京都大学0048新制・課程博士博士(理学)甲第22286号理博第4600号新制||理||1660(附属図書館)京都大学大学院理学研究科生物科学専攻(主査)教授 工藤 洋, 教授 田村 実, 准教授 高山 浩司学位規則第4条第1項該当Doctor of ScienceKyoto UniversityDGA

Tsujimoto, Michiaki

English

Kyoto University Research Information Repository

TitleClonal population structure and genetic variation of ramet-production traits in a clonal plant, Cardamine leucantha(Abstract_要旨 )Author(s)Tsujimoto, MichiakiCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2020-03-23URL https://doi.org/10.14989/doctor.k22286Right学位規則第9条第2項により要約公開Type Thesis or DissertationTextversionnoneKyoto University  （ 続紙 １ ）                             京都大学 博 士（ 理 学 ） 氏名 辻本 典顯 論文題目 Clonal population structure and genetic variation of ramet-production traits in a clonal plant, Cardamine leucantha. （クローナル植物コンロンソウにおける集団クローン構造とラメット生産形質の遺伝的変異） （論文内容の要旨） クローナル植物は遺伝的に同一な個体（ラメット）を産出することで、遺伝的な個体（ジェネット）がその占有範囲とラメット数を拡大していく生活史をもつ植物である。そのため、クローナル植物の集団は個体の階層性を持つ。クローナル植物集団の空間構造は、ほとんどの場合で少数の優占ジェネットと多数の小ジェネットからなることが知られていた。その一方で、優占ジェネットが特異的な性質を持っているかどうかについては明らかではなかった。本申請論文では、最新のゲノムワイド変異検出法による集団構造の決定と優占ジェネットの特性を評価することを目的に行われた研究の結果を報告している。本論文は5章から構成されている。 第1章は総合序論で、課題の背景を解説するとともに本研究の対象植物であるコンロンソウと調査地の概要について説明されている。 第2章では、クローン構造の正確な決定のためにゲノムワイド一塩基多型解析法であるRAD-Seqを導入した解析が実施されている。まず、血縁関係がわかっている材料を対象とした解析を行い、ジェネット判別のための遺伝距離の閾値設定に関する客観的手法が提示された。引き続き、野外集団の遺伝的構造を解析し、優占ジェネットを特定した。また、これらの優占ジェネットは互いに相対的には近縁ではなく、一方小ジェネットは近傍の優占ジェネットに近縁であることが判明した。これは少なくとも十数年よりも前に集団に加入したジェネットがクローン繁殖で占有面積を増やすとともに、種子繁殖もおこなっていることを示している。  第3章では、自然集団で特定した優占ジェネットと小ジェネットの遺伝的特性を調べるための長期共通圃場実験の結果が報告されている。第2章で特定した優占ジェネットを含むジェネットを共通圃場に移植し、その後クローン世代2世代にわたってラメット生産にかかわる形質を評価した。その結果、ラメット間の距離を決定するスペーサーとして働く地下茎長に遺伝的変異が存在することがわかった。優占ジェネットも小ジェネットも地下茎長を長くすることができるタイプが多かったが、優占ジェネットの中に地下茎長が短いタイプが含まれていることが明らかとなった。このことは、ラメットの空間配置にかかわる形質に遺伝的変異が存在することを示している。  第4章では、第3章で特定したジェネット間の遺伝的変異が、自然集団において表現型に表れているかどうかが検証されている。自然集団のクローン構造を再びRAD-Seqで決定した上で、植物の掘取りにより、ラメット生産の形質を測定した。その結果、共通圃場実験で検出された地下茎長の遺伝的差異が自然集団においても再現されていることが明らかとなった。地下茎長の短いジェネットは安定的な立地に生育しており、生育地のかく乱とスペーサー長との関係が議論されている。  第5章では、クローン構造を地理的に離れた4集団で決定し、その一般性が検証されている。少数優占ジェネットと多数小ジェネットからなるという構造には共通性が見られ、種子繁殖にかかわる特性に地域差が見られた。     （続紙 ２ ）                            （論文審査の結果の要旨） 辻本典顯氏が研究対象とした、クローン成長をする多年生草本は温帯林林床の主要構成要素である。林冠の葉群により光資源が制限されるため、林床における生産性は低くなり、クローン成長は重要な繁殖手段となる。クローナル植物は遺伝的個体であるジェネットと生理的個体であるラメットいう階層性のある集団構造を持つ。これまでも遺伝マーカーを用いたクローナル植物集団の構造決定がなされてきたが、近傍に散布されうる血縁個体間の識別を必要とするため、頑健な識別手法が求められていた。本論文では、次世代シーケンサ―を用いたゲノムワイドの一塩基多型を用いた解析が、自然のクローナル植物の集団構造の解析に導入された。研究は主に、北海道陸別町のコンロンソウ野外集団を対象として進められた。  第１章では、総合序論として、研究の背景と研究材料が記述されている。材料としたコンロンソウはアブラナ科の2倍体草本であり、ゲノムサイズが小さく、ゲノムワイド解析を導入するのに向いている。 第２章では、まず、RAD-Seqデータによりジェネットを特定するためのデータ解析についての複数の手法を血縁関係が既知の材料を用いて評価している。本研究はクローナル植物の集団構造解析にRAD-Seqを導入した初期の例の一つであり、特に血縁個体を用いて手法を評価している点がすぐれている。ついで、野外サンプルを用いて解析し、コンロンソウ集団のクローン構造を決定した。その構造は、少数の優占ジェネットと多数の小ジェネットからなる典型的な集団構造を示した。 第3章では、自然集団での優占度を決定済みの植物（第2章）を用いた共通圃場実験の結果が報告されている。優占ジェネットと非優占ジェネットを均一環境で栽培することにより、その遺伝的性質を評価する実験はこれまでほとんど実施されてきていない。実験の結果、スペーサー長の遺伝的変異が見いだされ、それがラメットの空間配置の決定要因となることが示された。 第4章では、上述のスペーサー長の変異が自然条件における表現型として現れていることを、RAD-Seqと植物の掘取り調査を組み合わせることで明らかにした。スペーサー長の変異について自然条件で遺伝的要因を証明した例として貴重である。 第５章では、クローン構造を４集団で決定した結果が報告されている。コンロンソウにおけるクローン構造の一般性が検証されるとともに議論された。 本論文により、RAD-Seqを用いたクローナル植物の詳細な集団構造研究の道が拓かれた。また、圃場実験と組み合わせることにより、ジェネットのラメット生産形質における遺伝的変異が集団構造の決定要因の一つとなりうることが示された。その結果は、自然条件下におけるクローナル植物の集団構造を決定する要因の実証的研究として高く評価できる。よって、本論文は博士（理学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和２年１月２１日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。   要旨公表可能日：学位授与後即日公表  

クローナル植物コンロンソウにおける集団クローン構造とラメット生産形質の遺伝的変異

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/253122/1/yrigk04600.pdf

クローナル植物コンロンソウにおける集団クローン構造とラメット生産形質の遺伝的変異

Abstract

Similar works

Full text

Available Versions

Kyoto University Research Information Repository