障害者自立支援法における「労働」と権利擁護の在り方 : 「福祉」と「労働」を架橋する法理論の形成に向けて

Abstract

 2000年の介護保険制度の実施および一連の社会福祉基礎構造改革によって、高齢者や障害者への福祉サービス提供の法的形態が、「措置」制度から「契約」制度に移行した。さらに2005年には、障害者自立支援法が成立すると共に、障害者の雇用の促進等に関する法律および介護保険法も改正された。これらの過程のなかで、福祉分野における契約についての議論が展開されてきた。 しかし、いわゆる「福祉契約」の定義や契約に対する行政責任の範囲、「労働契約」との関係等について、確固たる理論が構築されたとは言い難い。とりわけ、障害者が働く場面における契約関係に関しては、ほとんど手つかずの状態であると言ってよい。新たに成立した障害者自立支援法も、「就労支援」を前面に出した法律であるのにも関わらず、労働をめぐる契約に関する言及はなされていない。 障害のある人が働く場面における法的地位は、これまでもきわめて不明瞭なまま放置されてきた。明確に「雇用」されているとはいえないかもしれないが、様々な場面で「働いている」人びとは、たしかに存在している。いったい、彼・彼女は、「労働者」なのか、それとも「作業指導(あるいは訓練・教育)」という名の福祉的な支援を受ける「利用者」なのか。 本稿は、その問いに対する回答を探る第一歩となるもの、換言すれば、「福祉」と「労働」を架橋する法理論を追究する端緒となるものである

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