株主代表訴訟の対象となっている会社の権利を会社が処分することは許されるか

Abstract

 本稿の検討の対象は、代表訴訟が提起されその対象となっている会社の権利を会社が処分することができるかという問題である。 本稿は、第一に、この問題について通説的地位を占める処分否定説を検討する。処分否定説は、一九五一年に松田=鈴木が見解を明らかにして以来通説となっており、その根拠を債権者代位権の行使に処分禁止の効果を認めた大審院昭和一四年五月一六日判決に求めてきた。本稿は、昭和一四年判決の射程を株主代表訴訟に及ぼすことに問題があること、いかなる時点から処分禁止の効果が発生するかに関して、処分否定説と昭和一四年判決との間に齟齬があること、株主代表訴訟に処分禁止の効果を認める実質的根拠が示されていないことを指摘する。 第二に、株主代表訴訟において処分禁止の効果を認めるべきか否か、認めるとしたらいかなる時点から認めるべきかを検討する材料を得るべく、近時問題となった、住民訴訟の対象となっている地方公共団体の権利についての議会による債権放棄についての行政法分野における議論を参照する。 最後に、以上の検討から示唆を得て、近時明らかにされた見解について検討する

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