Irisawa Toshiharu

Katsuno Hiroyasu

Katsuno Kiiko

Mano Hiroshi

入澤 寿美

勝野 喜以子

勝野 弘康

真野 博史

Kiiko Katsuno

Hiroyasu Katsuno

Hiroshi Mano

Toshiharu Irisawa

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物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 85 −物理学科新入学者に対する入学前補習学習用 Web 教材の検証	 成蹊大学　常勤講師　勝　野　喜以子	 学習院大学計算機センター助教　勝　野　弘　康	 学習院大学計算機センター客員研究員　真　野　博　史	 学習院大学計算機センター教授　入　澤　寿　美	１．はじめに文部科学省の諮問機関である中央教育審議会は、平成 20 年 12 月 24 日に出した「学士課程教育の構築に向けて」（答申）の中で、“第２章−第３節−２　初年次における教育上の配慮、高大連携”をあげている。ここでは大学に期待される具体的な改善方策の一つとして「大学や学生の実情に応じて，補習・補完教育の充実を図る」とされており、大学におけるリメディアル教育が求められており、多くの大学で主に推薦入学予定者を対象にさまざまな取り組みが行われている。学習院大学物理学科では、指定校推薦と公募制推薦の２つの推薦入学制度を設けているが、近年、推薦入学した学生の中に一般入試で入学した学生より学力の低い学生がいることが問題となっていた。これを解消すべく、2011 年度計算機センター特別研究プロジェクトに採択された「物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web教材の開発」において、2011 年 12 月～ 2012 年 3 月に実験的に入学前教育を行った [1]。この入学前教育の対象者は推薦入学予定者に限定されるため、推薦入学内定直後は高校教育の内容は一般の高校生より理解していると考えられる。そのため、他大学で行われているような基礎学力補填ではなく、“基礎学力の維持・向上”を目的としたリメディアル教育（数学）の e-learning 教材の開発も行った。なお、本研究では 2012 年度推薦入学予定者に対する実験運用結果をもとに、PDCA（plan-do-check-act）サイクルに則って 2013 年度用の教材の評価・改善を行った。ここではこれらの教材の改善について述べるとともに、2013 年度の推薦入学予定者に対して、実施した入学前教育の結果と、本研究で開発したリメディアル教材による入学前教育を持続可能なプログラムとして構築することを検討する。２．リメディアル教育（数学）の改善教材の開発には 2011 年度に引き続き、e-learning 教材を用い、学習管理システム（以下、LMS）にはWebClass を用いた。2011 年 12 月～ 2012 年 3 月に実験的に行った入学前教育（以下、パイロットスタディ）のアンケー研究報告計算機センター　Vol.	34　2013− 86 −トでは、Web	Class の利用に関して「簡単」「やや簡単」と答えた受講生が 60％を占め、「難しい」「やや難しい」と答えた受講生は 0％であったため、Web	Class	で問題ないと判断した。なお、アンケートによると、今回の受講者もパイロットスタディの時と同様に、全員が自宅のパソコンを使って入学前教育教材にアクセスしていた。本プロジェクトでは、デジタルデバイドに配慮してパソコン環境の提供を高校にお願いしているが、ほとんど必要ないものと思われる。「学習システム（Web	Class）の使い方を誰かに相談しましたか？」というアンケートの問いに、2011 年度も 2012 年度も受講生の 60%は「誰にも相談しなかった」と回答しており、両年度とも30%の受講生が「両親に相談した」と回答している。この結果も、Web	Class の使い勝手の簡便さと、入学前教育の自宅での学習を裏付けている。なお、自習するにあたって参考資料に何を用いたかを聞いたところ、Web	Class に我々が作りこんだヒントであった（図	1）。解答後に表示されるヒントは、解答が正解かどうかにかかわらず、必ず表示されるように作成されているが、ヒントの作成が重要であることがわかる。図 1：参考資料に関するアンケート結果その他：高校の授業のノート今回、大きな変更を行ったのは確認試験 1である。パイロットスタディでは制限時間 60 分・1回6問（1問 10 点で 60 点満点）としたが、2012 年度の実施の際には、制限時間は 60 分のままで 1回10 問（1問 10 点で 100 点満点）とした。またパイロットスタディの段階では、確認試験１は高校数学の教科書レベルの問題を出題したが、平均点が高く（指定校推薦生：57 点／ 60 点満点、公募物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 87 −制推薦生：50 点／ 60 点満点）、高校生平均の数学の学力レベル以上であることは示されたが、苦手な分野などの情報を得にくいという問題があった（表	1）。そのため、問題数を増やすと同時に多少、難易度を引き上げた。2012 年度の確認試験 1の平均点は、指定校推薦生が 57 点／ 100 点満点、公募制推薦生：64 点／ 100 点満点であった。受講生 15 人中 11 人が 10 問すべてに解答しており、残りの 4人も 1～ 2問解答できなかっただけなので、問題数と難易度は適したレベルに調整できたと考えられる。確認試験 2については、1回 6問（1問 10 点で 60 点満点）のまま行った。2011 年度と同様に練習問題の中で正解率が低かった問題や解答に時間がかかった問題、もしくはその類似問題を出題し、難易度も 2011 年度と同程度にした。平均点は 2011 年度に比べて少し下がっているが、学力レベルはほぼ同等であると考えられる。表 1：確認試験の平均点 2011 年度 2012 年度確認試験１（60 点満点）確認試験２（60 点満点）確認試験１（100 点満点）確認試験２（60 点満点）指定校推薦 57 点 35 点 57 点 30 点公募制推薦 50 点 28 点 64 点 25 点３．実施結果入学前教育の案内は、前回同様、推薦入試の合格者に配布される書類にて通知した。その後、実際に入学手続きを行った人に対し、マニュアルやユーザ IDの送付を行ったが、今年度は冬休みに入ってからの到着となってしまった。書類は受講生の自宅あてに郵送されたこと、全員が自宅で受講していたなどの理由で、今年度は特に大きな問題は発生しなかった。しかし、自宅にパソコンがないなど高校の協力が必要な状況も発生する可能性があるので、今後はアドミッションセンターとの連携を密にして、送付日程などに注意を払う必要がある。2012 年度の入学前教育は、表 2のスケジュールで行われた。受講者は、指定校推薦 6名、公募制推薦 9名で、内部推薦の受講者はいなかった。表 2：2013 年度推薦入学予定者向け入学前教育スケジュール形式（1問 10 点） 受講期間確認試験 1 全 10 問（100 点満点）60 分 1回のみマニュアル到着日～ 2013 年1月27 日（日）まで練習問題1回 10 問（400 点満点）制限時間なし回数制限なし１回目　2013 年 2 月 4日（月）～２回目　2013 年 2 月11日（月）～３回目　2013 年 2 月18日（月）～４回目　2013 年 2 月25日（月）～確認試験 2 全 10 問（60 点満点）60 分 1回のみ2013 年 3 月 4日（月）～ 2013 年 3 月 10 日（日）まで計算機センター　Vol.	34　2013− 88 −確認試験 1は全員（15 名）が受験したが、確認試験 2の受験者は 14 名であり、この１名は練習問題の途中から脱落しているのがうかがえる。この受講生が途中でやめた事情については確認していないが、長期の休み期間であることから短期留学などに行くことも考えられる。継続的な受講を促すための仕組みの他に、今後は、留学などの事情がある場合には、前倒し（もしくは後にずらして）受講できるような仕組みも考える必要があるだろう。表 3は練習問題の平均点と回答回数を比較したものである。両年度ともに練習問題の平均点は指定校推薦の受講生のほうが良く、平均の回答回数も指定校推薦のほうが多い。これは、練習問題の取り組み方の違いによるものである。学習履歴をチェックすると、指定校推薦の受講生は全員がほぼ全ての練習問題（全 40 問）を満点になるまで解きなおしている。一方、公募制推薦の受講生は、約半数が最後の問題まで到達できないか、わからない問題を飛ばして進めている。すべての練習問題を完成させる受講生のモチベーションが、「学校からの推薦を取っている」という受講生側の責任感からくるのか、もともと真面目な生徒なので成績がよく推薦につながっているのかはわからないが、受講生全員が完遂できるような仕組みを考えていく必要があるといえるだろう。表 3：練習問題の平均点と解答回数2011 年度 2012 年度平均点（400 点満点）平均解答回数（最小解答回数 40 回）平均点（400 点満点）平均解答回数（最小解答回数 40 回）指定校推薦 399 点 93.	2 回 377 点 95.	3 回公募制推薦 291 点 85.	5 回 264 点 69.	1 回図 2は、本プログラムの終了後に、受講生に対して、今回の取り組みのどのような点が効果的だと感じたかを聞いたアンケートの結果である。「学力の維持・向上がはかれる」「学習習慣が保たれる」といった点に効果を感じている。高校生にとって、推薦入学が決まった後の時間は、これまでに経験のない長期休暇であり、計画的に過ごすことが難しいという現状がうかがえる。アンケートの自由記述欄にも「推薦合格後の勉強する習慣が身についたと思う」「この課題のおかげで、目標をもって学習を進めることができました。」という意見が寄せられていたことから、学習習慣の維持は受講生に感じられる大きなメリットなのであろう。また、自由記述欄には「確認試験２は特に学校などではふれてない部分も多く、今回初めて学ぶことも多かった。」「今の自分の学力の低下具合に愕然とした。」「自分が苦手な分野がすぐに分りとても効率よく勉強する事が出来ました。」「今回の課題のおかげでどこが苦手でどのくらいやるべきなのかというのが一目瞭然で分るような問題だったのでとても助かりました。」という意見も多く寄せられており、受講生自身の現状把握にも役立ったようである。アンケートに回答した受講生のほとんどは「入学までに今回出来なかったところを重点的に勉強していきたい」と答えており、今回のプログラムが大学へのモチベーションにつながっ物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 89 −ていると思われる。なお、本プログラムは強制ではないが、2012 年度は全員が受講した（2011 年度の未受講者は１名）。図 2：効果的だと感じた点その他：受験が終わって安心している自分に危機感を与えてくれた４．まとめ2011 年度の学習院大学物理学科推薦入学予定者に対して行われた入学前教育をもとに、教材の改善や 2012 年度推薦遊学予定者への入学前教育の実施などを行った。2年間のプロジェクトにより、推薦入学予定者向けの入学前教材の開発と入学前教育の実施プロセスはほぼ完成したといっていいだろう。今後、この入学前教育をどのように持続していくかが問題である。我々の開発した教材は、受講対象者のレベルに合わせて、問題の選択が可能である。問題数は今後も増やしていく必要はあるが、既存の学習管理システムを利用しているため、特に金銭的な負担は生じない。継続的な実施に関しては、運用メンバーの中に、大学での物理に関して理解のある者、できれば学習院大学の物理学科の学生のレベルを知る者が必要であると考えられる。高校教育の中の数学と大学の物理で必要とされる数学の違いと受講生の苦手な分野を考慮して、大学で役に立つ問題を選択する必要があるからである。また、問題の作成やリリースなどの作業も少なからず発生するため、大学院生などのアルバイトも必要であろう。今のところ、最小運営人数は上記の 2名ではないかと思われる。今後、メンター制度など受講生に対するケアを考えていくのであれば、そのための人材とその育成について別途検討する必要があるだろう。計算機センター　Vol.	34　2013− 90 −2013 年度以降の運用に関しては、学習院大学物理学科に委ねることになっている。本プロジェクトで開発したプログラムが、効果的に活用されればと思う。＜参考文献＞物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 91 −計算機センター　Vol.	34　2013− 92 −物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 93 −計算機センター　Vol.	34　2013− 94 −物理学科新入学者に対する入学前補習学習用Web 教材の検証− 95 −計算機センター　Vol.	34　2013− 96 −

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