今西 二郎

佐藤 万代

山崎 翼

矢野 忠

石崎 直人

福田 文彦

竹田 太郎

鈴木 雅雄

山崎, 翼

福田, 文彦

佐藤, 万代

鈴木, 雅雄

竹田, 太郎

石崎, 直人

今西, 二郎

矢野, 忠

Meiji University of Integrative Medicine Academic Repository

The Bulletin of Meiji University of Integrative Medicine40 明治国際医療大学誌　３号一　般　口　演　１（1）慢性疲労状態に対する鍼治療の安全性と有効性の検討○山崎　　翼 1），福田　文彦 2），佐藤　万代 2），鈴木　雅雄 3），竹田　太郎 3）， 　石崎　直人 3），今西　二郎 4），矢野　　忠 5）明治国際医療大学大学院鍼灸臨床医学 1），明治国際医療大学統合医療学 2），明治国際医療大学臨床鍼灸学教室 3）， 京都府立医科大学免疫・微生物学教室 4），明治国際医療大学健康・予防鍼灸学教室 5）要　　旨 【目的】慢性疲労とは，6ヶ月以上連続して疲労を自覚している状態であり，日常生活を阻害する程の疲労感や，微熱といった症状を呈する慢性疲労症候群とは異なる．慢性疲労は，労働などによる身体的疲労と心理社会的ストレスによる精神的疲労で構成されており，両者が互いに影響しあいながら慢性疲労が形成されると井上らは報告している．また，慢性疲労は様々な疾病の原因となることを小田切らは報告している．我々は，慢性疲労状態に対する鍼治療の安全性と有効性を検討する目的で，無治療を対照群とした非盲検化並行群間比較試験を行った．【対象と方法】対象：慢性疲労（疲労と関連する医学的異常を認めないにもかかわらず，6ヶ月以上連続して疲労を自覚しており，文科省作成の自己評価疲労スケールで中等度以上の疲労を有する者）を自覚する被験者 18名とした．方法：被験者を鍼治療群（9名：男性 5名，女性 4名，51.1± 5.5歳）と対照群（9名：男性 4名，女性 5名，45.4± 8.9歳）にランダム割付した．研究期間は 8週間とし，鍼治療群は疲労状態に対する問診と心身の状態に応じた治療を 2回 /週の頻度で 16回行った．対照群は，疲労状態に対する問診のみを週 1回行った．評価：評価は研究期間の前後に行った．主観的評価として身体的疲労 VAS，精神的疲労 VAS，GHQ-12（精神的健康度），疲労蓄積度チェックリスト，客観的評価として血液生化学検査，アクティグラフ：以下 AG（睡眠の質），8-OHdG（酸化ストレス），PAO（抗酸化能）を行った．統計処理は対応のない t検定を行った．【結果】2群間の背景因子（年齢・性別・血液生化学検査・VASなど）には有意な差を認めなかった．主観的評価では，身体的疲労 VAS，精神的疲労 VAS，GHQ-12，疲労蓄積度チェックリストにおいて，対照群と比較して鍼治療群は有意な軽減を認めた．客観的評価では，いずれの項目においても両群間で有意な差を認めなかった．なお，鍼治療による有害事象は認められなかった．【考察】今回，対象とした被験者は，疲労を自覚するも医学的に異常を認めない者であったため，客観的評価（血液生化学検査，AG，8-OHdG，PAO）では有意な変化が認められなかった．鍼治療は，肩こりなどの身体的愁訴の軽減や，脳波やセロトニン代謝に影響を与え，リラックス効果を誘導する可能性が矢野らにより報告されており，本研究における身体的疲労，精神的疲労の軽減は，鍼治療のこれらの作用によるものと考えられる．しかし，今回の結果は，鍼治療による身体的疲労の軽減が精神的疲労の軽減につながったものか，精神的疲労の軽減が身体的疲労を軽減させたか，またはその相乗効果かは不明である．また，主観的健康感（自分が健康である，という感覚）の悪化が将来の疾病の発症や死亡率に影響を与えることが丹野らにより報告されている．主観的疲労が軽減したことは，鍼治療が疾病発症のリスク軽減等の予防医学として重要な意味を持つ治療の一つである事を示唆している．【結語】医学的に異常を認めない慢性疲労を自覚する被験者に対して鍼治療を行い，対照群（無治療）と比較した．その結果，鍼治療群は主観的な身体的疲労・精神的疲労，精神的健康度，蓄積疲労の有意な改善を認めた．また，鍼治療による有害事象は認めなかった．以上の結果から，鍼治療は安全に慢性疲労状態を改善する方法である事が示唆された．

慢性疲労状態に対する鍼治療の安全性と有効性の検討

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慢性疲労状態に対する鍼治療の安全性と有効性の検討

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