歯科用コーンビームCT(CBCT)の低コントラスト分解能の検討

Abstract

歯科用コーンビームCT(以下CBCTと略す)は骨組織の描出に優れており,高コントラスト分解能が重要である.しかしながら,歯原性病変の内部性状等を見る場合は低コントラスト分解能の評価も重要になってくる.低コントラスト分解能は一般に画像のノイズの影響を大きく受ける.画像のノイズはX線量が多いほど少なくなる.一方,CBCTではメーカにより投影データに自動で感度補正がかけられているがその内容は公開されていない.X線量が多いから低コントラスト分解能が高いと言えるかどうかは分からない.本研究では,CBCTの低コントラスト分解能が撮影条件によってどのように変化するかを明らかにする目的で検討を行った.低コントラスト分解能用ファントムを2種類作製した.両者ともにアクリル板から出来ており円筒状を呈している.上部は直径4cm,厚さ1cmのアクリル板を使用し,同部には0.5mm〜1.0mmの孔が0.1mm刻みでそれぞれ3つずつ空いている.孔の間隔は孔の直径とした.孔内部にはポリウレタン樹脂(0HU相当)にハイドロキシアパタイトを加えアクリルに対して約+100HUとした物質(200HU相当)と,ポリウレタン樹脂すなわちアクリルに対して約-100HUの物質を充填した.機種は3DX multi-image micro CT FPD (Morita, Kyoto, Japan)を使用した.撮影は空気中で行われた.ファントムはXY軸ではField of view(以下FOVと略す)の中央に,Z軸では孔の空いているファントム上部アクリル板部をFOVほぼ中央に配置した.また平行性は水準器およびCBCTのビームにより測った.それぞれのファントムに対して,電圧と電流を変えた12条件を3回ずつ撮影した.得られたデータの再構築は,装置メーカによって提供されたソフトで行った.画像はDICOM形式で保存し,ImageJ(ImageJ 1.45s, Natioanl Institutes of Health, Bethesda, USA)で取り込み,表示した.軸位断面の複数枚に関してコントラスト分解能の視覚的評価を行った.評価は歯科放射線科医2名で,合意のもと決定した.高濃度の物質を充填したファントムでは,5mA以上の条件で0.5mmの孔まで観察できた.低濃度の物質を充填したファントムでは,80kV 8mAおよび80kV 10mAで0.7mmの孔まで観察できた.結果から,全体的に高濃度の物質を充填したファントムの方が分解能が高かった.また高濃度の物質を充填したファントムの結果では,線量が増すと小さな孔まで観察でき,低コントラスト分解能は線量と相関していた.しかしながら,低濃度の物質を充填したファントムでは,一定の傾向は認められなかった.従って,全ての領域で同様の補正が行われなかったこと,また低コントラスト分解能はノイズのみで決定されるものでなく,複数の要因が関与していることが示唆された.さらに,両濃度間でアクリル部分の画像には大きな違いは認められず,低濃度の物質に対して補正がうまく行われなかったことが推測された.高濃度物質と低濃度物質のX線吸収の差による補正の違いなどがその理由ではないかと考えられたが理由ははっきりしておらず,今後の検討課題である

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