出産後の尿失禁に関する研究の動向と課題(1983 - 2010)

Abstract

 国内の文献から,出産後の尿失禁に関する研究の動向と課題を検討した.医学中央雑誌Web(Ver. 4)をデータベースとし、検索キーワードを「産褥」「尿失禁」とした.出産後の尿失禁に関する文献は96件あり,絞り込みで「原著論文」に特定した結果,33件であった.入手できたものの中で,研究対象に褥婦が含まれている文献で,今回のテーマの内容に類似した11件の論文を対象とした. その結果,出産後の尿失禁に関する論文は,1991年ごろ,泌尿器科関連の雑誌に掲載された.現在は理学療法の分野からも関心の目が向けられていることがわかった. 出産後の尿失禁の経験者は,約30 ~ 50%であり,産後1 ヵ月以降も症状がみられる者は約10 ~ 20%存在する.また,そのほとんどが腹圧性の尿失禁である.そして,尿失禁を起こしやすい者の要因は, 年齢,初経産,体重,分娩様式は明らかであった.詳細は,尿失禁がありの群は尿失禁がない群に比較して,年齢が高く,初産婦より経産婦に多く,非妊時の体重が重い,または妊娠中の体重増加が多い者に多く,分娩様式は帝王切開より経膣分娩の方に多く認められた.他の関連因子については意見が分かれているため,更なる研究の蓄積が必要であると考える. また,尿失禁に対する対処方法に関しては,尿失禁経験者の約半数の者が,骨盤底筋体操などの改善行動を行っていなかった.そして,骨盤底筋体操の効果を知っている者は,約半数存在するが実施している者は少なかった.予防および改善へ向けての知識の普及と指導方法が不十分であるように思われた. 今後の課題として,出産後の尿失禁の予防や改善に向けて継続した支援方法ができるよう,現在の指導方法を見直し,改善していく必要がある

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