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伝統文化における幽玄の美―茶の湯から考える―
Authors
彭 浩
Publication date
30 September 2016
Publisher
中央大学人文科学研究所
Abstract
日本人は自然を愛している。その自然観の奥は「幽玄」の世界につながっていると思われる。「幽玄」の概念と境涯は,中国と日本の文化においては,異なる部分があるかもしれないが,「わび・さび」は日本人だけがわかるものだと思われる。「わび・さび」は,日本人の自然観・死生観の表れであり,美意識である。古典文学は,心を自由に解きほぐす力をもっている。この古典的な心的空間は,もちろん,日本の伝統文化を代表する茶道の世界にも存在する。茶の湯は,自然を大切にし,それを表現して人々を理想の世界,超越の世界に導いていく。「幽玄」の美学,「わび・さび」の境地は,茶の空間から広がり,今日に至るまで,日本文化の根底にあり,人々の心を魅了している。 日本の茶の湯の理念と美意識は思想であり,哲学である。それは,和歌・連歌における「幽玄」論から受け継いだ精神でもある。今回は茶の湯を中心として,日本文化における「幽玄」という理念と美意識を通して日本人が求めている精神世界を探ってみた。茶の湯は,和歌の「幽玄」論に基づいて,陸羽の『茶経』の「他界観念的遊戯性」の影響を受け,俗世界から離れ,超越的世界を理想とし,さらに,禅の心を求めて「得道修行」を目指している。その奥には,「幽玄」の美の魅力がある。現代人は,その世界に魅了され,求めている。日本文化の力と魅力は,そこにあると思われる
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