審査論文 チェコ共和国の子どもによる図形の見立て(2) : 描画の特徴と性差

Abstract

これまで、子どもの描画表現は、主に年齢的な発達の側面を中心に調査研究が行われてきたが、近年、性別によって造形表現が異なることも指摘されている。また、図形を提示した見立ての描画表現の特徴は、自由画の描画表現とは異なることも考えられる。これらのことから、前報で取り上げた、チェコ共和国の幼稚園児と小学生67名の図形の見立ての描画表現について、先行研究の見立ての描画発達の過程や分類との比較研究を行うとともに、自由画の性による表現の特徴について照らし合わせ、検討する。 調査方法は、A3用紙1枚に図形三角、丸、四角を各6個、さらに各2個ずつ、ピンク・黄・青に塗った図形、計18個を用意した。これらの図形に対し、何かに見立て線描を描き加えて表すよう指示した。調査時間は、子ども自身が終了を認めるまで行った。2010年、2011年に調査を実施した。 見立てが不成立の場合は、どの分類においても大きな性差は認められなかった。見立てが成立している場合は、反復表現が女児の方が多くみられる傾向があり、それは自由画の性差の特徴に共通していた。また、2個の図形を用いた描画表現では、「乗り物」が描かれることが多く、自由画では男児特有のモチーフとされているが、図形の見立ての描画表現では、女児にもみられた。また、花などのモチーフを男児が描くことも少なくなかった。 自由画では、自分の描きたい表現が優先されるので、性とモチーフが結びつきやすいが、条件が定められた中での描画表現になると、性差による特徴は強調されなくなる傾向に向かうことが考えられた。したがって、保育活動での教材や画材、あるいは課題によっては、本来の自発的な表現とは異なることが示唆された

    Similar works