沿岸海域における細菌群の分布と増殖速度(自然科学)

Abstract

愛知県三河湾の干潟域を主要な研究対象水域とした。海水および干潟砂泥中に存在する細菌群の現存量と増殖速度などを測定し,沿岸海域における細菌群の生態,作用などを明らかにすることを目的として研究した。1)三河湾の干潟域に設定した9定点の試料について測定した細菌群の現存量は,年間を通じて少数の例外を除いて著しい差が認められなかった。2)干潟域海水中には,5.5×10^6cells/ml,砂粒子中には5.0×10^8cells/g(wet)程度の総菌数であった。3)海水中における細菌群の増殖速度は,除菌により細菌数を少数とする程増大した。4)自然海水中では,繊毛虫や鞭毛虫などにより,多数の細菌群が捕食されているが,捕食された量は細菌群の絶えざる増殖によって補給されているので,海水中には一定レベルの細菌数が維持されている。5)河川水中の細菌群は,沿岸海水中に流入してもすべて死滅することはなく,10^3~10^4cells/ml程度の細菌は海水環境においても増殖可能であった。また海水中に存在する10^3~10^4cells/mlの細菌は,淡水中においても増殖可能であった。6)三河湾干潟域海水中では,Vibrio, Pseudomonas, Bacillus, Micrococcusなどが主要な菌株であり,干潟砂中には,Vibrio, Pseudomonas, Bacillusが主要な菌株であった。干潟砂の10cm下層では,Clostridium, Bacillus, Bacteroidesなどに属する菌株が主要なもので,これらは,嫌気条件下において増殖できる分離菌株の約80%であった。7)干潟域海水中には,10cells/ml,干潟砂中には10^2cells/g(wet)程度の酵母が分布していた。干潟砂から分離した酵母は,Rhodotorula約45%,Torulopsis 43%, candida 10%であった。沿岸海域において,これら酵母の作用は微弱であると推定される

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