<特集号論文>潜伏キリシタンは何を語るか : 「長崎の教会群」をめぐる世界遺産登録とツーリズム

Abstract

本稿では,「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」における世界文化遺産への登録過程のうち,特にストーリーの再構築に焦点を当て,潜伏キリシタンを世界遺産化することの課題を空間の政治学の視点から検討した。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」からの転換において,構成資産を可能な限り維持しつつ,禁教期における潜伏キリシタンの信仰生活に焦点化したストーリーへの再構築が図られた。この変更は,世界遺産登録を目指す国・県が作成する世界遺産推薦書における価値の見直しという形で具現化した。ナショナル/リージョナルでのスケールでの資産への価値づけの言説は,必ずしもローカルアクターの想いを反映するものではなかったものの,世界遺産登録を目指す共犯関係が成立し,表立ったコンフリクトは生じていない。グローバル・ナショナル/リージョナル・ローカルという三者の空間的関係を信仰世界の理解という視点からみると,そこには近代知が生み出した学問的なカテゴリーによる信仰世界の解題という状況が生じていること,またツーリズムとの関係でいえば,この世界遺産をいかにして可視化し,それをいかに語るのかが大切であることが指摘された

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