Isogami Sadao

Kidokoro Hiroyasu

Mo Hiroshi

Murakami Toshio

城所 弘泰

孟 洋

村上 登志男

磯上 貞雄

Sadao Isogami

Hiroyasu Kidokoro

Toshio Murakami

Hiroshi Mo

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計算機センター　Vol. 35　2014− 78 −教育現場での BYOD の活用に関する研究 学習院大学計算機センター　磯　上　貞　雄 学習院大学計算機センター　村　上　登志男 学習院大学計算機センター　城　所　弘　泰 国立情報学研究所コンテンツ科学研究系　孟　　　　　洋１．はじめにBYOD（Bring Your Own Device）とは、個人所有の情報機器を仕事の現場に持ち込み、それで業務を行う形態を表す略語である。この形態での利点のひとつは、自分が使い慣れている機器を利用することである。個人所有の情報機器は、近年急激に普及し始めたスマートフォン、タブレットなどのスマートデバイスが代表的なものである。本学の学生の持ち歩いている情報機器については、PC の持ち込みは従来に比べ増えてきているように見受けられるが、主流はやはりスマートデバイスである。2012 年システム更改により無線 LAN 環境が整備され、有線 LAN のインターフェイスを持たないスマートデバイスを利用できる環境が整備された。本研究ではこれらスマートデバイスをはじめとする個人所有の情報機器を使用して、学習院大学の現在の環境とコンテンツの利用可能性を検証し、必要とされる環境と活用方法の検討を行った。2．学習院大学の現在の環境2．1　VDI 環境検証には、先行（2011 年度）の特別研究プロジェクト「リモートアクセス環境の構築と運用に関する研究」［1］で試験的に構築し、その後より利便性を高めることを目指したものに改修した VDI環境 ( 仮想デスクトップ環境 ) を使用した。この環境は、2012 年 4 月からのシステムと連携させた Windows Server 2008 R2 を用い、リモートデスクトップゲートウェイマネージャー（RDGW）で構築されている。これは、RDP over HTTPS のゲートウェイサービスを実現するもので、リモートデスクトップ接続を許可している PCに、VPN 接続の設定をすることなく HTTPS のみで安全にリモートデスクトップ接続できるものである。研究報告教育現場でのBYODの活用に関する研究− 79 −表 1　リモートデスクトップ接続環境RD ゲートウェイマネージャー（RDP over HTTPS）Windows Server 2008 R2、リモートデスクトップゲートウェイマネージャーリモートデスクトップ接続先 Windows 7 Enterprise2．2　無線 LAN 環境スマートデバイスは有線 LAN のインターフェイスを持たない、そのため学内資源へのアクセス手段は無線 LAN となる。2012 年システム更改により整備された無線 LAN 環境は、学内ネットワークへの接続の際には、ユーザー認証が必要なものとなっている。その方式は、WPA2-PSK ＋ Web 認証と、WPA2-Enterprise のふたつが用意されている。この無線 LAN 環境を検証では使用した。運用をはじめて判明したのだが、Android のあるバージョンには WPA2-Enterprise 方式での認証に不具合がある。Android 端末の場合、ハードウェアと OS との組み合わせが限定される場合があり、利用者側では対処の方法がない。WPA2-PSK 方式は WPA2-Enterprise 方式に比べ安全性が劣るが、接続性を確保するためには、両方式を用意する必要が確認された。3．検証スマートフォン、タブレットなどの情報機器はスマートデバイスとひとつの言葉で表現されているが、実際には各種の OS が使用されており、各 OS によって、また同じ OS でもバージョンの違いによって、実装されている機能および操作方法に細かい差異がある。ソフトウェアに加え、ディスプレイの解像度の違いなどのハードウェアの差異もある。実際にこれらの機器を使用し、検証を進めることとした。4 インチ程度のタブレット ( スマートフォンを想定 ) から 10 インチ程度のタブレットまで７種類用意した。解像度は最近販売されている機器では一般的に利用されているフル HD が表示できるものを中心に比較検討を行った。OS は、iOS、Android、Windows をそれぞれ用意し検討を行った。表 2　用意したスマートデバイス一覧画面サイズ 解像度 OS4 インチ 854x480 Android 4.1.x5 インチ 1920x1080 Android 4.4.x6 インチ 1920×1080 Android 4.2.27 インチ 1920x1200 Android 4.4.37.9 インチ 2048x1536 iOS 7.0.x10.6 インチ 1366x768 Windows RT 8.110.6 インチ 1920x1080 Windows 8.1計算機センター　Vol. 35　2014− 80 −3．1　リモートデスクトップ接続前述の VDI 環境と無線 LAN 環境を使用し、実習室の PC を置き換えるものとしてリモートデスクトップ接続を行い、接続先の PC を操作し、実用に耐えうるものかを検証した。リモートデスクトップ接続に使用するクライアントソフトは、マイクロソフト提供のもの、サードパーティー製のものがある。Android および iOS 用のマイクロソフトが提供している RD Client では、リモートデスクトップの解像度は設定できず、接続元の機器によって決まってしまう。サードパーティー製のリモートデスクトップクライアントでは、解像度に関してはきめ細かく設定できるものもあるが、RDGW が利用できないなど他の機能に関して制限がある。マイクロソフト製のものは、すべてのプラットホームで提供されており、かつ RDGW を利用できるので、今回の評価で利用した。検証を行い、次のような結果を得た。表 3　RDP アプリケーション一覧開発元 製品名 対応 OSMicrosoft リモートデスクトップ接続 WindowsMicrosoft MS RD Client iOS, Android表 4 リモートデスクトップ接続結果一覧画面サイズ 解像度 評価4 インチ 854x480 ×5 インチ 1920x1080 ×6 インチ 1920x1080 ×7 インチ 1920x1200 △7.9 インチ 2048x1536 ○10.6 インチ 1366x768 ○10.6 インチ 1920x1080 ○VDI の端末としてスマートデバイスを利用することを想定した場合、スマートフォンとして多く用いられている 5 インチ程度のものではアプリケーションの起動操作程度は可能だが、文字入力はほぼ不可能である（当然拡大表示すれば可能ではある）。タブレットとして使われている 7 ～ 8 インチ程度以上の大きさが必要であることが改めて確認された。教育現場でのBYODの活用に関する研究− 81 −さらにこのサイズでも VDI のクライアントソフトにより操作性はかなり変わることも確認された。この結果、通常持ち歩いているスマートフォンをそのまま PC の代用として使うことは実用的ではなく何らかの代替手段が必要であることが確認された。図 1　5 インチデバイスでのリモートデスクトップ表示例 図 2　7.9 インチデバイスでのリモートデスクトップ表示例計算機センター　Vol. 35　2014− 82 −図 3　10.6 インチデバイスでのリモートデスクトップ表示例 3．2　WEB の利用本学で運用している LMS である WebClass を、WEB での利用のテストケースとして有効性を検証した。WEB ページの場合でも、スマートデバイス用にデザインされたページの場合には、ストレスなく操作できるが、そうでない場合には画面の拡大表示が必要になるなど、操作性が低下することが多い。図 4　5 インチデバイスでの WebClass の表示例（左：スマートデバイス用デザイン、右：PC 用デザイン）教育現場でのBYODの活用に関する研究− 83 −3．3　FTPホームディレクトリにある個人所有のファイルの利用について、FTP によるダウンロード・アップロードが有効な手段となることを確認した。しかし、留意すべきことも見つかった。スマートデバイス用の FTP クライアントソフト（OS がWindows 系のものを除く）の多くは、FTP サーバー側のファイル名の文字コード設定ができない、あるいは可能であっても選択できる文字コードの種類が限定される。ファイル名の文字コードを適切なものに設定可能なソフトでも以下の問題があった。FTP サーバーに接続した際、クライアントソフトは、接続したディレクトリのファイル一覧を取得するが、タイムスタンプが日本語であった場合、取得した一覧の処理に不具合が発生した。具体的にはファイルの一部しか、あるいはすべてが表示されないなどである。図 5　FTP クライアントの表示例（下が正しい表示、ファイル数が違うことに注意）計算機センターが提供している FTP サーバーの設定を変更し、タイムスタンプを英語表示に変更することで、この不具合に対処した。この問題は PC 用の FTP クライアントソフトを利用していた際には問題となっていなかったものであり、実際にスマートデバイス用の FTP クライアントソフト使用してみてわかったものである。計算機センター　Vol. 35　2014− 84 −依然 FTP によるファイルアクセスは有効な手段ではあるものの、DropBox のような簡易な方法は必要であろうと思われる。3．4　WebDAVWebDAV（Web-based Distributed Authoring and Versioning）とは、HTTP プロトコルを利用したファイル共有を可能にする仕組みである。この WebDAV を利用したファイル共有を検証した。WebDAV の標準的な仕組みでは、Web サーバプロセスの実行ユーザーが持つアクセス権で許されている範囲でしか、ファイルへアクセスできない。そのため、ユーザー単位でファイルのアクセス管理をすることが難しい。われわれが望む各個人のホームディレクトリへのアクセス手段とするには、上記の標準的な構成では不十分であり、さらなる作りこみが必要となる。インターフェイスが Web ブラウザである利点は大きいものの、手元のスマートデバイスにファイルをダウンロードし、その後アップロードするという手順が必要なことから、FTP利用との大きな差異は見られなかった。4．まとめと今後の課題スマートデバイスを最大限に活用するためには、現環境をそのまま利用するのではなく、アプリケーションを限定的に利用するなどの工夫や、操作性を考慮したコンテンツの用意の必要性を改めて確認した。ファイルアクセスの手段として FTP などを提供しているが、より簡易なインターフェイスでの提供が BYOD を活用するためには必要となってきている。また、本研究では操作性の検証に重点を置いたので、費用面については言及していなかったが、たとえば、マイクロソフト社が提供しているリモートデスクトップサービスを利用するためには、マイクロソフト社から計算機資源利用に要するソフトウェアライセンス権を購入する必要がある。全学へ展開するサービスを構築する場合には、そのために要する費用とその費用対効果を十分に検討する必要がある。さらに昨今のセキュリティインシデントの発生状況を考慮すると、学内ネットワークへ接続する時点での検疫（セキュリティパッチ適用、ウィルス対策ソフトのパターンファイル更新などの最低限のセキュリティ対策を行っているかを判定する）は導入を検討すべき課題と思われる。【参考文献】［1］　 村上登志男 , 磯上貞雄 , 孟洋 , 城所弘泰 , “リモートアクセス環境の構築と運用に関する研究”, 学習院大学計算機センター年報 ,   Vol.33,   p.168-178,   2012.

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