Abstract

"高度経済成長期が始まろうとする1960年,日本の一般世帯における一人世帯の割合(以下,単身世帯率)は16.5%であったが,その後大都市圈への人口移動が急増し,近年鎮静化する中で,単身世帯率は20%前後にほぼ一定してきた.しかし,それら単身世帯がどこに居住してきたかをみると,この間には大きな変化が認められる.国勢調査で一人の一般世帯(寮の学生や療善所の入院者をはじめとする施設等の世帯を除くすべての世帯)における普通世帯(住居と生計を共にしている人の集まりまたは一戸を構えて住んでいる単身者)の割合の変化をみると,1960年には28.3%であったが,1970年に47.4%と半数に近づき,1975年に64.6%,1980年に75.8%と上昇を続け,1985年には81.0%に昇る.このことは,単身世帯の暮し方として,初期に於いては下宿や寮等の施設に居住することが一般的であったのに対し,最近では,普通世帯として一戸を構えて住宅に住むことが多くなったことを示している.こうした全般的傾向は,居住に対する価値観の変化であると同時に,人口の年齢構成の変化によるところも大きいと考えられる.本研究は,近年急速に進んできた普通世帯における単身世帯の増加とその年齢構成の変化に着目し,これまで住宅政策の中で必ずしも明確に位置づけられてこなかった単身居住の状況と問題点を明らかにしようとするものである.

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