Skin Perfusion Pressureを用いた虚血創に対する外科的デブリードマンの適応に関する指標

Abstract

重症下肢虚血(critical limb ischemia)に伴う壊死組織を外科的にデブリードマンすると、時として創縁の正常皮膚にまで壊死が広がることが指摘されており、安易な外科的デブリードマンには警鐘がならされている。しかし、どの程度の血流があれば、壊死を拡大させることなく外科的デブリードマンが可能かに関する客観的指標は、これまで示されていない。本研究の目的は、虚血創に対する外科的デブリードマンを施行した際、創縁の壊死拡大と皮膚灌流圧skin perfusion pressure(以下SPP)値との関連を評価することである。2006年1月から2012年12月までの間、SPP値が40mmHg以下の虚血創に対して外科的デブリードマンを施行しえた患者を後方視的研究の対象とした。壊死の拡大の有無は、カルテ記載もしくは創部の写真をみて判断した。外科的デブリードマン後、創縁の壊死が拡がった群(necrosis group)と拡がらなかった群(non-necrosis group)に分けてROC曲線を作成し、cut-off pointを求めた。48症例54創部がこの研究の対象となり、その内訳はnecrosis groupは17症例19創部(35.2%)、non-necrosis groupは31症例35創部(64.8%)であった。全症例の平均SPP値は24.3mmHgであり、necrosis group(20.0±7.5mmHg)とnon-necrosis group(27.7±6.3mmHg)との間に有意差が認められた(p-value=0.008)。またSPP20mmHg以下では、感度63%、特異度85%、尤度比4.5となり、ROC曲線で最も左上方に近づく値を取った。これにより虚血創に対する外科的デブリードマン施行後に、壊死が拡大するcut-off pointはSPP値20mmHgとするのが妥当と考えられた。すなわち、SPP値20mmHg以下で外科的デブリードマンを施行した際、健常皮膚にまで壊死が拡大する可能性が高いと考えられた。(著者抄録

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