Development of hepatocellular carcinoma in mouse model transgenic for hepatitis C virus core protein

Abstract

1.研究の背景と目的// C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により引き起こされる肝炎は高率に慢性化し、持続感染で肝硬変、肝細胞癌へと進展する。HCVによる肝細胞癌の発癌機序を解明し予防、治療に役立てることは臨床において重要な問題である。今回外来遺伝子である肝炎ウイルスの個々の蛋白質の生体への作用を検討する目的でHCV遺伝子発現トランスジェニックマウスを作成検討した。//2.研究方法// HBVエンハンサー、HBxプロモーターの下流に遺伝子型1bの遺伝子配列cDNAを組み込んだHCVコア遺伝子発現トランスジェニックマウスを3系統作成し無作為抽出した2系統についてその表現型を検討した。//3.結果// このHCVコア遺伝子発現トランスジェニックマウスでは、肝臓がヒト慢性C型肝炎の組織学的特徴のひとつとして知られている脂肪化(steatosis)をきたしたのち、16ヶ月齢で雄の約30%雌の10%に肝腫瘍の発生を確認した。電子顕微鏡所見からミトコンドリア外膜の不鮮明化に代表される膜構造の変化と免疫電子顕微鏡所見でのコア蛋白質の核内の存在が確認された。このトランスジェニックマウスでは血中ALTの上昇、肝炎の組織所見は認めず、このマウスモデルにおけるC型肝炎の肝発癌ではウイルス側の因子の関与、脂質代謝とHCV肝発癌の関連を示唆した。// 第2にHPLCを用いて肝脂肪化の定量解析を行いトランスジェニックマウス肝臓での中性脂質の増加と構成脂肪酸においてオレイン酸、バクセン酸などのC18:1脂肪酸構成比の増加を認めた。この構成脂肪酸の変化は限られた数であるがC型肝炎患者の肝臓組織解析でも確認され、HCVがヒトにおいても直接脂質代謝に変化をもたらしている可能性を示した。// 第3に肝臓内の過酸化脂質を定量解析した結果、トランスジェニッタマウスではラジカルの発生増加とカタラーゼ活性増加、還元型グルタチオン減少などの肝臓抗過酸化作用の拮抗が認められ、加齢とともに過酸化脂質が増加していることを示した。この過酸化脂質の量的変化はアルコール投与によって増加し、ROSの発生においてHCVとアルコールが共同的に働いていることをマウスモデルで示した。//考察// HCVコア遺伝子発現トランスジェニックマウスを作成し検討を行った。HCVコア蛋白がマウスモデルにおいて肝細胞の脂肪化をもたらすこと、またラジカルの発生を増加させ発癌に関与していることをマウスモデルにおいて示唆した。報告番号: 乙15518 ; 学位授与年月日: 2002-12-18 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(医学) ; 学位記番号: 第15518号 ; 研究科・専攻: 医学系研究

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