リシンやアルギニンなどを多く含みバランスの良いアミノ酸組成を有する。普通ソバの種子タンパク質は血液中のコレストロール低減、ならびに心臓病、脳卒中、糖尿病および肥満の予防効果を示す。しかし、ソバ貯蔵タンパク質が健康食品としての利用が増えるにつけ、それが含むアレルゲンタンパク質が、ときには重篤なアレルギー反応を引き起こし、わが国のアナフィラキシーの主要な原因の一つとなっていることが問題になってきた。このようなアレルゲンタンパク質の除去あるいはアレルゲン性低減は重要である。本研究は、低アレルゲンソバの開発を目指してアレルゲンタンパク質の多様性を評価し有用遺伝資源を探索するために行った。  １．ソバアレルゲンタンパク質研究を概観し、課題を明らかにした。ソバでは、13Sグロブリン（Fag e 1）および2Sアルブミン（Fag e 2）が主要なアレルゲンである。これらのエピトープや特性の解明が広く行われてきたが、低アレルゲンソバの育種と生産のような農学的な研究はきわめて少ない。これら低アレルゲンソバを開発するためには、自然集団に存在するアレルゲンタンパク質の多様性を評価することが必要であるとした。  ２．難消化性“13Sグロブリン0回反復サブユニット”の構造と多様性を検討した。13Sグロブリンには低メチオニンサブユニットと高メチオニンサブユニットが存在する。低メチオニンサブユニットには、特異なアミノ酸配列15残基が1～6回反復して挿入されトリプシン易消化性の1～6回反復サブユニットと、同挿入配列がなくトリプシン難消化性の0回反復サブユニットがある。そして0回反復サブユニットは他のサブユニットよりもアレルゲン性が高いことが示唆されている。日本産品種信濃1号、同春のいぶきおよびパキスタン産在来ソバ15種を対象に、0回反復サブユニット遺伝子の多型を調査した。これまでに知られているGlbNA、GlbNBおよびGlbNCアリルに加えて、日本産品種から２つのアリルGlbNA1およびGlbNC1を、パキスタン産在来種から３つのアリルGlbNA2、GlbNA3およびGlbNDを,それぞれ新たにみいだした。パキスタン産在来種では、GlbNAがもっとも卓越するアリルであり、そのアリル頻度は1品種を除き0.60から0.88を示した。既に知られているGlbNCの場合と同様に、GlbNA2とGlbNA3は終止コドン周辺に約200 bpのMITE様配列を有していた。それら挿入配列のセンス鎖の2次構造を解析したところ、それぞれ、− 78.95、− 67.06および− 29.90 kcal/molの低い自由エネルギーを示す強固なヘアピン構造を形成することが予測された。これらの構造は転写あるいは翻訳に影響する可能性がある。GlbNCホモ型の系統を新たに育成して検討した結果、0回反復サブユニット遺伝子の転写産物はみいだされず、これが低アレルゲンソバ育成に有用である可能性が示唆された。  - 2 - ３．2Sアルブミン遺伝子の多様性を検討した。2Sアルブミンは主要アレルゲンの一つでアナフィラキシーを起こす原因物質と考えられている。2016年に世界で初めて公表されたソバゲノムデータベース（BGDB）において同定された2Sアルブミン遺伝子、g03、g11、g13、g14およびg28の多様性と特性を解析し、有用アリルを見出そうとした。BGDBで誤って予測された翻訳開始点を修正し、さらに2つの新規アリルを分析した結果、g03は未成熟終止コドンをもつ偽遺伝子であることが予測された。その他の2Sアルブミン遺伝子を8つの品種・系統を対象に解析したところ、遺伝子g13およびg28は、それらのコード領域にそれぞれ531bpおよび451bpの挿入を含む新規アリルを約2％の頻度で有し、それらはヌルアリルとみなされた (g13_null, g28_null)。そしてg13_nullアリルホモ型の系統を育成したところ、g13タンパク質は合成されなかった。g11およびg14遺伝子についてアンプリコンディープ配列分析を行ったところ、ジスルフィド結合の数が少ない（DBL）アリルがあることがわかった。すなわち、本来2Sアルブミンファミリーに高度に保存された4つのジスルフィド結合のうち第２または第３のジスルフィド結合を欠いていた。組換えタンパク質g11_3rd_DBL、g14_2nd_DBL、およびg14_3rd_DBLはトリプシンにより消化されやすかった。このことから、これらのDBLアリルは低アレルゲンソバ育成に有用な遺伝資源と推察された。  ４．総合考察を行った。他家受粉性は、有用形質の固定を困難にするが自家受粉作物に比べて遺伝的多様性を生じやすい。ソバは、他家受粉性により自殖性のイネやダイズより、また他家受粉性のトウモロコシやヒマワリと比べても塩基配列の多様性が高い。本研究は、この特性を活かして自然のソバ集団からアレルゲンを減らすかアレルゲン性を低減化するために有用な新規のアリルを見出したものである。新たに同定された、13Sグロブリン0回反復サブユニットのGlbNA2、GlbNA3およびGlbNC、2Sアルブミンのg13_nullおよびg28_nullに見出されたMITE様配列や挿入配列は、ソバゲノムに広範に存在し大きな遺伝的多様性をもたらしていることが示唆された。一方、SNPsのような微細な変異を探索した結果、タンパク質の折り畳み、安定化および機能発現を担うジスルフィド結合が損なわれた自然変異が見出され、それらのトリプシン消化性が高まっていることが認められた。相対的に高頻度に存在するg13_null、g28_nullおよびg11_3rd_DBLを合わせ持つ系統の作出も将来可能になろう。今後、存在頻度が低いg14_3rd_DBLの効率的選抜や13Sグロブリンの有用アリルのさらなる探索が、低アレルゲンソバ開発のために必要と思われる。   以上より、ソバの自然集団のアレルゲンタンパク質遺伝子は大きな多様性を有すると評価され、いくつかの有用アリルがみいだされた。   注)論文内容の要旨と論文審査の結果の要旨は１頁を３８字×３６行で作成し、合わせ て、３,０００字を標準とすること。 論文内容の要旨を英語で記入する場合は、４００～１,１００wordsで作成し 審査結果の要旨は日本語５００～２,０００字程度で作成すること。  - 3 -（続紙 ２ ）                             （論文審査の結果の要旨）   ソバの種子は、バランスの良いアミノ酸組成を有するタンパク質、およびルチンをはじめとする健康機能成分を含むことから、生産と消費の拡大が期待されている。しかし、種子貯蔵タンパク質としてアレルゲンタンパク質を含むことが一つの障害になっている。本論文は、ソバアレルゲンタンパク質の除去もしくはアレルゲン性低減を目指し、主要なアレルゲンタンパク質である13Sグロブリンと2Sアルブミンの多様性を評価するとともに有用遺伝資源の探索を行った成果を取りまとめたものであり、評価すべき点は、以下の２点に要約される。  １．13Sグロブリンを構成するサブユニットのうち、トリプシン難消化性である0回反復サブユニットの新規対立遺伝子を5つ同定し、既知の対立遺伝子3つとともに、日本産2品種とパキスタン在来系統15種における対立遺伝子頻度を明らかにした。このうち3つの対立遺伝子については終止コドン周辺に約200bpのMITE様配列の挿入を認め、それらの挿入配列が取りうる特異な二次構造が遺伝子の転写・翻訳に影響を及ぼす可能性を指摘した。さらに、それらMITE様配列がソバゲノム上に散在し、大きな遺伝的多様性をもたらしていることを指摘した。  ２．アナフィラキシーの要因とされる2Sアルブミンの5つの遺伝子全てについて、低アレルゲンソバの開発のために有用と考えられる対立遺伝子を発見した。すなわち、g03遺伝子は全ての対立遺伝子が未成熟終止コドンを有すること、g13遺伝子とg28遺伝子には約500bpの挿入配列を有し機能を失ったと考えられるヌル対立遺伝子があること、g11遺伝子とg14遺伝子にはジスルフィド結合の1つを欠きトリプシン易消化性となったタンパク質をコードする対立遺伝子があることをみいだした。それらを効率的に選抜し集積することによりアレルゲンを減らすかアレルゲン性を低下させる可能性を開いた。  以上のように、本論文は、ソバの種子貯蔵タンパク質の多様性を明らかにし、低アレルゲンソバの開発に有用な知見を提供したものであり、作物学、品質設計開発学および育種学の発展に寄与するところが大きい。 よって、本論文は博士（農学）の学位論文として価値あるものと認める。   なお、令和２年２月２０日、論文並びにそれに関連した分野にわたり試問した結果、博士（農学）の学位を授与される学力が十分あるものと認めた。  また、本論文は、京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し、公表に際しては、当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  注）論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文は、本学学術情報リポジトリに掲載し、公表とする。 ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。  要旨公開可能日：２０２０年３月２３日以降（学位授与日から３ヶ月以内） 

低アレルゲンソバ育成のための種子貯蔵タンパク質の多様性に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/253340/1/ynogk02408.pdf

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