福島原発事故により放出された不溶性粒子に含まれるプルトニウムの定量

Abstract

【緒言】Puは原子力災害において最も注目される放射性核種の一つであり、2011年に起こった福島原発事故後にもPuの調査が行われている。Puは環境中には本事故前からグローバルフォールアウト(GF)由来のPuが存在している。本事故でのPuの放出量は極めて少ないために[1]、GF由来のPuの影響が大きく、本事故による汚染の正確な評価は困難である。本事故のみの寄与を明らかにするために、これまで核実験や原発事故毎に異なる同位体比を示すPuに注目した分析が行われてきたが、実際にその多くは同位体比がばらつき、GFによる影響を受けていることがわかっている。本事故では、SiO2の母材に放射性 Cs が濃集した水に不溶な粒子(不溶性粒子)が放出されたことが知られている[2]。不溶性粒子は放出時の状態を保持しており、環境からの汚染を受けていないと考えられる。したがって不溶性粒子のPuを分析することにより、GFの影響を受けにくい本事故由来のPu同位体比を得ることが期待される。また粒子内のPu量は、粒子生成時における炉内環境の解明に繋がると期待される。【実験】本研究では、放射化学的手法とICP-MS質量分析により、不溶性粒子からのPuの定量を行った。具体的には、福島県双葉町と大熊町で発見された不溶性粒子をアルカリ溶融により溶液化し[3]、TEVA,UTEVA,DGAレジンを用いたカラム分離を行い、Puの分離を行った[4]。分離溶液について、SF-ICP-MSにより質量数が239,240,241の領域を測定することにより、Pu同位体(239Pu,240Pu,241Pu)を定量した[5]。【結果と考察】4個の不溶性粒子の分析を行った結果、3つの粒子でPuが検出され、同位体比は、240Pu/239Puで0.330~0.415、241Pu/239Puで0.161~0.178が得られた。これはGF由来の値よりも大きく、福島原発の炉内インベントリーの計算値[6]やこれまで報告されている福島原発施設付近で採取された、落ち葉などの一部の環境試料の値[1]と良い一致を示していることがわかった。不溶性粒子に含まれるPuの量は、239+240Pu/137Csで10-8のオーダーであったが、由来とする原子炉が異なる粒子同士で差があることが分かった[7]。講演では分析した粒子ごとのPu同位体比の詳細や、不溶性粒子に含まれるPuの量から予想される粒子生成過程について議論する。【参考文献[1] J. Zheng et al, Sci. Rep. (2012) 2, 0304. [2] K. Adachi et al., Sci. Rep. (2013) 3, 2554. [3] Z. Zhang et al., Environ. Sci. Technol. (2019) 53, 10, 5868-5876. [4] Z. Wang et al., Anal. Chem. (2017) 89, 2221-2226 [5] J. Zheng et al, J. Nucl. Radiochem. Sci. (2015) 1, 7-13. [6] K. Nishihara et al., JAEA-Data/code. (2012) 2012-018, 65-117. [7] J. Igarashi et al., Sci. Rep. in press日本放射化学会第63回討論会(2019

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