スィースィー大統領下のエジプト権威主義の政党システムから個人支配へ

Abstract

本論稿が主に論じるのはエジプトで30年近く続いたムバーラク政権の転覆後の権威主義体制への移行過程、とりわけ2013年6月のモハンマド・モルスィ政権崩壊とその後のアブデル・ファッターフ・スィースィー大統領の許での権力集中である。スィースィー政権が先行するムバーラク体制・サダト体制・ナセル体制などと著しく性格を異にしている点については多くの先行研究が論じているが、同国の政治システムの移行過程についてはこれまで充分な議論がなされてこなかった。 スィースィー体制は先行する体制と異なり、その政治支配の基盤を政党に置いていないことが特徴として挙げられる。スィースィー大統領は支配の根拠を政党政治ではなく、軍や警察、司法などの強力な国家機関を背景にした個人支配の原理に置いている。本論稿ではこのような支配体制のあり方を可能にしているモルシー政権崩壊後のエジプト内外の政治環境、権力集中を可能にしている構造的背景、政治システムの移行過程について新たな視角から論じようとするものである

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