京都大学アカデミックデイ2019開催日時: 2019年9月15日（日）10:00-16:00会場: 京都大学吉田キャンパス 百周年時計台記念館主催: 学術研究支援室（URA室）, 研究推進部研究推進課, 国民との科学・技術対話ワーキンググループ京都大学の学術研究成果発信の一環として包括的に登

Mursi, Intisar

Youssefian, Shohab

崔, 廷米

手塚, 徹

武田, 美都里

黄, 倩颖

Japanese

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Title「もやもや病」ってどんな病気？Author(s)手塚, 徹; 武田, 美都里; 崔, 廷米; Mursi, Intisar; 黄, 倩?;Youssefian, ShohabCitation京都大学アカデミックデイ2019 : 研究者と立ち話（ポスター/展示） (2019)Issue Date2019-09-15URL http://hdl.handle.net/2433/244426RightType PresentationTextversionauthorKyoto University・脳に栄養を供給する血管（内頚動脈）がゆっくりと細くなり、詰まってしまう病気です（図１）。我が国の指定難病になっています。➀ もやもや病とは、どのような病気？もやもや病は、発見から治療まで日本人によって、なされてきた病気です。・内頚動脈終末部のまわりに、細かい血管が異常にたくさん作られるのが特徴です（図１，図２）。脳血管造影を行うと、これらの血管はタバコの煙が立ちのぼるみたいに「もやもや」と見えます。このことから、「もやもや病」というユニークな病名がつきました。・東アジアの日本、韓国および中国で頻度が高い疾患です。図１： もやもや病のモデル図図２： 脳血管撮影像の一例➂ もやもや病の症状と現在の治療法は？もやもや病の発症には２つのタイプがあります（図３）。虚血型もやもや病・脳の血流が不足して、発症するタイプです。手足がしびれる・力が入らなくなる、言葉が出にくくなる・理解しにくくなる、などの症状が、普通の場合、数分から数十分続いて治まります（一過性脳虚血発作）。・病気が進行すると、急に脳梗塞を起こすこともあります。一度、脳梗塞になってしまうと、回復は一般的に簡単ではなく、後遺症が残ることもあります。・治療には、抗血小板剤（血液をさらさらにする薬）を用いた内科的な治療と、頭皮の血管などをつかって、新たな血液の通り道（バイパス）を作る外科的な治療があります（図４）。② もやもや病の歴史は？・1957年：東京大学の竹内、清水らにより、内頸動脈に閉塞が認められる疾患として、初めて報告されました。・1968年：慶應大学の工藤らが内頸動脈の詰まりを証明し「ウィリス動脈輪閉塞症」を提唱しました。・1969年：東北大学の鈴木・高久により、「moyamoya disease」と命名されました。・1978年：外科的治療法が京都大学の唐沢らによって開発されました。血管の閉塞 脳の虚血、脳梗塞もやもや血管の出血脳出血出血型もやもや病図３： もやもや病症状の概念図図４： バイパス手術の例。頭皮の血管を脳の血管（中大脳動脈）につなぐ手術（直接バイパス術）・もやもや血管が破れ、出血することで発症するタイプです。激しい頭痛とともに、意識障害や手足の麻痺、言語障害などが起こることがあります。出血が多い場合、生命に関わることもあります。・出血型もやもや病には一度治っても、再出血の問題がありますが、バイパス手術には出血型もやもや病の再出血を予防する効果もあることが分かっています。本発表においては、共同研究者である京都大学・大学院医学研究科・脳神経外科の峰晴陽平先生、ならびに、舟木健史先生に多大なご協力をいただきました。もやもや病の説明や図１，２，４につきましては、京都大学医学部付属病院・脳神経外科のホームページの資料を使わせていただいております。また、これらの図の著作権は舟木先生にあります。ご協力に心よりお礼申し上げます。京都大学医学部付属病院・脳神経外科のホームページも是非ご覧下さい。http://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis02/私達の研究は、医学研究科・分子バイオサイエンス研究室（Shohab Youssefian教授）にて、文部科学省・科学研究費補助金「新学術領域研究」や、日本学術振興会・特別研究員奨励金、京都大学リサーチ・ディベロップメントプログラム【いしずえ】などの支援を受けて、行われています。④ RNF213 遺伝子の発見 （京都大学グループの研究）・本疾患には、10-12％に家族歴が認められ、遺伝素因の関与が疑われてきました。・2008年：京都大学の小泉らが、 15家系を用いて、 17番染色体の長腕の終末部にもやもや病に関与する遺伝子が存在することを見出しました。・2011年：同グループがもやもや病感受性遺伝子として、RNF213を発見しました。・さらに、そのp.R4810K多型が東アジアの患者に高頻度に認められることが判明しました（日韓：約90%、中国：約20％、世界的には多様な変異の報告があります）。8家系からもやもや患者さん1人ずつ（計8人）2万2千個の遺伝子すべての暗号が書かれている部分を読む6601個：一人あたりの遺伝子変化の個数（平均）1038個：8人に共通している遺伝子変化75個:今回初めて見つかった遺伝子変化1個:対照日本人にはない遺伝子変化RNF213のp.R4810K多型共通した遺伝子変化をチェックデータベースと比較対照日本人（5名）の結果と比較⑤ RNF213はもやもや病だけに関与している？図5： RNF213遺伝子の同定の過程人口10万対6-10死者数 64523人 （2015年）もやもや病患者数 16086人（2013年度）大まかに、人口10万対100～200程度40歳以上では10万対600程度肺高血圧症患者数 2587人（2013年度）脳梗塞患者数 113万人（1999年度）図６： p.R4810K多型が関与する血管閉塞性疾患もやもや病は希少な難治性疾患ですが、近年の研究で、血管が詰まってしまう他の疾患にも、RNF213の遺伝子多型が深く関与することがわかってきました（図６）。⑥ RNF213遺伝子多型を持つと必ず、もやもや病を発症する？・p.R4810K多型は我が国の人口の2-3%が持っていて、もやもや病を発症する確率は極めて低いことがわかっています（低浸透率、1/150程度）。・もやもや病は必ずしも遺伝する病気ではなく、p.R4810K多型を持っていても必ず発症するわけではありません。・こと、我が国では、 p.R4810K多型に、何らかの環境要因などが加わって、発症すると考えられています。⑦ 私達はどういう研究をしている？・RNF213遺伝子は、5207アミノ酸から成る巨大な蛋白質をコードしています（図７）。・RNF213は、脂質に対する細胞応答やある種の細胞内シグナルに関わると報告されていますが、もやもや病とRNF213遺伝子多型の関連を説明するメカニズムは未解明です。・そこで、私達はRNF213の正常機能と、それに患者変異が及ぼす影響を調べることで、もやもや病などの血管閉塞性疾患がどう発症するかを解明していこうとしています（図８）。・その成果を、様々な血管閉塞性疾患を予防・治療する技術・医薬品の開発につなげたいと考えています。1st AAA+    2nd AAA+2397-2628  2728-2987RING finger3997- 4035p.R4810K多型UbUbUb標的蛋白質（？）下流シグナル（？）CRISPR/Cas9, 変異修復用ssODN (c.14429 AG)もやもや病患者由来iPS細胞(p.R4810K ヘテロ＝ c.14429 GA）AGA: 野生型AAA: p.R4810K 変異修復iPS細胞 (c.14429 GG)10mm1mm図８： 私達の研究内容の例RING finger(RF)A B C上流因子（？）緑： RNF213 青： 細胞核RNF213が制御する細胞内シグナル経路やそのメカニズムを調べています。その１つとして、RNF213がユビキチン化する標的蛋白質を同定し、そのユビキチン化の役割を明らかにしていこうとしています。また、RNF213自身がどういう制御を受けるかも調べています。Ub:ユビキチン(Ubiquitin)。RNF213の細胞内での存在部位をイメージングし、機能との関連を調べています（図は培養細胞にRNF213を過剰に発現させた例）。もやもや病患者さんに由来するiPS細胞（人工多能性幹細胞）と、最新の遺伝子修復手法によりRNF213遺伝子を野生型に戻したiPS細胞を使っています。これらの細胞から、血管内皮細胞や平滑筋細胞を誘導して、患者変異が細胞の機能に与える影響を調べています。RNF213蛋白質には、多量体化に関わるとされるAAA+ドメインと、ユビキチン化（蛋白質の翻訳後修飾の１つ）活性を持つRINGFingerモチーフがあります。また、世界的な解析から、もやもや病患者さんから、多くのRNF213遺伝子変異が報告されています。図７： RNF213蛋白質の構造p.R4810K多型: RNF213蛋白質の4810番目のアミノ酸残基を正常型のアルギニン(R)からリジン (K) に変える変異PLoS ONE 6(7): e22542 (2011)人口動態統計（確定数）の概況（厚生労働省）特定疾患医療受給者証所持者数（難病情報センター）

「もやもや病」ってどんな病気？

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