Abstract

本研究は不妊治療の結果、5胎児を妊娠し、出産に至った母親に焦点を当てて分析したものである。特に妊娠初期から分娩に至るまでの限られた期間内で、対象が最も緊張を抱き、困難に陥いった危機場面や自己決定を求められる5場面での状況を、STAYによる不安得点の検索や、花沢の母性意識質問紙、さらにその同一場面での担当助産師との対話の再構成分析をとおして「母性意識の確認・発達・強化」の状況を明らかにしたいと試みたものである。これらの分析の結果、STAYによる特性不安得点はほぼ安定していたが状態不安得点は5場面でそれぞれ変動がみられた。しかし、対象の言動は出産への意欲や、児の生命を気遣う内容が多く見られ、全体を通して危機と考える場面を経験し乗り越える毎に、母性意識の発達・強化が認められ、その背景にはケアをとおしての助産師との相互作用が存在していた。我が子を産み育てることを希望し、妊娠に至り、出産の時期を迎える間に母親が感じる期待や不安は日常の生活においても様々に存在し、そのたびに一喜一憂する毎日を過ごしながら母性意識は涵養されると推測されるが、未知の経過をたどる不安は専門職である助産師の支援が介入することによってより安楽に過ごすことができ、そのことが母性意識の発達・強化の一助となると推測された

    Similar works