自動車産業における内示生産システムの運用─部品サプライヤーからの聞き取り調査等による比較─

Abstract

自動車産業は組立産業であり,多数のサプライヤーから調達する多数の原材料,部品を加工・組立し,完成車を作る。完成車メーカーは1次サプライヤーへ発注し,2次サプライヤーは3次サプライヤーへ発注するなど大規模かつ多段のサプライチェーンを形成している。その取引システムは,完成車メーカーより事前に「内示」と呼ばれる確定注文情報の参考値が提示され,最終的に確定注文(納入指示)が提示される方式(以下,内示生産システムという)である。これにより,完成車メーカーは多種の製品に必要な部品を短いリードタイムで供給を受け,完成品を顧客に届けることができ,また部品サプライヤーは比較的早くから材料手配,部品調達,製造準備を行うことができるメリットがある。国内の多くの完成車メーカーは内示生産システムを採用している。自動車産業以外にも内示情報を活用している企業は多い。内示生産システムについては,従来から,完成車メーカーの販売・生産計画との関連や完成車メーカーの視点からの内示の作り方や提示の仕方の研究はあるが,完成車メーカーから内示の提示を受けるサプライヤーの視点やそれらを含むサプライチェーンの視点から,その運用について述べたものは少ない。そこで,本論文は,完成車メーカーへ機械加工部品を供給する名古屋地区に本社のあるサプライヤーと完成車メーカーへ機械加工部品を供給する広島地区のサプライヤーに聞き取り調査等を行い,両者における内示の種類(長期,短期等),内示の提示頻度,提示タイミング,提示期間とそのメッシュ(月別,日別等のデータの細かさ),内示と実績の変化,確定注文(納入指示)の提示タイミング等を比較し,それぞれの内示生産システムの運用の違いを明らかにするものである。内示生産システムは固有かつ不変なものではなく,完成車メーカー系列のサプライチェーンにより必要に応じて見直しされるべきものである。内示生産システムの一層の効率化に向けて運用特性の理解を深めておくことは重要である

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