京都大学0048新制・課程博士博士(工学)甲第22048号工博第4629号新制||工||1722(附属図書館)京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻(主査)教授 中北 英一, 准教授 山口 弘誠, 准教授 田中 賢治学位規則第4条第1項該当Doctor of Philosophy (Engineering)Kyoto UniversityDFA

Wendi, Harjupa

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Title The Investigation of Generation of Guerilla-Heavy RainfallUsing Himawari-8 and XRAIN( Abstract_要旨 )Author(s)Wendi, HarjupaCitationKyoto University (京都大学)Issue Date2019-09-24URL https://doi.org/10.14989/doctor.k22048Right許諾条件により本文は2019-12-01に公開Type Thesis or DissertationTextversionETDKyoto University京都大学 博士（工学） 氏名 Wendi Harjupa 論文題目 The Investigation of Generation of Guerilla-Heavy Rainfall  Using Himawari-8 and XRAIN  (ひまわり 8号と XRAINを用いたゲリラ豪雨の生成に関する研究）  （論文内容の要旨）  本論文はゲリラ豪雨に関し、高時間・高空間観測分解能をもつ最新型の静止気象衛星ひまわり 8 号による雲情報が、気象レーダーによる早期探知よりもより早期の「ゲリラ豪雨のタマゴ」探知に利用できることを明らかにするとともに、同情報と偏波ドップラーレーダーによる立体観測との同期解析を世界で初めて実現することにより、同情報が積乱雲のライフステージや上昇流の存在、降水粒子の相を推測できることを、これまでより高い信頼性を持って示すものであり、全 8 章からなっている。  第 1 章は序論であり、本研究の背景としてゲリラ豪雨の早期探知のより早期化が重要であることに触れながら、積乱雲急発達のメカニズムやそのナウキャストについてレビューするとともに、本研究の目的と構成について記述している。  第 2 章では、本研究が対象とした領域、およびその領域で利用可能な気象庁の静止気象衛星ひまわり 8 号、ならびに国土交通省のＸバンド偏波ドップラーレーダー立体観測網（ＸＲＡＩＮ）ならびに利用可能なデータについて記述している。  第 3 章では、静止気象衛星が上空斜めからの視野を持つために、見かけ上、観測位置がずれるというその「視差」の補正手法を開発した。視差の補正量は雲頂高度に直接依存し、その雲頂高度の推定には気象衛星により観測される輝度温度ＴＢＢが利用される。しかし、ＴＢＢは雲頂温度（高度に対応）だけで単純に決まるものではないため、本来は複雑な放射計算をベースにＴＢＢから雲頂高度を推測する必要がある。本論文の大きな成果の一つとして、気象レーダーによる観測情報を併用することでその複雑な手順を不要にした。具体的には、赤外センサーによるＴＢＢの平面空間分布と気象レーダーによる平面エコー空間分布をマッチングさせることにより得られる視差をうまく利用する手法を考案した。すなわち、幾つかのサンプル積乱雲に対してＴＢＢと視差値のペア群を用意して、両者の関係を解析領域での局所的な線形関係で定式化した。また、この定式化により幾何関係式を利用してＴＢＢから雲頂高度を推定することも可能にした。この方法は、1）レーダー情報を併用できること、2）ＴＢＢの平面空間分布と気象レーダーによる平面エコー空間分布をマッチングが容易である孤立積乱雲を本研究は対象にしていること、を巧妙に利用して生み出された汎用性の高い手法である。本手法を多数の積乱雲に適用した結果、レーダーによるエコー頂よりも推定される雲頂の高度は低くなく、信頼性の高い手法であることが示された。また、可視画像にも適用可能であることも示した。 第 4 章では、気象衛星ひまわりから推定される気象庁が開発した積雲急発達域プロダクツ（RDCA, Rapid Development Cumulus Area）について詳述し、その使い方を工夫すればＲＤＣＡはＸＲＡＩＮ（高空間分解能による立体観測）によるゲリラ豪雨兆候の早期探知システムより早期に探知できることを示している。ＸＲＡＩＮによる兆候の早期京都大学 博士（工学） 氏名 Wendi Harjupa 探知とは、地上に降雨がもたらされる前の積乱雲の発達初期段階で上空にのみに発生するレーダーエコー（ファーストエコー、（レーダーによる）ゲリラ豪雨のタマゴ）を見つけ、急発達によっておよそ 10 分～20 分後にもたらされる豪雨に備えることに利用するためのものである。一方、ＲＤＣＡは今後 1時間以内に雷がもたらされる可能性を 0（0％）か 1（100％）で予測するためのひまわり情報から得られる指標である。間接的にはこの両者は関係するはずのものである中、1）両者が関係することを明確に示すとともに、2）かつ 0 か 1 の２値化情報ではなく 0～1 の連続情報とすることによりレーダーによるファーストエコーより早くゲリラ豪雨のタマゴを探知できることを、多くの事例を通して明らかにした。１）により最新型偏波ドップラーレーダー網ＸＲＡＩＮがまだ導入されていない国々においてもゲリラ豪雨の早期探知の可能性があることを示すとともに、２）によりＸＲＡＩＮの利用可能な日本においてもより早期の探知ができる可能性のあることを明らかにした。 第５章では、前章で連続値化したＲＤＣＡが発達期、成熟前期、成熟後期、衰弱期といった積乱雲のライフステージを推測できるかに挑戦している。ＸＲＡＩＮのレーダー偏波立体観測機能を用いて上空に浮かぶ降水粒子の種類を推定し実時間でライフステージを推測する手法はすでに開発されており、その推測ライフステージの時間変化と連続値化したＲＤＣＡとの関係を解析した。その結果、積乱雲の雲頂より上層雲が存在しない場合は、その両者が対応することを明らかにした。この発見は、連続値化したＲＤＣＡと上空に浮かぶ降水粒子の種類の関係性をより基礎的に研究して行くことのポテンシャルをも示唆したことになり、新たな研究方向の土台を築いたことになる。 第６章では、ＲＤＣＡの増加が積乱雲の上昇流の存在と対応していることを、少ない例ながら明らかにした。上昇流の存在は、ＸＲＡＩＮにより２つの手法で推測している。一つはデュアルドップラー解析による推定風速場によるものである。もう一つは、上昇流が存在し雨滴（液体なので大きくなると扁平する）が下層から融解層より上空まで上昇流によって運ばれたとき、偏波パラメータの一つであり雨粒が存在するときに大きな値を示すＺＤＲ（偏波間強度差）が周囲より大きくなる「ＺＤＲカラム」の確認である。直接推定された上昇流の存在がＲＤＣＡ増加に対応していることを初めて明らかにした。 第７章では、ＲＤＣＡより元情報である観測パラメータに焦点を絞り、特に降水粒子が固相であるか液相であるかを表現可能とされるパラメータが、ＸＲＡＩＮから推測される固相、液相とマッチするかを調べた。さらなる上空に上層雲がない場合は、良好に対応する可能性を示したが、残念ながらサンプル数が少なく、あくまで可能性を示すにとどまった。 第 8 章は結論であり、各章で得られた成果について要約するとともに今後のさらなる発展への課題について整理した。     氏 名 Wendi Harjupa （論文審査の結果の要旨） 本論文はゲリラ豪雨に関し、高時間・高空間観測分解能をもつ最新型の静止気象衛星ひまわり 8 号による雲情報が、気象レーダーによる早期探知よりも早期の「ゲリラ豪雨のタマゴ」探知に利用できることを明らかにするとともに、同情報と偏波ドップラーレーダーによる立体観測との同期解析を世界で初めて実現することにより、同情報が積乱雲のライフステージや上昇流の存在、降水粒子の相を推測できることを、これまでより高い信頼性を持って示したものであり、得られた主な成果は次のとおりである。 1. 気象レーダーによる観測情報を併用することで、気象衛星観測情報の視差補正においてその複雑な手順を不要なものとした。具体的には、赤外センサーによるＴＢＢの平面空間分布と気象レーダーによる平面エコー空間分布をマッチングさせることにより得られる視差をうまく利用する手法を考案した。レーダー情報を使える利点を巧妙に利用して生み出された汎用性の高い手法である。 2. 気象衛星ひまわりから推定される気象庁が開発した積雲急発達域プロダクツ（RDCA, Rapid Development Cumulus Area）とゲリラ豪雨のタマゴの存在とは間接的には関係するはずのものである中、1）両者が関係することを明確に示すとともに、2）かつ 0 か 1 の２値化情報ではなく 0～1 の連続情報とすることによりレーダーによるファーストエコーより早くゲリラ豪雨のタマゴを探知できることを、多くの事例を通して明らかにした。  3. 前章で連続値化したＲＤＣＡとレーダー推定の発達期、成熟前期、成熟後期、衰弱期といった積乱雲のライフステージとが、積乱雲の雲頂より上層雲が存在しない場合は対応することを明らかにした。この発見は連続値化したＲＤＣＡと上空に浮かぶ降水粒子の種類の関係性をより基礎的に研究して行くことの可能性をも示唆したことになり、新たな研究方向の土台を築いたことになる。 4. 連続値化したＲＤＣＡの増加が積乱雲の上昇流の存在と対応していることを、偏波ドップラーレーダーから直接あるいは間接的に推定された上昇流との比較により明らかにした。また、液相・固相の推定の可能性も示した。   本論文は、高時間・高空間観測分解能をもつ最新式の気象衛星ひまわり８号が、最新型気象レーダー観測網が未整備の地域であっても有効に活用できることを示すために、偏波ドップラーレーダーによる立体観測情報とひまわり情報との世界で例のない同期解析を実現・実施し、積乱雲の早期探知や、発達ステージ、雲物理情報の推定が可能であることを明らかにしたものであり、学術上、実際上寄与するところが少なくない。よって、本論文は博士（工学）の学位論文として価値あるものと認める。また、令和元年 8 月 5 日、論文内容とそれに関連した事項について試問を行った結果、合格と認めた。  なお、本論文は，京都大学学位規程第１４条第２項に該当するものと判断し，公表に際しては，当該論文の全文に代えてその内容を要約したものとすることを認める。  

ひまわり8号とXRAINを用いたゲリラ豪雨の生成に関する研究

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/244529/1/ykogk04629.pdf

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