特発性大腿骨頭壊死症における血管形態の組織学的評価

Abstract

大腿骨頭壊死の原因は諸説あるが、大腿骨頭壊死への栄養動脈の循環障害の可能性を大とする説が多い。これまでに選択的動脈造影により大腿骨頭周辺から骨頭内の血管病変について検索がなされてきたが、末梢の微小血管までの報告は少ない。今回われわれは、大腿骨頭壊死後の修復血管進入部周囲やMRI T1強調画像における帯状低信号領域(以下band部)における血管形態の組織学的評価を行った。MRIは骨頭壊死の早期発見や壊死組織範囲の決定に有効であり、MRIにおけるband像は組織学的には細胞性修復反応や血管に富む肉芽組織や修復反応を示している。Band部で囲まれた領域には骨梁の壊死と骨髄の無反応性の壊死が認められ、band部の末梢側は正常組織とされている。対象は大腿骨頭壊死症に対して人工股関節置換術を施行した際に摘出した28骨頭で男性21例・女性7例、平均年齢46.9歳(27~66歳)、Stage 3A:6例・Stage 3B:16例・Stage 4:6例であった。摘出された大腿骨頭はホルマリン固定後に、K-CXで脱灰ののちに冠状断でパラフィン切片を作製しヘマトキシリンエオジン染色後に光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像をOLYMPUS AX 80で取り込こんだ後、WinROOF V5.01を用いて血管径と血管数を測定した。観察部位は(1)band部・(2)band部の外側遠位部・(3)band部の外側近位部・(4)正常部の4ヶ所とした。結果は血管径についてはband部とband部の外側遠位で、Stage 4はStage 3と比較して有意に血管径が小さかった。血管数についてはband部とband部の外側遠位は、正常部とband部の外側近位と比較して有意に血管数が多い結果となった。これらの結果について以下のように考察した。骨頭壊死後の修復血管の進入は骨頭外側から起こり、修復血管の増生を反映してband部の外側遠位部とband部で血管数が多くなると考えた。またStage 4は荷重ストレスに曝される期間が長く、今回観察した病理所見ではStage 4はStage 3と比較して線維化が強く組織球等の炎症細胞浸潤が強い傾向があった。荷重ストレスにより進入が頓挫した修復血管の周囲で、時間経過により間質の線維組織の増生が起こり血管は相対的に小さくなると考えた。つまり修復血管の消退する過程を反映して、Stage 4のband部とband部の外側遠位において血管径が小さくなると考えた。(著者抄録

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