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Regeneration Pattern and Vegetation Dynamics of Beech Forests
Authors
Hideyuki Ida
Publication date
26 March 1996
Publisher
'Wayne State University Press (Project Muse)'
Doi
Abstract
第Ⅰ章 序論 日本のブナ林における調査研究には,更新が停滞することなく起きるような立地の安定した場所で,しかもある特定の個体群のみの動態を対象とした例が圧倒的に多い.また,残存林分の多くが急峻な立地に分布していたり老木の枯死による撹乱以外にも様々な撹乱を受けていることが多い.このような,従来研究対象外となっていた場所では必ずしも理想的な更新過程が観察できるとはいえないが,その更新様式を解明することは大変重要であり,特に場所を選ぶことのできない森林施業の上では非常に意義がある.これらを踏まえて,本研究では,従来研究対象外となっていたような様々な場所でのブナ林の更新様式を明らかにすることを目的とした. 第Ⅱ章 ササ群系における温帯夏緑樹林の更新動態 山腹の残存ブナ林から尾根部のササ草原に至る連続植生帯において,樹木個体群の動態を中心にしてササ群系におけるブナ林やミズナラ林といった温帯林の更新の可能性を論じた.まず,環境測定,植生調査,毎木調査,年輪解析によって植生や個体群の構造,成長などを把握し,帯状分布の形成過程を考察した.次に,埋土種子の役割を考察した.さらに,ブナとミズナラの実生の移植実験によってササの影響などを検証した.最後に,本研究によって得られたパラメータをもとに森林の動態モデルを作成し,ブナ林の個体群動態のシミュレーションを試みた.以上から,ササ型林床を持つブナ林におけるパッチの更新に必要な条件は,主としてササの一斉枯死,ブナ種子のmasting,林冠ギャップ形成の3つであると結論した. 第Ⅲ章 ブナ林における風倒の撹乱体制 大型台風によって多大な撹乱を受けたブナ林で研究を行ない,ギャップ形成過程とブナ林の植生動態に及ぼす自然撹乱の影響と風倒の撹乱体制について論じた.調査地に形成された大ギャップの面積は4.100㎡に及び,大ギャップ形成木のほとんどはサイズの大きな林冠木の根返りによるものであった.また,林冠木の群集構造の把握から,大ギャップの生じた場所は,急斜面で,既存の古いギャップに隣接する老齢木が集中的に分布するパッチであった.さらに,この古いギャップが暴風の入り口となったと推察された.すなわち,大ギャップの形成には,風の強さと向き,地形,斜面の向きと傾斜といった外的な要因と,林分構造,既存のギャップの位置などの内的な要因が関与していることが考えられた. 第Ⅳ章 ブナ林の林床植生の存在様式と動態 大ギャップの対照として単木ギャップの形成された大面積調査区で林床植生の組成と動態を把握した.その結果,林床群落は不均一であったが,モザイク状である林冠構造との対応は認められなかった.また,単木ギャップの形成よりもむしろ土石流などの地表の撹乱やササの存在の方が林床群落の動態や種多様性の維持において重要な役割を果たすことが考えられた.いっぽう,大ギャップ内のマウンド-ピットでは,先駆種が定着し種多様性も高かった.ギャップ内の土壌未撹乱地では,埋土種子起源の実生は少なく,種組成としては閉鎖林冠下の未撹乱地と顕著な違いはなかった.以上から,林床群集の種多様性の維持および森林更新には土壌撹乱が重要な役割を果たしていることが明らかとなった. 第Ⅴ章 総括 Ⅱ~Ⅳ章で示したブナ林の更新動態とササの関係,およびブナ林の撹乱体制について総括した.さらにこれを発展させてブナ林の植生動態と更新様式に関する本論文の結論を述べた.これとは別に,本研究の生態学的な分析結果にもとついて,最後にブナ林の森林施業計画における将来的なあり方について提言した.目次 / p1 第I章 序論 / p1 I.1.ブナ林の重要性 / p1 I.2.従来の研究における諸問題 / p4 I.3.研究の対象と意義 / p7 I.4.調査地の選定とその概要 / p8 I.5.論文の構成 / p11 第II章 ササ群系における温帯夏緑樹林の更新動態 / p15 II.1.はじめに / p15 II.2.調査区 / p15 II.3.ブナ林-ミズナラ林-ササ草原の帯状分布をとりまく環境 / p16 II.4.ブナ林-ミズナラ林-ササ草原の帯状分布の形成過程 / p21 II.5.帯状分布の動態における種子バンクの役割 / p32 II.6.ブナとミズナラの移植実生の動態 / p40 II.7.ササ群系におけるブナ林の動態シミュレーション / p46 第III章 ブナ林における風倒の撹乱体制 / p84 III.1.はじめに / p84 III.2.調査地 / p84 III.3.ギャップ形成のパターンとプロセス / p85 III.4.ブナ林の群集構造に及ぼす台風による大規模撹乱の影響 / p92 第IV章 ブナ林の林床植生の存在様式と動態 / p124 IV.1.はじめに / p124 IV.2.ブナ林の林床植生の存在様式 / p124 IV.3.ブナ林の林床群落における大規模自然撹乱の影響 / p132 第V章 総括 / p153 V.1.はじめに / p153 V.2.ササ群系におけるブナ林の更新様式 / p154 V.3.ブナ林における風倒の撹乱体制 / p157 V.4.ブナ林の林床植生の存在様式と動態 / p158 V.5.結論 / p160 V.6.ブナ林の持続的利用のために / p161 謝辞 / p164 摘要 / p165 引用文献 / p167 付録:学名一覧 / p183広島大学(Hiroshima University)博士(学術)Sciencedoctora
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