前川 要

宇野 隆夫

張 忠良

田中 保士

酒井 英男

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酒井, 英男

サカイ, ヒデオ

宇野, 隆夫

ウノ, タカオ

前川, 要

マエカワ, カナメ

田中, 保士

タナカ, ヤスシ

張, 忠良

Sakai, Hideo

Uno, Takao

Maekawa, Kaname

Tanaka, Yasushi

Zhang, Zhong Liang

National Museum of Japanese History Repository

第 5章自然科学 的 調 査1 福島城跡および十三湊遺跡における電気探査(1) はじめに青森県福島城および十三湊遺跡において発掘調査の前に電気探査を行った。福島城については1992年10月の試掘調査前に，十三湊遺跡については1993年7月の発掘調査前に探査を実施した。福島域はl.5km三方の城域をもった古代末（10～11世紀）とみられる城郭遺跡で， 自然、地形に沿った外郭部と約200m四方の堀と士塁に固まれた内郭から構成される。今回探査を行った内郭は福島城の中心と考えられるが，従来発掘調査が行われたことはなく，内部の構造はまったく不明であった。探査によって状況を把握できれば，今後の研究に重要な指針を示すことができる。十三湊遺跡は12～15世紀にかけた日本海海運の拠点港であり，南北l.5kmにわたって港湾都市遺跡が良好な状態で残されている。今回の探査は，都市域の北半部中央に位置した推定安藤氏居館の隣接部分（93年度第 1地区）と，都市域を南北に貫いて伸びた中軸道路に面した推定町屋部分（93年度第2地区）で実施した。調査地からはさまざまな都市関連施設が発見されることが予測され，発掘に先だって地下遺構の概要をつかめれば，より的確な調査が可能になる。探査は電気比抵抗探査を実施した。装置として，英国 Geoscan社製の RM 15型を使用し，電極間隔0.5mの二極法の手法により行った。各測定は， 400ni(20m×20m）の範囲を単位グリッドとして，グリッド毎に結果をまとめて総合した。測点間隔は， lm四方に 1測点の密度にとっている。装置および、手法については， 〔酒井ほか 1991,1994〕等を参照されたい。(2) 福島城跡の探査調査地域である福島城遺跡公園の近傍の地質の概観から，埋没遺構は表層（～0.5m）を粘土質なシルト層に覆われていると予想された。そこで探査は比抵抗の平面分布を主な手法として，遺構の平面位置を推定することにした。探査は10月8日～10日に実施したが，初日は快晴， 2日日は豪雨， 3日目は雨天という天候条件であり，これが比抵抗探査にどの様な影響を及ぼすかの検討も目的の一つに考えた。探査範囲は，第28図の番号1から13までの12個のグリッド（グリッドNo.5を除く）である。調査地域の土質は，砂質・シルト質で若干の磯を含む。最近まで耕作が行われており，地表面には凹凸のある耕作跡が認められ，現在は表層を雑草が覆っている。第5表に，探査を行ったグリッド毎の天候条件を示している。雨天日の測定データには，比抵抗が低くなる傾向が見られた。原因の一つは，二極法探査において，移動する電流・電圧の 2本137 国立歴史民俗博物館研究報告第64集 (1995)第28図福島城地域の比抵抗探査の範囲 （縮尺 1/2000) 調査はぬ1～N且13までの各グリッドで実施した。138 自然科学的調査第5表 福島城跡の電気比抵抗探査調査日10月8日9日10日グリッド番号No.l, 2, 3 No.4, 6, 7, 8 No. 9, 10, 1, 12, 13 の電極が木製の支持棒で、つながれており，雨天時には降雨が支持榛を伝わって電気絶縁度が悪くなり，電極聞の見かけ比抵抗が地下の比抵抗より低くなるためと考えられる。この影響はその後，支持棒を分断することで解決した。この支持棒の効果を除外しても，探査への雨の影響が懸念された。つまり，探査地域の上層の耕作面は多孔質であり，降雨で含水比が高くなると電気比抵抗も影響を受ける。耕作による凹凸面の為に，耕作面まで電極榛が達しないと地点と，耕作面を買いて下層面まで達する地点に分かれる可能性があった。グリッドNo.1等で認められた比抵抗値は， 200～lOOOQ• mを示す範囲と40～50Q• mの低い範囲に分かれ，探査前に予想した雨の影響による比抵抗値の分散が起きていた。先述の様に，電極棒が下層のシルト層まで達した場合は，比抵抗への雨の影響は比較的少なく，200～lOOOQ・mとい う高い値を示すが，雨の影響を受けた上層部内に電極棒がある場合に低い比抵抗となると考えられた。第29図は， こうした影響をできるだけ除去して得た第28図の地域の電気比抵抗の分布を示す。各グ リッドのデータ の統合は，巴dgemaching法で境界補正を施して行った。この図は， shade図法（ある高度 ・方位から光を当てた際の陰影図）を用いて作製しており，図中のドッ 卜の濃い領域は電気比抵抗が低い領域である。図中に南北および東西走向の線状パターンがいくつか認められるが，探査後に実施された数箇所のトレンチ調査から，これらは耕作時のトラックが通った痕跡と確認された。また，図の北西部の領域には，東西および南北 第29図 福島城の比抵抗探査の結果139 国立歴史民俗博物館研究報告 第64集 (1995)測線と45° をなす直線で四方を固まれた，周辺より高比抵抗の地域（rectilinearpattern）が，現れている。これは耕作時のトラックの影響線とは明らかに異なり，考古学的遺構の存在を反映するものと推定される。(3) 十三湊地域の探査先述の通り， 93年度第 1地区（以下， I地区とする）と93年度第2地区（以下， E地区とする）において探査を実施した（第30・31図）。探査結果は第32図 (I地区）と，第33図（I地区）に示している。各図において， ドットの濃淡は比抵抗の高低に対応している。第30図 十三湊遺跡93年度第 l地区の比抵抗探査の範囲O Wm 第31図 十三湊遺跡93年度第2地区の比抵抗探査の範囲第32図の I地区には， ドットが淡く，白く現われた高比抵抗域が数箇所で認められる。この結果の，特に領域凶～（C）について，その後に行なわれた発掘結果と照合した。グリッド l南側の領域凶は堀と確認された。これは，堀を覆っていた砂質土が高比抵抗であったため，異常域として表れたと解釈できる。この堀を囲んで東西に，低比抵抗の土橋が存在する。中央部の白く現われた領域間は，発掘調査で井戸跡と認められた。北西部隅の高比抵抗の領域（C)は，最近の手が加わった砂地盤の地域であった。以上の結果をまとめると，砂質土の領域が高比抵抗を示し，その他の粘土質地盤の領域が低比抵抗域として現れている。井戸や堀が砂質土壌で埋められており，周囲より高比抵抗の領域として探査結果に表れたと言える。同地域で，表士をはぎ取った後で再度探査を実施した結果，上述の比抵抗の異常はさらに顕著140 自然科学的調倉γ＼＼・1会＼＼／領域（A)第32図 十三湊遺跡93年度第 l地区の比抵抗探査の結果今11ベlil第33図 十三湊遺跡93年度第 2地区の比抵抗探査の結果141 国立歴史民俗博物館研究報告第64集 (1995)になる傾向にあった。表層の被りがなくなり，高比抵抗域を直接に測定できた為と考えられる。第33図はE地区の探査結果を示している。発掘調査から， E地区は道に沿った町屋の一角と判明した。探査結果と照合すると，第33図の高比抵抗を示す領域の1), (E）や（町は井戸に対応した。北側の低比抵抗域は作物の根の影響が出ているらしい。(4) おわりに福島城および十三湊地区において，発掘調査の前に電気比抵抗探査を実施した。福島城の調査では，降雨の影響が耕作地域の凸凹との関連により，電気比抵抗に影響することが認められた。耕作地域以外に認められた比抵抗の異常域は，発掘調査は実施されていないが埋没遺構の存在を示唆すると考えられる。十三湊地域では，粘土質の堆積層の中で，砂質の部分が高比抵抗の領域として現れる傾向にあった。井戸や堀の跡は砂質土壌で埋められており，周囲より高比抵抗の領域として顕著に判別され，探査結果は発掘結果と良く照合した。これらの結果は，電磁気探査が，城郭・都市遺跡の研究において，有用な手段となることを示している。謝辞探査に際して，富山大学考古学教室の学生諸氏には御助力を頂いた。また，国立歴史民俗博物館の千田嘉博氏，ならびに元 EnglandMonument Heritage, Director Dr. Anthony Clarkには，探査結果の解釈において有益な助言を頂いた。以上の方々に深く感謝する。調査の一部に科研費・重点領域研究“遺跡探査”を使用させて頂いた。参考文献酒井英男，小林剛，広岡公夫，胡麻景子，東順一，田中保土 1991「石川県羽咋市滝・柴垣海岸の製塩遺跡における電磁気探査」『能登滝・柴垣製塩遺跡群』富山大学人文学部考古学教室。酒井英男，山田剛士，田中保土 1994「立山室堂における山岳宗教遺跡の電磁気探査」『芦勝寺室堂遺跡』立山町教育委員会。142 l酒井英男：富吋理学部自史民俗博物館特定研究協力者 l 前川・宇野；田中保士・張忠良：国立歴史民俗博物館特定研究協力者｜

1. Geophysical Survey on Tosa-Minato and Fukushima Castle Sites (V. Natural Science Investigations)

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1. 福島城跡および十三湊遺跡における電気探査（第5章 自然科学的調査）

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